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25話 百合を送る理由

 ちょっと納得いかないけれど、アルバート王子も仲良くしておきたかったって事でいいかな?


 上手くいけば長い付き合いになるものね……主人と家臣。


 そうであれば仲良くするために、相手のことを知っておきたいというのも当然だ。職場環境は大事だと、前世の父母がよく愚痴ってました。


 それならば、私としてもある程度意見を言わせてもらおう。


「百合やお手紙、毎日送って下さってありがとうございます。こんな事は初めてなので、とても嬉しいです。……ただ、私自身あまり手紙のやりとりはした事がなく、だからこそ頂いたものには、丁寧にお返しをしたいと思うのです」


 あくまで、失礼にはならないように。

 慎重に言葉を選んで、話す。

 これも曇りなき私の気持ちだ。


「私に、丁寧にお返事させていただく時間を頂けないでしょうか?」


 アルバート王子の送ってくれる百合は、とてもいい香りがする。

 頂戴した誓いの百合はいつだってあるけれど、あれは魔法で物質変化させたせいか、香りがないのだ。


 その点生花は溢れんばかりの香りで、私を幸せにしてくれている。

 永遠でないからこそ、今が1番だと言わんばかりに、芳醇で清楚な芳しい香りを生み出す。


 だからすっかり百合が好きになるくらいには、届けてもらう百合を気に入っていた。


 お手紙だって毎日だから短いけれど、丁寧な筆跡からも彼の人柄が窺える。

 時間を掛けてくれているんだなって、言葉遣いとか話の選び方とか、品の良い感じが手紙から分かるのだ。


 恋愛話っぽいチョイスは間違ってるけど。


 そうだからこそーーこんな素晴らしい人に何返せばいいんだって、悩むんですよこっちとしては‼︎


「確かに急かし過ぎました……弟君が言うように手紙は一方的ではなく、互いにコミュニケーションをとるもの。返事もないうちから、送るべきではなかったかもしれません。少しでも知りたいと思ったもので……」


 そう、少し困り顔で照れたように仰った。


 あーなるほど。仲良くなるには、相手を知ってからだもんね!話さないことには始まらないのは確かだ。

 さすが王子! コミュ力が違うからこその発想ね!


 それに比べて……あ、こっち見ないで下さい!


「それに毎日百合を送るのであれば、ついでだとも思っていたので」

「なんで姉に、そんな毎日百合を送る必要があるんですか?」


 穏やかな王子の話に、眉を寄せながら弟はそう尋ねる。


 んー? なんでだろうね?

 セスくんの疑問はもっともだと思います!


 だって私、それ関連の話はしてないもんね。迷惑かけたくないし。


「クリスティア嬢……まさかその百合の話、まだされてないのですか?」


 驚きと困惑の眼でこちらを見つめられた。


 おおーっと? これは私が悪いのか⁉︎

 え、そんな話さなきゃいけない事でしたっけ?

 私が分かってるだけじゃダメなの⁉︎


 内心冷や汗ダラダラのまますっと横を向くと、アルバート王子は諦めたように口を開いた。

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