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26話 オレの姉がチート持ちだった件

「……彼女の左側に刺している百合は、一生枯れない百合なのです。彼女がそういう魔法をかけましたから」


 そう言って手で指された方の百合は、確かにあの誓いの百合だった。


 はてな?

 それ、改めて言わなきゃいけないほどのことなの?


「? 姉の魔力は闇であり、占いや幻惑の類でしょう? それとどう関係が?」

「あー。なんかそれね、実際にはイメージして情報の書き換えた結果なんだって」

「は?」

「……。」


 とりあえず話せそうな事は話す。


 なのにセツにはこいつ意味わからんって顔を、アルバート王子には、そんな軽く言うなんてという顔をされた。


 え、話せばいいんじゃないの?

 私の中ではここまでは問題ないよ?


「あー……私あまり上手く説明できないので、恐れ入りますがアルバート王子、分かりやすく教えて頂けませんか?」

「……仕方ありませんね」


 これ以上墓穴を掘りたくないので、話を振って直接してもらうことにした。


 しかし子供にため息は似合わないぞー!

 幸せ逃げちゃうんだぞー!


 ……おっと話がそれたわ! 話してないけど!


 私の無茶振りに、ふう、とため息をついた後諦めたように彼は口を開く。


「……闇の魔力の本当の力は情報操作なのです。これを持つものは自由に世界を変えることができる。占いや幻惑に見えるものは、その一端でしかないのです」

「つまり?」

「占いと呼ばれるものは、決まった未来を見るわけではなく、そこで闇の魔力を行使したもの。意図的でないにしろ()()()()()()()()()のです。幻惑も幻ではない。その時だけ、世界は変わっているのですよ」


 だから、と言ってもう一度百合に目を向けた。


「百合を枯れないようにしたいと願えば、そうできるのです。信じられないのであれば、触ってみては?」


 セツを見ると、正に信じられないという顔。

 とりあえず百合を髪から外して渡してみた。


 持っただけでもやはり違うのだ。材質からして変化しているというか。セツは怪訝な表情で言った。


「……でも枯れないだけなんだろ?」

「触ったら分かったのでは? 普通ではないと。……もちろん引っ張ったりしても、千切れたりなんかしませんよ。彼女の魔法が完全であればね」


 そう言われて、とにかく百合を壊そうと、引っ張ったりねじったり折り曲げたりし始めた。

 私としては完全でなかったらどうしよう……という思いで大変ハラハラするんですけど⁉︎


 ちょ、手加減なしに引っ張んないでよ!

 ボロが出たらどうしてくれる⁉︎

 私の全力の忠誠が疑われるでしょ‼︎

 情け容赦ない! 破壊神なの⁉︎


 しばらくして気が済んだのか、ため息をついてこちらに返してきた。何かあるなら言いたまえ。

 そして君達はため息つき過ぎだって。

 そんなに放出するなら、私に分けて欲しいですね。


「オレの姉がチート持ちだった件……」

「チート?」

「あ、いえ。それでこれを隠すために、送ってたわけですか……」


 ラノベ大好き人間だったセツは嘆くように、そんな何か始まりそうな、タイトル的言葉を漏らした。

 この世界にはチートなんて言葉、ありません。口を滑らせないで下さい。


 案の定ちょいんって感じでハテナが浮かぶ王子へ、適当にごまかして確認を取っている。


「それもありますし、牽制のためでもありますね」


 ほぉ? なんですかねそれ?

 今度は私がちょいんですよ?


「牽制? って何を?」


 弟よりコイツはバカか?という視線を頂きました。

 酷いんですけど?


「……闇魔術持ちってバレたとしても、王子が毎日花を贈るほどご執心だと思われれば、危ない目も減るかもだろ」

「あーなるほど!」


 面倒くさそうに吐き出すその言葉に、私は手を叩いて納得する。私の身の安全を考えてくれてたとは!


 さすが王子! 視野が広すぎて6歳児ではない!


 セツは意外とやるなって感じで、私は感動で、2人して尊敬の眼差しを王子に向けると、「……今すごく、君たちは兄弟なんだと思いました」というコメントを頂戴した。

 そりゃそうだけど、どういうことよ。


「とりあえず、姉を知りたいのであれば、いつ来るかわからない手紙を待つより、家に来て頂いた方が良いと思いますよ。これ、手紙だと妙にかっこつけたがるんで」


 斜に構えて、ビッと親指を向けて差してくる。

 目線は王子に据え置きである。


「ちょっと⁉︎ 人にこれって言っちゃいけないし、指を差しちゃいけないって、教えられてるでしょ! アルバート王子を見習って……」

「あーちょっと黙ってて」

「な⁉︎」


 こっちを向かないまま、手で静止させられたんですけど⁉︎ 話をちょっとは聞け!


「こいつアウェイじゃない方が、リラックスして話すタイプなんで。ここなんか、ちょっと雰囲気うちに似てるし、今はオレがいるからいいですけど、そうじゃなけりゃかっこつけて、がっちがちに固まりますから」


 今度はこいつだと⁉︎ もー!


 ……にしてもこの部屋落ち着くって思ったら、そっか。シンビジウムの家に似てるのか。言われたら腑に落ちかも。


「……セス殿に目論見がバレてしまうのは、微妙な気分ですね」


 そう言って王子は苦いような、諦めたような顔をして見せた。そっかぁ……気を遣ってくれてたんだ。


「だからあんまり緊張しなかったのか……すみません気付かなくて」

「……むしろ気付かないでいて頂けた方が、よかったんですけどね」


 困ったように笑うアルバート王子は、とても子供とは思えない大人びた表情だった。


 こんなに気を遣ってて、疲れちゃわないだろうか。

 私はふと、心配になった。


「では今度お越し頂いた際は、私がおもてなししますので、期待しておいてください!」


 してもらった好意は返すタイプなので!


 両手でグッと握りこぶしを構えて、力強く答えた。来てもらった時くらい、気を遣わせないようにしないとね! 子供はのびのびするべきです!


 王子はちょっと驚いたあと「……君は面白い人ですね」と言って笑った。


 よく分からないけど、お気に召したようでなによりだ。意図せず好感度アップかな?


 けど今のところ、何が王子のツボは不明だ。

 あと隣の弟が、何か言いたげにこっちを見ているけどスルーします!


 とりあえずその日決まった事としては、百合は鉢植えで送り、それにより手紙も1週間に1回になった。


 なぜか手紙制度なくならなかった上に、鉢植えでって。グレードアップしてない?

 どういことよ……と思ったけど、これ以上引いてくれなさそうだったので諦めました! 週一なら、私もなんとかできるし!


 牛歩でも亀並みのろのろ歩きでもいいから、信用を勝ち取るために、私も彼を知らねばならない。


 とりあえず、なんか気を遣ってもらえるくらいの、関係にはなれたみたいなので、成果は上々という事にしよう!


 役に立ってくれたしあとでセツには、お菓子でもあげようかなと思った。


 でもその前に魔法のことを黙ってたことに対して、なぜか怒られた。だってそんな必要だと思わないじゃん……あーごめんごめん何も思ってません!


 まったく、どっちが年上よ……と思いながら不貞腐れて帰るのでした。

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