203話 なんか変
「予選会お疲れ様でした! そしてみんな予選会通過、おめでとう‼︎ 次は本選だね! でもここからはみんなにも、手伝って貰うからそこはよろしくね」
ぱちぱちぱちぱち!
会長らしく労いの言葉を、ブランが述べた。
生徒会室に、私とブランの拍手が響く。
ただし、テーブルの対角線上で。
何故か角と角の、一番遠くにさせられた。
その犯人の様子を……隣に座る、アルをチラリと見てみるが。
「貼り付けたような笑顔で、何もわからないや……」
「何を言っているんですか? 私ほど分かりやすい人間も、そうはいないと思いますよ?」
まぁわかると言えばわかるけど。
明らかに様子がおかしいって事がね!
何故だよく分からないのだけれど、予選会終わった今、ブランと話してたりすると、アルがどこからともなくやってくる。
まぁそれで空気が悪くなる、とかではないんだけど……。
なんというか、違和感があるというか。
最初は気のせいかなと思った。
でも今も、奥に奥にと追いやられたし。
気のせいじゃない気がします!
でも心当たりがないのよね……。
たまに気にしているのか、ちらちらフィーちゃんが見てくるけど。
フィーちゃんとアルが仲良くなってるなら、それは当然、アルが私についてきたら気になるよね。
最近は特にアルは、フィーちゃんに構いがちだったし。そう、私がちょーっとだけ、寂しくなるくらいよ!
私がブランに、迷惑かけると思ったとか?
でもそれ今更だよねぇ。
うーん。悩んでも分からない……。
リリちゃんには、「お姉様が気付けば! 解決しますの!」と言われ、教えてくれない。
他のみんなに聞いても、ヴィンスでさえ分からないと言う。
「でもどうせくー姉がなんかしたんだろ」
そういう弟にみんなが頷いた時は、さすがに怒ろうかと思ったけどね!
だって今回は話してすらいないもん!
予選会の準備中は、休み時間も走り回ってたのだ。2人しかいないから!
休みの日とかも、アルとかリリちゃんは最近、毎回じゃないけど、お勉強しにお城へ戻ってたりする。
王族は大変よね。尊敬しちゃうよ。
疲れちゃいそうだなぁ。
もちろん、私はご主人様を全力サポートしますよ。部下としてね!
そういう訳で、アルとあんまり話してなかったんだけど。
その間にこうなっちゃったわけですよ。
何があったんですかね。
なんか言われたとか?
じーっと見ても、何もわからない。もう笑ってもいないけど……。
その綺麗な顔の下に何を思ってるのか。
悪いけど、全然分からないぞ!
察する能力皆無なんだもん!
私は優しい光使いじゃなくて、強欲の闇使いですからね!
「こらクリスティ。殿下のお顔に穴が開くほど見ないの。今の話聞いてた?」
「えっ! み、見てないよ!」
「うん、聞いてもなかったね」
慌てる私に苦笑いして、ブランはもう一度説明してくれる。大人な対応だね……。
やっぱりこの間のあれ。
気のせいだよね?
その後ブラン、何も言わないしね。
安心したような、少し残念なような、そんな曖昧な気持ちに駆られる。
いや、ブランはお兄ちゃんなんだけどね。
でも今まで、流すような事なかった気が。
うーんダメだ。私の頭がパンクする。
とか考えてたら、今度はアルの視線を感じた。顔をそちらに向けると、その視線は私から外れて資料の方に移った。
あーもう! 悩むの得意じゃないのに!
とにかく一番気にしなきゃいけないのは、隣の王子様ですよね!
そんなこと考えてたので、本選の話はあんまり聞いてなかった。
「あ、あの! リスティちゃん! 今日遊びに行ってもいいですか?」
生徒会終了後、フィーちゃんにそう呼び止められる。
「ん? いいよ? リリちゃんにも声かける?」
「あーいえ、えっと……」
フィーちゃんが迷っているのか、目を泳がせている。
「言いにくいならいいよ。ご飯前ならまぁ大丈夫だろうし」
「あ、ありがとうございます!」
そんなに話しにくいのだろうか?
なんだか緊張している気がするけど。
とりあえず、リリちゃんに「疲れたから夕食まで寝るから!」という適当な嘘をつき、来ないように先手を打っておいた。
寮について着替えてしばらくすると、フィーちゃんが遊びに来た。
「いらっしゃいー!」
「お邪魔します!」
シーナが紅茶やお茶菓子を用意した後、部屋から出て行った。
温かな紅茶は、夏には暑いが緊張は解れるきがする。
「それで、どうしたの?」
適当なところで、本題を促す。
「あの、殿下についてなのですが」
言いにくそうに、フィーちゃんは少し視線を下に外して、話し出した。
「リスティちゃんの事、すっごく気にしてるんです!」
「うん、それは知ってるよ?」
必死そうに言われたが、思わずちょーっとだけ、突っ込みのように返してしまった。
だって態度がおかしいもんね。
その理由が知りたいんだけどね。
もしかして、フィーちゃん知ってる?
「そうです! 私多分知ってます!」
「あ、心読んだね?」
ばっと顔を上げたフィーちゃんに、今度こそ突っ込んだ。
「今回だけは! 許して下さい! だってリスティちゃんの考えが分からなくて!」
「えぇ……私考えだだ漏れだと思うけど」
まぁ、見られて困るものもあまりないから、良いんだけどさ?
私はそのまま、フィーちゃんの話の続きを待った。




