表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、物語に挑む〜ゲームの舞台もフラグだらけです〜
203/533

192話 反撃は怖い

「そもそもなんですけど、クロって自分で見たものに化けられるじゃないでふかー」

「お菓子食べてからにしようね、レイ君」


 御茶菓子に出したクッキーを、もきゅもきゅと食べながら話している。


 話は逃げないから。

 私も逃げたくても逃げないから。

 お行儀が悪いよ。



「……ごくん。えーですから、その時点で記憶を持っているという事が言えます。つまりほぼ確定的に擬似魂持ちです。そうじゃないと説明が成り立たないので」



 テーブルの上のクロは、レイ君にドムドムとボールのように、扱われている。


 イメージはスーパーボールかな?

 クロよ、いいのかそれで。

 でもなんか心なしか楽しそうね……。


 複雑な心境の私は置き去りにされて、話は進む。


「ちなみにクリスちゃんが見たものになれるあれは、同化を利用したものです。記憶の共有が起きた結果ですね」

「そうなのね……光の魔力持ってるわけでもないのに、なんでなのか少し不思議だったんだけど。言われて納得したよ」


 じっと黒を見つめると、クロもじっと見つめてくる。

 ただしドムドム叩かれながらだ。シュール!


「しかしよく毎日つけてて大丈夫ですね? 結構魔力採っていくと思ってたんですけど」

「それを分かっていながら、なぜ渡した?」


 あっけらかんといってくれるレイ君に、呆れ顔をプレゼントフォーユーしますよ! 最初の時は酷かったよ! 疲れて疲れて‼︎



「今大丈夫なら、クロが我慢してるか、もしくはクリスちゃんの魔力量が上がりましたね!」

「……なぜそこで私の話?」



 嫌な予感がしてレイ君に笑って聞いてみる。

 こういう勘は、残念ながら当たる。

 なんで当たりたくないときほど当たるんだろうね?


「その反応からすると、最初は疲れてたんですよね? 疲れを感じるのは魔力量が3割以下になってからです。それは結局、魔力を使ってるのと同じなので。毎日繰り返してたら魔力量上がりますよ! 良かったですね‼︎」

「なにも良くない……」


 死んだ目で返すけれど。

 彼は謎にご機嫌である。

 人が苦しんでるのになにが楽しいんだ……?


 そういえば昔、死ぬ気で訓練すれば魔力量が上がるって、アルが言ってたよね……え、闇まだ上がるの?



「現状でさえ測定不能なのに……?」

「え! クリスちゃん、測定不能なんですかっ⁉︎」



 頭を抱える私の目の前で、レイ君の瞳は輝く。


 たまに思う。

 君、住んでる世界が違うんじゃないかな?

 見えてるものが違いますよね⁉︎



「なぜそんな嬉しそうなのか……」

「だって! 測定不能って10万以上ですよね⁉︎ その7割とってくるなら、少なくとも7万毎回溜めこんでるんです! どれだけの魔力になってるのか‼︎」

「確実に危険生物です! 本当にありがとうございました!」



 ヤバいじゃん‼︎

 クロヤバい魔獣じゃん⁉︎

 S級の中でも、最上位クラスの化け物なのでは⁉︎


 君は何をそんなにぽよぽよしているんだ! この食いしん坊! いつでもきょとんとした顔をして‼︎ クロ、恐ろしい子! そう念を送っても、クロは相変わらずよく分からない、つぶらな瞳を向けるだけだ。 ……可愛いから許した‼


「よくクリスちゃん生きてましたね⁉︎ そのレベルは、毎日人が何人か死んでますよー! いやーすごいなー‼︎」

「レイ君ちょっとは反省しよう?」


 この危険生物、元はと言えばきっかけは君のせいですからね⁉︎ 楽しそうに話す内容ではないからね⁉︎

 あんな無茶振りされなきゃ、私だって生み出さなかったよ‼︎


 ……まぁもう可愛がっちゃってるけど!


「やっぱりちょっと解剖したい……」

「そう言いながら、こっちを見るのやめなさい!」


 目が! 目が笑ってないのよ‼︎

 ガチの目を向けないでください‼︎


 するとクロが、レイ君の眉間にコンッとぶつかりに行った!


「あいてっ」

「えっクロ?」


 そしてクロはぽよぽよして、こっちに帰ってきて飛び込んでくる。あわてて手を差し出す。


「わわわっクロ、私運動神経ないからあんまりやっちゃダメだよ! びっくりしたよ!」

「アタックされたオレは無視ですー?」


 キュルルン顔で見てきますけど無視です!

 反省してください!

 その顔は反省してないですからね?


 クロはそのまま掌の上で、こちらを見ながら小さくぽよぽよと跳ねる。褒めて褒めてーって言われてるみたいだ。


「クロー! いい子ー‼︎ よくやったよー‼︎」

「えー無視ですー? 酷くないですー?」


 なんか聞こえる声は幻聴なので無視です。クロに指をツンツンすると、そのまま掴まれて——というか、絡みつかれて? そのままクロは跳ねている。


 なんか嬉しそうだね!

 ちょっと私は不思議な気分だけどね!

 別に指は痛くないから大丈夫だけどね。


「しかしサブマスターにもアタックするとは……クリスちゃん好かれてますねー。こんな事普通ないですよ」


 むくれながらも、興味深げにクロを見ている。レイ君の家には、レイ君とお父様の研究成果による、恐ろしいスライムが沢山おります。まぁクロもそのひとつ、1匹? だけど。


 スライムに魔力を与える事で、テイムできることを発見したレイ君。テイムしてもらったスライムの主ーーマスターに命じてもらって、サブマスターのようになる事で、研究を進めているのだ。


 マスターほどじゃなくても、普通は言う事を聞く。

 ましてや反抗なんてしない。

 そういう事です。クロは特別だね。


「オレのおでこ、赤くなってませんー?」

「え、わかんない」

「えー! ちゃんと見てくださいよ! 結構痛かったんですよー‼︎」


 そう言ってむーっとしたレイ君は、なぜか隣にやってきた。なんで隣にきたのか。


「えー? わからないよ」

「クリスちゃん、僕への関心度低くないです⁉︎ 適当にあしらってるでしょう!」


 君への関心度の下げ方、私が知りたいんですけど。要注意人物への関心度は下がらないでしょう。ブーブー言うので、手を伸ばして指先で前髪を除けて見る。


 ……ていうか、髪サラッサラだな!

 顔ちっちゃい! え、まつ毛長い‼︎

 あれ、あらためて見るとやはり可愛いのでは……?


 そこではっと思い出す。


 私、レイ君って推しだったね。

 可愛さに惚れ込んでたんだったね……?

 もしかして推しが、目の前にいる……?


 唐突に思い出して、なんだか恥ずかしくなった。中身はあれだけど……今のレイ君は、もう小さくもない。


 まぎれもなく。

 『学プリ』の攻略キャラ。

 レイナー・ゲンティアナだ……!



「……あれ? どうしました? ……オレに惚れちゃいました?」



 ふせていた瞳は、いつの間にかこちらを向いていて——そしてニヤリと、妖しく笑う。


「惚れてないですっ‼︎」

「えー? 惚れて下さいよー?」

「嫌だよ‼︎」

「好きって一言いってくれたら、オレ頑張りますよ?」


 何をだっっ⁉︎


 手を引っ込めたのに、手首を掴まれてググッと迫ってくる! 顔面! 顔面凶器ー‼︎ あぁー! 顔だけはいいね‼ 中身はあれなの、わかってるのにー! 腰を倒すけど、これ以上行くと椅子から落ちる……!


 ビュンッ!



「いったー!」

「へ?」



 痛がるレイ君の頭の上で跳ねているのは……クロだった。



 あ、なんか怒ってるみたい。

 ボンボンと跳ねている。

 バシバシと音が鳴っている。


「く、クロ! やめて下さいー!」

「さすがクロ! 私が研究材料になる前に止めてくれるなんて……なんて紳士なの!」

「えっちがっ、うわっ!」


 バシバシとクロに叩かれてレイ君は頭を押さえているけど、クロはそのまま跳ね続ける。


「いいぞー! クロもっとやっちゃえー!」

「えぇー⁉︎ 酷くないですー⁉︎」


 そんなの自業自得です!


 そうして結局資料も読まぬまま、空き時間はクロと戯れて終わりました! レイ君は反省して下さい!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*企画ありがとうございました!*
i583200

*短編悪役令嬢*
流星の如く輝く没落を!〜悪役令嬢はざまぁフラグ貯金でクソゲーを改変したい〜

*こっちは学園物です*
BLACKCAT SYNDROMEー黒猫症候群ー

参加しています。よろしくお願いします!
小説家になろう 勝手にランキング

cont_access.php?citi_cont_id=289234961&s
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ