22話 打算でなくて
はい、やって参りました2回目のお城訪問ー!
お城の場合、訪問であってるんだろうか。
疑問である。登城の方が正しいかな?
お礼を言いたいと無理を言って、セスのお父様のお仕事用馬車に乗っけてきてもらっている。
本来ならそんなに気軽に、お城に行っても会えるものではないのだけれど……短時間でかつ、セツが同席ならという謎条件でOKが出た。
いやぁ割と軽く了承してくれたけど。
言っとくけど相手はお城の王子サマだからね?
申請とか謁見とか大変だったんじゃないかと思うんだよね。内容も私としてはむしろありがたい条件でしかない。
「でも何故お願いを聞いて頂けたのですか?」
無理を通した自覚はあるので、やっぱり気になって聞いてしまった。
フツーは通らないよね?
そのままの意見じゃね。
裏があるんでしょ?
途端に、マジで聞くのそれ? みたいな目でセツがこっちを見てきたけど。
いいのよ私達5歳だから!
子供は無邪気!
いざとなったら「あれれ〜?」って言っとくのよ!
「ははは、クリスティアちゃんは鋭いなぁ」
朗らかに笑いながら、あまり困ってもなさそうにセスのお父様は答えた。
本当、怒る事があるのかってくらい、本家のシンビジウムは優しそうな人ばかりなのよね。
何故クリスティアとセスはあんな感じになってしまったのか。不思議でしかない。
「2人はアルバート王子を支えてあげて欲しいんだ」
「支える?」
おお、珍しくセツが話に入ってきた。
気になったのね!
「アルバート王子は賢いお方だ……だけどあの歳では賢すぎるんだよ」
「……あぁ」
セスのお父様の話に、私は小さく嘆息した。
何となくわかる。確かに、納得と言えば納得かも。
「? なにがいけないのそれ?」
分かってない人が約1名いた。
小首を傾げて眉を寄せるその姿は、見るからに本当に何もわからない子供だ。
まぁ大抵の場合そうだと思うけど、兄弟のうちの下って人付き合い的なのも要領良いし、こういう苦労はわかんないかなぁ?
仕方ないので、軽く説明してあげる。
「んー……私が思うに、人間は普通と違う人がいた場合、大体取る行動は2パターンなんだよ。……1つは褒め称えて集まる。もう1つは……避けてあることないこと言うの」
「……面倒くさいな人間って」
言葉を選びながら話した。それに対してしかめっ面して吐き捨てるように返す。その声には、ある種の魂が篭っていた。もっともな感想だと思う。
「そう思うなら、アルバート王子の良き理解者になって差し上げればいいのよ」
まぁだから要するに、何も気にせず話ができる友人やそれに近いものとして、推薦したってところだ。
そうでもなきゃこんな気軽に会えないだろう……私はともかく。
そんな話をしてたら。
「いやぁ……私の子供たちも賢すぎて、いくつだろうかと考えてしまうね」
一度人生経験してそうだよね、と言う言葉に2人してビクッとしてしまった。賢いのはお父様の方では?
「……私達で力になれれば良いですけれど」
気を取り直して、そう告げる。
私は弟がいるから、とても支えられている。
彼は私をよく分かってくれているから、私は今、私でいられる。1人だったらちょっとどうだか、分からない。
5歳児感覚で言ったら、私たちも浮くんだろう。そうじゃなくても、自慢じゃないが私はそのうち浮く自信がある。対人能力がないものでね!
だから私にとって、理解者である弟の存在は大きい。
アルバート王子に、そんな人がいないなら。
それはとても大変だと想像に難くない。
私は無理ですね、耐えられない。
けど王子には側近とも言える、ゲームの攻略対象ヴィンセントもいるはずで、彼がいたら上手いことやりそうなんだけど。
ゲーム内のアルバート王子とヴィンセントは、幼馴染でお互いを尊重している友人同士だ。
弱い立場にいたら、子供だろうが彼は黙ってなさそうなんだけど……まぁ現時点でどの程度ヴィンセントかは会ってないから分かんないか。
どちらにせよ、周囲から浮いて見えることには変わらない。
それほど王子は明らかに優秀なのだ。
子供ではないと思えるほど。
良くも悪くも注目される。
私達は人生2回目だけど、アルバート王子は正真正銘の6歳なのに。セツ……雪隆の6歳時なんて、遊んでるだけだったじゃないの。
そう思うと彼の優秀さをさらに実感しながらも、心配になった。彼はまだまだ子供だ。
もっと彼を理解したい。
殺されるのは困るけど、それ抜きで仲良くできるならしたい。浮いているのは……辛いものだ。
偉そうなことは言えないけど、せめて隣にいる間だけでも同じ目線になれたら。
私から見れば、いくら優秀でも。
王子は子供に違いない。
それに、彼とヒロインの恋愛模様を見守ってきた立場としては、知り合いの気分というか、世話を焼きたくもなるというものだ。
そう決心したところで馬車が止まった。いつのまにかお城へ着いていた。