211話 火のないところに、煙は立たない
「えーと、まぁだから、これ全部本当にある話なんじゃね? と思って。クリスティアなら、なんか知ってるんじゃないかなと、思ったんだけど」
仕切り直してセツがこちらを見る。
あぁこれ、ゲーム知識を聴かれてるのか。
今の話じゃなくてね。
……考えたくなかったけど、これ七不思議あるってなると、裏キャラルートも入ってないかな……いや、でも裏キャラ会ってないよね?
そのルートはやってないから、分かんないんだけどなぁ……。
でも、分かる範囲の話なら。
「多分、ドラゴンの話は本当じゃないかなーと、思わなくもない……」
もしその話が本当なら。
あの急に、学園に現れたドラゴンの話は繋がる。
アルバート王子の怪我の原因であり。
主人公の聖女の要因でもある。
最後にどこから来たのかと思った、アレ。
「えっドラゴンがいるんですか⁉︎」
いち早く反応したのは、研究家の方だった。
「いやー。まだ分からないけど……でも私の予想だと、そのうち現れる可能性が高いから、七不思議が正しいって言うのも、ちょっと納得出来る気も……」
「どの種類ですか⁉︎ 大きさは⁉︎ 色は⁉︎」
「……レイ君、本当に大きいやつだから、今回は研究諦めようね……?」
目を爛々とさせて追及してくる。
でもあの時出てきたドラゴンは、多分ワイバーンどころの大きさじゃない。
スチル1枚しかないし、あとはミニキャラになったみんなが、力を合わせて闘うミニゲームしか記憶にないけど……。
『学プリ』のゲーム画面には、『好感度』、『学力』、『魔法』の3つのパラメーターがある。
『好感度』だけは、攻略キャラ専用パラメーターだけど、他はみんなについている。主人公含めてね。
『好感度』は言うまでもないかな?
攻略キャラたちとの、やり取りで上がるものだ。
基本的にこれが高ければ、良いエンディングを迎えられる。ハッピーエンドが近づくというわけだ。
だがそもそもこれは、『学力』と『魔法』が足りないと、ハッピーエンドまでの好感度が、足りなくなる。
アルバートルートの場合、ある程度自分の攻略したいキャラ意外の、『好感度』も上げないと、最後のドラゴン戦が大変になる……。
『学力』はテストなどで上がる。
まぁ最初にやった、入学時のクラス分け試験とか。たまーにあるやつ。
ここが高くないと生徒会には入れないし、あと『魔法』のパラメーターが一定以上、上げられない。
おそらくなんだけど、難しい魔法を覚えられないって事かなと思う。
だからたまに入る「筆記試験」ミニゲームは、全力でやってた。これが一番効率よく、パラメーターあげられるんだよ!
攻略キャラたちの『学力』は、「一緒に勉強する」の選択肢で上げられる。同時に『好感度』もちょっと上がる。
そして最後、『魔法』は、勝手に上がる。
ただし、時間経過と。
『学力』と『好感度』のメーター次第で。
ちなみに、主人公は最初から7割パラメーターが埋まっている。魔力が優秀な設定だからね。
そもそも光には、呪文がないに等しい。
正確には、最高位神級呪文が1つあるだけ。
これがいわゆる、「聖女の魔法」なのだ。
そこから埋まってない、この残り3割って、なんだろうと考えると……。
「助けたい」という想いの強さと。
神級呪文を覚える事かとな、と予想する。
『魔法』パラメーターを全て埋めるには。
『好感度』8割以上と。
『学力』8割以上が必要なんだよね。
主人公の場合、魔法が全て埋まってないと、最後にアルバート王子を助けて、『聖女』の称号が貰えない。
攻略キャラの場合はも自然と上がるが、『好感度』と『学力』に左右されるのは同じ。
そして『魔法』がなるべく高い方が、各々のバトルミニゲーム時、有利になる。
その最後のバトルミニゲームが、ドラゴンのイベントなの。
ここでパラメーターが足りないと……みんなバッドエンドで終わってしまう。
思い出すなぁ……左に大きなドラゴン、右にミニキャラ状態の、攻略キャラと主人公で5人、構えて始まるイベント画面……。
なんであそこで運営は頑張ったのかな、と思った……あそこだけ乙女ゲーじゃなくて、本当にただのバトルモノなんだもん。
攻略キャラたちの、最大級の呪文打って行かないと、全滅かアルバート王子が死ぬか……みたいな……。
クリアしても追い払えるだけ。
しかもアルバート王子は怪我をする。
だから最初は「なんだこの鬼畜ゲームは⁉︎」と思ったものでした。
まぁ進めれば、フィーちゃんが『聖女』になるための、布石だったって分かるんだけどね。
でも今のみんなは複属性魔法という、ゲームになかった高度魔法が使えるので、まぁ負ける事はないだろうね。
で! だよ!
脱線しまくっちゃったよ!
ドラゴン、ドラゴンの大きさだよね!
そのミニゲーム画面では、前に3人、後ろに2人の5人が並ぶより、大きかった。
だから……まぁ体長10メートル以上は、あるんだろうと思うんですよね。
巨大な建物並だなぁ……。
でもこれ、ミニキャラ計算だから、デフォルメされてるって考えたら……もっと?
少なくとも、捕まえられる大きさではないので、熱心な研究家には諦めてもらいたい。
「……その話は本当ですか?」
その声に振り返ると、職員室から帰ってきたらしい、残り4人の姿があった。
「あ、みんなお帰り‼︎ アルもドラゴンの話が、気になるの?」
「気になりますね……実は封印されているドラゴンの話を、王室所蔵の書物では見た事があるので」
室内の明るかった雰囲気が霧散する。
あれー。その話、やっぱり本当なんですか?
「けれどそれが出てくるのは、日記の中だけなんですよね。だから真実ではないのではないかと、思われていたのですけれど」
「日記?」
みんな黙って聞いているから、私だけが受け答えしている。
私の問いかけに、アルはゆっくり肯いた。
「3000年前のこの国の王、アランドルフ王の日記です」




