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フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、物語に挑む〜ゲームの舞台もフラグだらけです〜
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261話 灯台下暗し

「よし! ご迷惑をおかけしました! ……でもどう仲直りしようかな……」


 気合を入れて言ってみたは良いが。


 セツのあの様子じゃなぁ……。


 話せ、話さないの一方通行の殴り合いしか見えない。さっきと同じだ。


 セツは知りたがっている。

 この後、どうなるのかを。

 まぁ要は、安心したいわけだよね。


 知らないものは怖い。だから、知っている方が良いって考えは、確かにあると思うんだけど。


 知ってるからこそ、逃れられないかもしれない恐怖より……そっちの方がマシじゃないかなぁと思う。


 漠然とした恐怖はイマイチ実感が湧かないから、いつだって同じくらい曖昧に感じるものだと思うけど。


 はっきりした恐怖ってそれが迫るにつれて、さらにも増して怖くなるものじゃない?


 例えば、日常の中でお化けが出てくるよーって言われて、それを待ち構える恐怖と。


 お化け屋敷の行列に並んで、それが近づいてくるのが分かってドキドキするくらい、違うものだと思うのだ。


 セツはいつイベントが起こるかは、よく知らないからね。話してないから。


 だからそうなるのは知ってるけど。

 いつなるかは知らない。

 聞かれなかったし、言わなかったし。


 まぁなので、私は本当にダメだと思わない限り、言うつもりがなかったんだけど。


「聞くまであのままかな……はぁ、セツと喧嘩した事ないから、よく分かんないなぁ……」


 思わず遠くを見つめて吐露する。


 どうせあっちから、謝ってくるような事はないだろうからなぁ……。


 この発言にフィーちゃんが食いついた。


「えっ喧嘩したことないんですか?」

「こういう感じの、大きいのはね。だっていつも、私が諦めて終わるもん」


 兄弟の喧嘩なんて、そんなものだと思う。

 結局下が粘って、上が歳上だしなぁと折れて終わるもんだろう。


 いや、性格にもよるけどね?

 でもセツもあれで結構頑固だからね。

 まぁ私もなんだけどさ。


 いらんところが似た者姉弟ですねー。今は本当にそこが最悪だなと思うよ。


「お姉様、セツの事も大事でしょうけれど、魔法陣も探さないといけませんの」

「あ、そうだった」


 リリちゃんの的確な突っ込みに、本来の目的を思い出す。


 とりあえず自分の悩みは隅に追いやって、そっちについて考える事にした。


「しかし魔法陣ねぇ……昨日見た時、何も感じなかったんだけどなぁ」


 私が昨日見てない場所にあるのだろうか。

 でもなぁ。あれ、大きさも必要なんだよね?


 廊下の壁に描かれているような魔法陣は、そもそもそれほど大きくない。


 それはそうだ。

 屋上は広いから、描けたけど。

 内側の壁には、その広さがないんだから。


 ……じゃあ、外側なら?


「外壁……? いやでも一応、ここまで来るときみんなも私も見てる……」


 生徒を帰すため、という名目もある見回りなのだ。だから最初にそれを探す意味も含めて、闘技場の外も見回っていた。


 その時、気になる魔法陣はなかった。

 ていうか、魔法陣がまずなかった。

 あったらレイ君がまっしぐらだ。


 つまり外側にはない……本当に?


「でも女神様は、わざわざ伝えに来た。それにその話ぶりから、ここにあるのは間違いない……」


 さて、女神様はなんて言っていたか。

 思い出せ。そこにヒントがあるはず。


「今日の夜、相手と鉢合わせて死ぬ……って言ってた」


 なら、私はそこに辿り着いたんだろう。


 それは何故か。


 思い付く場所だったから?

 目立つ場所だったから?


 ……少なくとも。ここにそれほど詳しくない私でも、見つけられる場所だ。


「待ち伏せ、とは言われてない……じゃあ偶然会ったんだよね、多分」


 そしてそれを隠すために、私は殺された訳で。


「……ってこれ、徘徊する男と、深夜の魔法陣か?」

「それは……七不思議の話でしたっけ?」


 ぶつぶつ言ってた私に、フィーちゃんが尋ねてくるから肯いた。


「ドロシア様の予言……気をつける事、だね」


 それに気付かずに、私は突っ込んだのね。

 すみません、ドロシア様。

 貴女の努力、水に還す真似をして。


 でもまだ私は生きてるから……これは名誉挽回しないとね!


「深夜ねぇ。0時って事でしょ。てすると、結構早く見つけたんだな。なんでだ……やっぱ目立つから……光ってたから……変な人がいたから気になった?」


 変な人がいたら、警戒しつつも魔法陣がヤバいのは分かってるので、私は止めに入りそうな気がする。


 まぁ、真っ向から行って大丈夫な訳ないね。

 それは冷静な今なら分かるけど。


 その時は多分魔法陣と変な人しか、目に入ってないだろうからなぁ。魔法陣だけを見つけたなら、私は確認はしても死にはしないと思う……多分。


 とりあえず、保留にする。


 だけど変な人が怪しい事してたら別。

 それが1番可能性が高い。


「てすると、やっぱり見つけやすくて、光ってるのが分かって、相手がいるのも分かる所……」


 中央のフィールドを見ながら、考える。


 あぁいうとこなら広さあるしいいんだけど。

 しかしあそこ、明るいなぁ……。


 そこで、はたと気付く。



「あれ、今日曇りだよね?」

「え、ええ……まぁ明日は、天気がどうであろうと、魔法で晴れさせますので問題ないですけれど……」



 バッと顔を上げた私に、リリちゃんがビクッとしつつ答えてくれる。


 ごめん、驚かしたね。


 ぶつぶつ言いながら下向いてる人形が、突然動いたら驚くよなぁ。


 でも、それどころじゃない。


「ねぇ……あのフィールドってさ、今日明るくない?」

「え? いえ、曇りですし昨日より暗いと思いますけど……」



 リリちゃんのその言葉に、確信を掴んだ。



「ビンゴ! みっけた魔法陣‼︎」

「えっどうしましたのお姉様?」

「今ので見つかったんですか⁉︎」


 勢いよく立ち上がった私を、2人はびっくりした目で見てそう言う。


 だから得意げに、振り向いて答えてあげる。



「私には、昨日とここの明るさは変わらないの! 灯台下暗し、だよ‼︎」


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