193話 ぶっちゃけどうなの⁉︎
「ヴィンスって面食いそう」
「は? なんですかいきなり」
私は頬杖をつきながら、そんな素直な感想を漏らした。言われた彼は、怪訝な目を向けてくる。
「いやね、同じ面食いの波動を感じたのよ」
「なんなんですかその波動は……」
今は生徒会のみんなで、資料整理をしている。だいたい生徒会室にあるんだけど、他の部屋にもあるからそれを見ている。
ほとんどはあっちにあるから、そんなにみんなで来る必要はない。ヴィンスだけでも足りるんだけど、一人じゃ寂しそうだしついて来た。
机の上でペラペラと書類をチェックする。多分いらない、と思ったものを私が仕分けて、ヴィンスが確認する。
でもチェックは時間がかかるから、結局ヴィンスも別の書類を確認している。
私、これ邪魔してますよね?
気付いたのはさっきで、申し訳ないなと思って、いない方がいいか聞いたんだけど。
「別に、いてくれたら確認する数は多少減りますから、役に立ってないとかではないですよ?」
そう言うので、まぁいっかと開き直った。
しかし書類見ながら言われたので、なんか書類に負けた気がして、ちょっかいを出している。完全にお邪魔虫である。
でも興味あるじゃん?
こういうの、アルにも話してるから分かんないし!
こっそり聞きたいなーという、悪戯心ですね! ……資料に飽きたとも言う。
一瞬こちらを見ていた視線は、もう既に資料に帰ってしまった。
「ぶっちゃけ、リリちゃんのことどう思ってるの⁉︎」
「……整理をしろ」
いきなり突っ込みすぎたのか、呆れ顔で言われた。こっちも見ずに!
「えぇー! いいじゃないですかたまには! 私とヴィンスの仲じゃないの‼︎」
「どんな仲だか……」
突っついてみても軽くいなされてしまう!
つまらない! 2人だけで話す機会って意外とないから、今聞いておきたいじゃない!
「友達でしょー⁉︎ 10年ですよ10年! 長いでしょ⁉︎」
「……クリス飽きるの早いぞ」
もう敬語が消えた素で言われてましたけど、でも。
「よし! ゲームに勝った!」
「は? 何してんだ?」
「ヴィンスの顔をこっちに向けようゲーム!」
「……バカなのか?」
眉を寄せて言われましたが、私は元気です!
「だって今日、半分までで良いって言われたじゃん! もう半分終わってるのに、まだ確認してるから、せめてちょっと休憩しようよー!」
ヴィンスはなんだかんだ、真面目なのだ。
そして優秀だし頭の回転が速い。
だから根を詰めすぎるきらいがある。
それじゃあ疲れちゃうと思うんですよね! 残念ながら、フィーちゃんをあげる事はできないので、せめて休憩を適度にさせたい。
まあ、私と感じ方が違う可能性はあるけどさ! どうせ私がいない時は止められないし、こういう時くらいいいでしょ!
という、一応正当な主張があります!
流石に理由もないのに、わがままはできないのでね。
「……先に帰っていてもいいですけれど?」
「えー! 帰って欲しいの? それなら帰るけど」
「……帰って欲しいと言うほどでは、ないですけれど」
どっちなんだよー!
むむー! っとしてみるが、「アホ面になりますよ」と少し笑って言われました! 酷いです!
まぁ多分この言い方は、いた方が気が紛れるって意味だと思うけど。 そう勝手に解釈します!
「じゃあ私が帰らない為に、ちょっと休憩しましょう!」
「はぁ。少しだけですよ。そのまま放置したくないので、もう終わらせちゃいたいんですから」
意識高い系ヴィンスさんを、なんとか説き伏せて休憩をもぎ取りましたー!
「ではではさっきの続きですけど!」
「あ。話はそこなんですね」
「敬語なしの本音でいきましょうよ、お兄さん!」
「……どこでそんな変な話し方を覚えて来たんだ」
若干不機嫌そうにしながらも、敬語取ってくれるあたりが優しいよね!
そう思って私は満足げに話し出す。
「ちなみに私は面食いなんですけどね? 可愛いもの至上主義なんですけどね?」
「そんなに自慢げに言うかそれ……」
「いやーだって眼福ですもの。良いじゃないの見るくらい、減るもんじゃないし!」
胸に手を当てて、意気揚々と話すけどヴィンスさん乗ってきませんねー。
良いのよ?
面食いって認めて良いのよ?
そして私と語り合ってくれて良いのよ?
「ぶっちゃけちゃおうよー! 正直最初にアルやリリちゃんと会った時! 天使じゃんって思ったでしょー⁉︎」
ヴィンスは絶対面食いだと踏んでいる。
だってもともと女の子好きのキャラだし!
それはもう美女と、ラブラブランデブーしてた訳ですよ!
だからこそ、『学プリ』でフィーちゃんとくっついた時は! おお! タイプが違う! これが本物の愛なのね‼︎ って思うわけで‼︎
もともとは美人が好きな側!
こっち側でしょう⁉︎
今のヴィンスは違うけど!
でも趣味はそう簡単に変わらないでしょ!
私は他者の、恋話的なのが聞きたいのー!
そんな勢いのままに訴えております!
「……まぁ否定しないけど、それは誰でも思うだろ」
「いや! だからこそ! お近くにいらっしゃる、ヴィンスさんの話が聞きたい!」
「どんなテンションなんだ……」
私の盛り上がるボルテージに。
ヴィンスのしらけ具合が浮く。
「まぁそうだな……アルバは最初、お高くとまりやがってと思ったし、姫様は……まぁ、理想的だなと思ったけど」
「おぉ⁉︎ 理想的⁉︎ 理想的ですかっっ⁉︎」
「そのテンションやめろ」
ええー! やだよー!
だって楽しいもんー‼︎
鬱陶しそうにされても、どうしても気になってしまう!
無駄に目をキラキラさせて、お祈りポーズまでおまけしておく。だから話そう⁉︎
「見た目だけな! 見た目だけなら、お姫様をそのまま形にしたようなもんだろ!」
「分かるー! リリちゃん可愛いよね‼︎」
金髪碧眼の美少女!
これを理想的と言わずして、何が理想か!
お人形さんみたいに綺麗なのよねー!
やっぱりヴィンスが揶揄ってたの、そこから来てるんじゃない? と思いながら!
まだまだ追求しちゃうぞー!