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フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、物語に挑む〜ゲームの舞台もフラグだらけです〜
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194話 痛い所つかれた

「ヴィンスは最初からリリちゃんの事、気になってたの⁉︎」

「その内容だと、まるで僕が姫様のこと好きみたいなんだが?」


 えぇー⁉︎ ちがうのー⁉︎

 そうじゃないんですかー⁉︎

 私はそこを期待してるんですけど!


「だってヴィンス、最初からリリちゃんに絡み方間違えて、嫌われた訳でしょ⁉︎」

「おい言い方おかしくないか?」

「だってー! 構って欲しくてちょっかい出してたじゃないー!」

「……。」


 墓穴だったのか苦い顔をしている。


 うんうん! 私には分かっておりますよ!

 最初から気付いておりましたよ!


 でも良い絡み方が、分かんなかったんだもんね!


「まーリリちゃんも、あれで頑なだからね」

「というか、姫様はアルバのことしか最初見てなかったからな」


 そう、リリちゃんといえばブラコン。

 もうこれは、イコールで繋げられるくらい、そういうキャラだ……そうだった、はずである。


「誰かが出てきてから、その兄にも噛み付いてるけどな」


 じっと見つめられ、ニヤッと含み笑いをされる。


 うっ……なによ。

 私はなにもしてないですけど……?


 そう思いながらも、視線をちょっと逸らす。


「まさかアルバの上が来るとは、誰も思わなかったな。知ってるか? 最初アルバもちょっとショック受けてたぞ」

「それは大変申し訳ない……」


 だからニヤニヤして責めるのやめて下さい。


 なんかやり過ぎたかもと、思う機会は正直あった。


 女の子が、それも親に甘えられない子が、身近な優しい存在に甘えるのは、普通だ。


 本来のリリちゃんは、それがアルである。優しく構ってくれる、理解のあるお兄ちゃん。心を開いて全力で甘えた結果が、ブラコンです。


 そこに私がちょっと入っちゃったのよねー。


 不器用でも、多少面白くないところがあっても、優しく構ってくれるお兄ちゃんは、誰だって好きになるだろう。


 でもそれが完全に出来上がる前に、さらに理解ある人が現れたら……ちょっとそっちに流れるよね!


 その結果が、今の私達たちの関係ですかね……。


 私が小さい子の心理を理解していて、尚且つ同じ女の子だからこそ、分かることとかもあったからね。


 全力で頑張りすぎた。

 だって可愛いから。

 懐いて欲しかったんだもの……!


 そう言っても今更遅いので、私は口をへの字に噤みます。


「あっという間に鷲掴みにしたからなー。いや驚いた驚いた」


 そう言って、けらけら笑う。

 反対に私は、両頬を手で押さえて後悔の念に駆られる。


「あぁぁ……私は悪い女なの⁉︎ アルからリリちゃん盗っちゃった⁉︎」

「いや、別に悪いことではないだろ。まぁ羨ましくなかったかと言えば、多分誰でも羨ましいとは思うけど」

「やっぱり! リリちゃん好きなの⁉︎」


 凹みかけたが、ヴィンスの言葉に急浮上する。今のところもう一回言いましょう⁉︎


「……いやこれ、一般論な」


 やってしまったという表情をされても、もう遅い! 私の追求はとめどないですよ!


「えー! でもヴィンスもそう思うってことでしょう⁉︎ ねぇ!」

「……クリス面倒臭いな」

「ひどっ!」


 明らかにやる気がなくそう言われて、ショックを受けましたよ! 全くもう!


「誰でもあの顔で懐かれたら、まぁ悪い気はしないだろ。クリスだってそうだろ?」

「ぬ……そりゃ当たり前ですよ! リリちゃんですもの!」


 だからこそ、頑張って今が出来たのだ!

 まぁ、女神に言われた件もあるけど。

 ……あれはまだ終わってないからね。


「あーあ。この話聞いたら、姫様悲しがるんじゃないか? 中身が見られてないって」


 揶揄うように言われますが、真顔でお返事しますよ。


「いや……リリちゃんなら『お姉様を誘惑できる見た目で良かったですの!』って言う」

「……うわ。想像できるのが最悪だ」


 リリちゃん、利用できるものは好きな物のために、何でも利用する主義なのだ。彼女の精神は、かなり逞しい。


 まぁ利用できるところは、利用すると言う考え、ちょっと私も分かるところなので、突っ込めない。


 でも想像したらしいヴィンスは、頭を押さえた。


「まぁ今更あの顔でお淑やかになられても、頭打ったのかと心配になるけどな」

「素直じゃないなぁ……」


 苦笑して目を向けるけど、ヴィンスは目を閉じてすました顔をしている。


「クリスだってそうだろ」

「私懐かれてるから……むしろヴィンスみたいな人がいるからこそ、優越感すらある」

「性格悪いな⁉︎」

「あはは。今更知ったの?」


 思いっきり突っ込まれて、悪い顔で返してあげる。


 私は悪い女です。

 もういいのです。

 開き直りますよ!


 いいじゃないですかー! その為にも結構頑張ってきたんだからー! ご褒美ですよご褒美ー!


 ふふん! とポーズをとっていると。


「……そうだよ。だから、気にする事ないぞ」


 と、小さな声で言われた。ん?


「何が……?」


 目をぱちぱちさせて聞く。


「クリス、これが正しいだのなんだの、考えすぎてないか?」

「えぇ? そ、そんなことは……」

「未来が見えるのが関係あるのか知らないけど、たまになんか見てて腹が立つ」


 グサっとくる言葉に、心臓が煩くなる。

 意味のもなく、後ろめたいような、焦るような気持ちになる。


「あのな、僕たちはそんなもの知らない。自分たちで考えて、正しいと思って選んでる。全部クリスが作ってる、チェス盤の上の駒じゃないぞ」

「そ、それは……分かってるよ?」


 射抜くような視線から、逃れるように目を離す。


 そんなつもりは……。

 いや……どうだろうか。

 そう言われてしまうと、自信はない。


「……でも、みんなのため、ではあるよ」

「知ってる。そうじゃなきゃ、死にかけたりしないしな」


 呆れたように言われても、笑って返す余裕はもうない。すごく居心地が悪い。


 私、間違えちゃったかな。

 嫌われちゃったかな?

 ……どうしよう。


 そう思ってももう遅く、心臓を鷲掴みにされたように、苦しくなる。でも、自業自得だ。


「……はぁー。そんな顔すんなよ。だから気にしすぎだ!」

「わわわっ!」


 わしゃわしゃわしゃー! っと、椅子から立ち上がったヴィンスに、頭を撫でられた。


「僕が言いたかったのは、ちゃんと自分達で選んでるから、自分で抱え込みすぎるなってことだよ! 悩んだら言え! 頭悪いんだから!」

「ひ、ひどーい! 頑張って悩んでるのにー‼︎」

「滑稽だから早めに言え」

「うぅー……酷すぎる……!」


 そして髪が、ぐちゃぐちゃになったんですけど……。


 でもまぁ、なんか笑ってるからいいや、とその顔を見て思った。納得いかないけど。


 そして何故かヴィンスが席を移動した。私の後ろに来る。なんだ? と思ったら。


「結び直してやる」

「えっヴィンスできるの⁉︎」

「姉にさせられてたからな。まぁブラシないけど、多分自分で結ぶよりいいだろ」


 驚いていたが、あっという間に直してくれた。私より百倍上手い。やっぱり器用だなー!


「……姫様の外見で、クリスの中身ならちょろくて良かったんだけどなー」


 結び直しながら、ふとそんなことを言われた。


 む! 聞き捨てなりませんよ!


「それは貶してるわね⁉︎」

「いや単純で楽だなと」

「絶対褒めてないし! それにあり得ないでしょ! リリちゃんはリリちゃんのままが良いのよ‼︎」


 もうぷんぷん怒って、そう抗議した。

 それが分からぬとは何事か!


「……そうだよ。だから、どっちもそのままが良いって話だろ」

「えっ今そういう話だった?」

「そういう話にした」

「もー! 何それー‼︎」


 表情は見えないから、よく分からないけど。

 ヴィンスはきっと、笑いながらこう言った。


「ほら。これで良いだろ。じゃあ仕事に戻るぞー」

「えぇー! もうちょっと休憩……」

「働け」


 そうして渋々、私は仕事に戻りました……。


「もう少し、アルバの事も考えてやれよ」


 整理しながら、そんな事も言われた。


「え? 考えてるよ?」

「……哀れだな」


 ヴィンスは結局こっちを見ないまま、それだけ言って仕事に戻った。


 何が哀れなんだろ?

 私には、よく分からないや。

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