表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、物語に挑む〜ゲームの舞台もフラグだらけです〜
218/565

207話 後先考えない主義

「うわ高……。 もーちょっと考えてから外出るべきだったなぁ。 後先考えないで窓から出てきちゃったよ。これ降りる時どうしよう……とりあえずもう下は見れない……見たら私が死んでしまう……」


 私高いところ苦手なんですよ。

 でも今更そんなこと考えても遅い!

 そして善は急げである。


 クロに乗った時点でもう手遅れ!


 後悔先に立たずですが、まぁ勢いできたからなぁ……。


 力強い羽ばたきと、体温を感じながら前を向く。


「ブランの騎士団見学、ついて行って良かったわー。見てなきゃ今頃、ドラゴンのクロに乗らなきゃいけなかったよ……」


 下からクロの「キュルルル!」という声がする。返事のつもりなんだろう。



 まぁクロっていうか……グリフォンの鳴き声だけど。



 あの後は私は。

 アルに「会いたい」って言われたので。

 とりあえず何とかしよう! と思った。



 ウィスパーボイスは心の声で会話するので、なんというか……本人が意識してる以上に、言葉に感情が篭りやすいんだよね。


 表情とか見えないけど。

 あーこれさびしいんだなと分かった。

 しかもかなりな感じだった。


 声じゃないけど、声音に力が入りやすくなってる、みたいな?


 動揺とか、そういうのが伝わりやすい。


 だから、すぐ会わなきゃ! って思ったのだ。


「ちょっとアルに会いに行ってくるね!」

「え! リスティちゃん⁉︎ もう夕方ですから、寮から出られませんよ⁉︎」


 部屋から出ようとした私を、話の行方を見守っていた、フィーちゃんが慌てて止めてきた。


「無理かなぁ?」

「無理ですよ! というか、出たところでどこで会うんですか⁉︎」

「部屋に……あ、そっか。男子寮女子禁制だね?」


 もうドアノブを掴んでいたけど手を離した。

 そして考え直す……でも、今会いたい。


 だってアルって結構思い悩むタイプだし。

 勢いで聞いておかないと、聞き出すの大変なんだもん。


 それに私だって心配なのだ。それが早く解決するなら、その方が良いに決まっている。


 しかもさっきから「何する気ですか⁉︎」って、ずっと話しかけて来てるんだよね。適当に相槌をうってるけど。


 期待させちゃってるし!

 ここは行かないとだよね!

 約束は守る女、クリスティアですよ!


 どうしたものかとフィーちゃんの方を見ると、窓が目に映った。


「あ、なーんだ。ドアがダメなら、窓でいいじゃない!」

「⁉︎ リスティちゃん、ここ5階なんですけど!」


 窓の方にズンズン進む私に、フィーちゃんが掴んで止めに来る。心配しすぎだ。


「いや、空飛ぶから大丈夫」

「空飛ぶから⁉︎」

「あぁ、フィーちゃんはクロのこと知らないのか」


 一瞬クロは魔獣なので、話そうか迷ったが。


 まぁフィーちゃんなら大丈夫でしょ。

 私の力、もう知ってるようなものだし。

 というか、見せないと多分、ここから出られないし!


 そう思って、固まっているフィーちゃんの前で、ブレスレットのクロに「クロ! 戻って!」と呼びかける。


 淡く銀色の光を発して、クロはスライムに戻った……何故か腕に乗ってるので、手に移動させる。


「えーと、私のペットのクロです!」

「え、え⁉︎」


 口元に手を寄せ肩を上げて、完全に身構えた状態で混乱している。


 うんまぁ、そうなるよねー!


「私の魔力しか食べられないから、怖くないよー?」

「え、あの、そこより! ブレスレットがスライムになった事が、気になるんですが‼︎」


 あぁそっちか。

 てっきり、魔獣を怖がっているのかと思ったよ。


「まぁそれは私の魔法のせいだから! いつもの事だから!」

「えぇ⁉︎ 魔獣の姿まで変えられるんですかっ⁉︎ というか、なんでそんな平然としてるんですか‼︎」


 まぁ変えられるけど、クロはクロ自身の変化なんだよね……って説明すると長くなる!


 残念ながら私は急いでいる!

 フィーちゃんに全てを説明するのは!

 帰って来てからで良いよね!


「まぁまぁ。そういう事もあるよね」

「ないですよ⁉︎ えっちょっと、本当に外に出るんですか⁉︎」


 相槌をうち宥めつつ、窓を開ける私に、フィーちゃんが焦ってそう言う。でも無視して進める。


 だって待っててって言っちゃったもん。



「クロ、ドラゴンじゃないので、なんか飛べるのない?」


 クロを見つめて言うと、クロはこちらを見上げた後、ぴょんっと跳ねて外に出た。


「え! スライム落ちちゃいましたけど‼︎」

「あ、大丈夫大丈夫。ほら」


 目を見開く彼女に、手で示す。



 そこには飛び上がって来た、グリフォンがいた。



「なんでグリフォン⁉︎」

「クロだよ?」

「クロだよじゃないんですけど‼︎」


 唖然としているのを良い事に、窓から身を乗り出して降りようとする。


「ま、待ってリスティちゃん、落ちる、落ちちゃいますー!」

「落ちたらクロに拾ってもらうから、大丈夫ー!」

「怖いもの知らずですか⁉︎」


 私が主張するも、フィーちゃんは止めてくる。


 服を掴んで引っ張られるので、どうしたものかと思うが、説得するしかない!



「今行かないと! ダメな気がするの! 行かせて‼︎」



 目を見てそう言うと、服を握っていた手から力が少しずつ抜ける。


「本気……なんですね。分かりました……でも、一つ言って良いですか?」


 真剣なその目に、私も構えて尋ねる。


「なに?」

「あの……そのままじゃ目立ちまくりです!」

「あ、ヤバいそうだね! ありがと! 行ってきます‼︎」


 そう言うなり、私は窓枠を蹴った。


 ちょっと滑ってドキッとしたけど、なんとかしがみつき成功!


 いやークロじゃなきゃできないね。クロなら何とかしてくれる安心感あるからやったけど、普通は無謀すぎるもん……。


 そしてそのまま、アル以外に見えないように魔法をかけるーー私とクロが、銀色の光に包まれる。


「おし、これで良いでしょ。あ、フィーちゃんキョロキョロしてる。まだここにいるけどね」


 良いアドバイスをくれた友人に一言、ウィスパーボイスで伝えた。



『シーナとリリちゃん、適当に誤魔化しておいて!』

『無茶振りなんですけど⁉︎ リスティちゃん⁉︎ ちょっと、大丈夫なんですね⁉︎ 信じてますからねー!』



 そうして、今!

 ここ男子寮の6階の窓についた!



 ここだけ明かりがついてるから、アルの部屋なはず!


 という事で、クロの首元まで身を乗り出して、コンコンと窓を叩く。


 開けてくれないと困るので、ウィスパーボイスもおまけにつける。


『アルー! 窓! 窓開けてー‼︎ この姿勢つらいから落ちちゃうー!』


 途端に、声にならない雑念というか、驚きが伝わってきた。あ、なんか焦ってるな。


 ドタドタドタッ!

 ザッ!


 すごい足音と一緒に、カーテンが開いてすごい顔のアルがいる。


「アル顔すごいよー!」


 口に出すと、『ちょっと窓開けますから離れて下さい!』と、怒るように言われた。


 あ、窓外開きだもんね。

 確かに邪魔だった。

 ごめんごめんー!


 少し離れると、バッと窓が押されて開く。


 あんなに早く開けられるもんなんだなー。

 変に感心する私と裏腹な、アルは口を開いた。



「ティア⁉︎ 何してるんですかっ⁉︎」



 開口一番飛び出したのは、思っていたより大きな声でのお叱りの言葉だった。


「おおー! ウィスパーボイス切ってないから、二重に聞こえる! 本当に驚いてる‼︎」

「そんなのどうでも良いですからっ‼︎ どうしてここに……あぁそれより! 一度中に……」


 相当びっくりしているらしく、ウィスパーボイスも切らないまま話すので、頭に二重で伝わるのだ。


 思ってる事と言ってる事が一緒なアル。

 結構貴重だなー、面白いかも。


 そんなことを考えて、私はちょっと笑っている。


「なんで笑ってるんですか⁉︎ というか、それ降りられるんですか⁉︎」


 そう言われて、思い出した。

 そかまで考えてなかったことを。


「た、多分……」

「多分って何ですか‼︎ また後先考えずにやったんでしょう⁉︎ これだから……」


 あからさまに不安げに言ってしまったので、アルが怒り出した。


 あぁマズい……。

 お小言が始まる!

 かくなる上は!


「飛び移るから、手貸して!」

「⁉︎」


 その前にダイブだ! それー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ