表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、物語に挑む〜ゲームの舞台もフラグだらけです〜
210/565

199話 話題はあの話

「楽しみですわー! 今度の会、どなたが優勝なさるのかしら⁉︎」

「投票制ですものね! 考えてしまうわ!」

「これで優勝したら、女子にモテるってマジかな⁉︎」

「いやお前やめとけよ……コテンパンにされて終わるぞ……だって今年は……」


 ガヤガヤとにぎわう教室。

 いつも以上に、みんなの関心を集める話題。

 それはというと。


「うーん! 私たちとしては、なかなか準備が大変そうだけどね! でもたしかに、気になる気持ちは分かるなー‼︎」


 もうすぐ行われる、魔術遊戯会。

 これについてで、話題は持ちきりだ。


「たしか魔術遊戯会は、その魔術の難しさと美しさを競うものですよね?」


 そう尋ねてくるのはフィーちゃんだ。彼女もちょっと、ワクワク顔ですね。


 魔術遊戯会は魔術の向上を目的として、学内で年に一度開かれるものだ。


 魔術の扱いの精度、難易度、美しさと実用性。全てが審査対象になる。本戦ではそれを観客の前で、1人ずつ発表していくのだ。


 難しい技がたくさん見られるので、毎年大賑わい。しかもどれが良かったか投票して、ランキング形式で表される。


 学年末に行われる、本当にバトルをする実技演遊会と並んで、人気の催し物だ。


「まず予選会もありますから、そちらの準備からですね」


 涼しい顔してそう言うのはアル。余裕がにじみ出ている……王子の貫禄なの?


「でもこれ、希望者参加制なんだよね? 良かったよ全員参加とか言われなくて。私が出たら、みんなの失望の眼差しが痛すぎるよ……」


 教室なので背筋は伸ばして、でも口調だけはいつも通り話す。


 一応『預言師』として名を知られている今。

 それを疑われそうなほど、しょぼい魔法しか使えないなんて、晒すわけにはいかない。


 闇の魔法はどうしたって?

 あれはダメですよ。

 だってなんでもありだもの。


 まぁ、一部は気付いてそうですけどね。


「ただ参加宣言をしなくても外部推薦が多ければ、参加せざるを得ないんですけれどね」


 悪戯っぽく笑われて告げられる。

 なかなかパンチの効いた一言ですけど。

 私のライフは出た時点でもうゼロよ?


「え、嘘」

「ただティアは大丈夫ではないでしょうか。参加したら勝ちそうですから、あえて皆さん推薦しないと思いますよ。それにあそこでは、中級以上の魔法を使うように、指定されてますからね。水と雷では参加できないです」


 つまり! いまだに初級までしか使えない、私のしょぼい魔力なら安心ですね!


 ……なんか傷を抉られた気がするのは、気のせいだよ!


「殿下は参加されるんですよね⁉︎ 楽しみですー!」


 フィーちゃんがアルに笑顔で話しかける。


 そう、いまは三人で話しているのだ。

 結構教室でも、そんな機会が多くなっている。


 まぁ、いじめ対策もあるし。


 何よりフィーちゃんとアルの仲を、進めるためでもあるし……そうなると私は邪魔なんですが。


 アルより、フィーちゃんに「お話ししに来ちゃいました!」と言われる。

 いいのか悪いのかなかなか複雑な気分だよ。


 二人の仲、ちょっとは進んだかな?

 仲良くはなってそうだけど。


 確実に、アルが私に話しかけるのは減っている気がする……自意識過剰じゃなければ。


 たまに、モヤモヤしてしまうコレ。

 なんなのかなー。

 喜ぶべきことじゃない? ねぇ?


 現実でも好感度パラメーターを見たい。

 そうすれば、確実に喜べるのに。


「正直生徒会の準備で忙しいので、本当は少し辞退したいんですけれどね……まぁ、会を盛り上げるのも上に立つ者の務めです」


 キリッとそう告げられて、さすがだなぁと感心した。


 アルは逃げたりしない。

 自分の立場が分かっている。

 そういうの、私はできないから尊敬する。


 だけど、たまに心配になるのだ。


「……本当に大変だったら、辞退してもいいと思うよ?」


 少し言うか迷って目を彷徨わせてから、彼の方を向いてしっかり言った。


 生徒会の仕事の手伝いはもちろんする。

 でもその上王子様って、大変だよね。

 たまに城に帰ってなんかしてるし。


 ゲームでは見えなかった部分を、私は見て知っている。だから気にかけてしまう。


 その言葉に、アルは少し目を開いた後、フッと笑った。


「ありがとうございます。では、後で覚悟しておいてください」

「えっなんで覚悟?」


 怖いんですけど⁉︎

 何するつもりですか⁉︎

 私まだ何もしてないんですが!


 そんな不安を込めた視線を送っても、にっこりバリアーに弾かれる。


「フィリアナ嬢は、出場されないのですか?」


 アルはフィーちゃんに話を振る。逃げた!


「わ、私ではどこまでいけるか……」

「そんなことはないと思いますけれど……フィリアナ嬢におかれましては、光の魔力意外にも、魔力をお持ちでしたよね?」


 苦笑いするフィーちゃんに、アルが尋ねている。


 魔術遊戯会は持ち時間3分の中で、どれだけ技を見せられるかが決め手だ。


 大体例年の優勝者は、複数の魔法を短時間に組み合わせて、盛り上げる方法で買っているらしい。


 つまり、一つしか魔力を持たないような人間なら、上位には食い込めない。


 フィーちゃんは光の魔力持ちだ。


 光は呪文がない……いや、正確に言えば、ひとつだけあるけれど、その組み合わせができない魔力だ。魅せるのには、向いていない。


 でもフィーちゃんの場合、その他にも土と風の魔力を持っている。


 それの組み合わせ次第と魔力量、技術次第では、上位に行けるはずだ。だからアルは聞いているんだろう。


「フィーちゃんの魔法、私見てみたいなぁ」


 ぽろっと本音が声に出た。


 この間のマジカルクッキングのせいで、既に風の魔法のレベルが、かなり高い事は知っている。


 風凪は上位魔法だし、範囲指定は精度が高くないとできない……はずです! 風の魔力なしなので、確証を持っては言えないですけど。


 でもだからこそ、単純にすごいなーって思うのだ。私は純粋に楽しむお客さん側なので!


「そ、そうですか! では私も、優勝目指して頑張ります‼︎」

「えっう、うん。いきなりすごい気合いだね?」

「やるからには上を目指します‼︎」


 私の一言に焚きつけられて、フィーちゃんがメラメラと燃えだした。


 え、アルもいるのに、すごいこと言うね?

 いや良いけど……なかなか大胆な発言だよ?

 喧嘩売ってるようなもんだし……。


 そう思ってアルを見ると。


「……敵を増やすの、大概にしてくれませんか?」

「なんで私に言うの?」


 困った顔で言われても、私も困るだけである。


 結局、アルのその反応の意味は分からずじまいだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ