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フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、物語に挑む〜ゲームの舞台もフラグだらけです〜
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190話 初めての乗馬

 困惑し脳内工場ではてなが大生産された頃、アルは咳払いをひとつして、顔をキリッとさせて言った。


「では一緒に乗りましょうか」


 緊急事態です。

 はてな生産は直ちに中止、従業員は解読に回ってください。


 すいません、今なんて言いましたか?


「ちょっともう一度言って頂けますか?」

「一人だと怖いというのであれば、私が一緒であれば問題ないですよね?」


 にっこりと言われても……いや、うんって言わないでしょ⁉︎


「あの、あのですね、私この授業はお休みしようかと……」

「いえいえ。乗馬は貴婦人でも楽しめる娯楽ですよ。経験があって損はないですから」


 手のひらを前に突き出し、ふるふると首を振りますが、手をそっと握られて言われます。


 求めてない!

 そういうの、求めてないです‼︎

 大人しくフィーちゃんと乗ってください‼︎


「第一横乗りがまず出来ない! 頭おかしい! 私自転車の横乗りも出来ないのにっ‼︎」

「自転車とはなんですか?」


 焦った私の発言に、アルが食い付いてきた。


 そこは食いつくところじゃありません!

 こっちまだ自転車ないのか!

 そして気にするのそこじゃないな!


「それより! フィーちゃんと乗ってあげなよ! フィーちゃんも慣れてないよ‼︎ ね! そうだよね⁉︎」

「あ、私セス君に頼むので大丈夫です!」

「⁉︎」


 隣のフィーちゃんを振り向いて言ったのに、何故か笑顔でそう言われた。


 なんでセツ⁉︎

 いやまぁあの子も乗れるけど‼︎

 でも二人乗りできるのか⁉︎


 弟の方をバッと見ると。


「オレ別にそんなに上手くないけど?」


 少し驚いた様子で、そう言った。


 そうよね!

 そのまま断りなさいセツ!

 それが円満解決の道なのよ‼︎


「ダメ……でしょうか? ご迷惑ですか?」


 そうフィーちゃんは、寂しそうに……そっと瞳を伏せた後、セツの方を向いて言った。


 んんー!

 これは誰でも落ちるやつではー⁉︎

 私でもやられたら「あ、やります」ってなるやつー‼︎


「……落ちても知らないぞ」

「大丈夫です! 私、治癒できるので‼︎」


 案の定弟さんは、視線を逸らしながらそう言われました。


 そりゃそうだわ!

 引き受けなきゃ男が廃りますわ‼︎

 お姉ちゃんが逆に怒りますわ!


 ……いや、私的には断って欲しいんだけど! 姉としては! 断って欲しくない‼︎ という謎の葛藤がね⁉︎


 フィーちゃんの方はというと、グッと拳を握って気合い十分である。


 でもその前提はおかしい。

 何故怪我前提なのか。

 それなら私は止めるぞ! 危ないし‼︎


 私は2人を見て、迷っていたけど。


「……はぁ。嘘だよ。絶対落とさないけど、危ないのは本当だから、手は離すなよ」

「はい!」


 セツはそう言って、フィーちゃんに手を差し伸べる……そ、そんなのどこで覚えてきたの……?


 フィーちゃんはそれに笑顔で、手を重ねて馬の方へ歩き出した。丁度空いてたのね。なんで出来たシュチュエーション……って。


「え、ていうかヒロイン、弟が攫ってっちゃったんですけど!」


 まさかの展開に、私が驚愕している。


 いや! 2人ともなんか仲良いし、分かるよ! あれでしょ、恋じゃないけど仲良い、そう、同盟みたいなやつでしょ‼︎


 私に苦労させられた同盟っぽいものでしょ⁉︎

 あれ、私が原因じゃないか。

 私のせいじゃないですか?


 事実に気付いて、愕然と立ち尽くす私に。


「では、私たちも行きましょうか」


 そう言ってーー腰に手が回された。


「え⁉︎ ちょっと⁉︎ あの! 私はですね!」

「ちゃんとエスコートさせて下さいね」

「話を! 話を聞いて下さいませ‼︎」


 くっ! この! ガッツリホールドされていて、抜けられない‼︎ じりじりと歩かされる‼︎


 誰かに助けを求めようと思って、上半身を捻って後ろを見るが。


「お姉様ー! 楽しんできてくださいねー‼︎」

「リリちゃんは⁉︎」

「私も後で乗りますのー! ちゃんと見ておりますから、頑張ってくださいませー!」


 そう言って、ぶんぶんと手を振られた。


 み、見てるって言われると、逃げられなくなっちゃうんだけど!


 姉の特性、下の子に良いところを見せたい、が発動してしまい、いよいよ逃げられなくなった。


「そんなに怖いですか? 体固まっていますけれど」


 そう言いながら、腰に回す手に力を込められる。


 なんで力込めたの!

 変な方向で緊張するんですけど‼︎


 むっ! と睨むけど、アルは気にしない。


「ほら、だいたいの皆さんが2人乗りですよ。1人で乗れるのは普通ですから、ここぞとばかりに狙ってますね」

「その中で2人乗りはおかしくないかな⁉︎」


 手で指し示される方には、確か2人乗りの人たちが多い。まぁ、婚約者がいない人もいたりするから、学園は出会いの場でもあるのよ。


 でもだからってね⁉︎

 今やろうとしている、この意味がわかるか⁉︎


 そう、例えるならば今2人乗りするのは、デートスポットのいちゃつきの中に、飛び込んでこうぜ! って言われてるようなもん!


 できるかぁ‼︎

 無理です無理です‼︎

 お腹痛くなるわっ‼︎


「ほら、お馬さんに挨拶して下さい」

「挨拶……」


 しれっと子供扱いされた気がしますが、私はそれどころではない。顔を上げて見れば、栗毛の馬が斜め前にいた。お、おっきいよー!


 その手綱は、講師が持っているので動かない。


「後ろには立たないでくださいね。警戒されてしまいます。馬の目は横にありますから。声をかけながら、触ってみては如何ですか? 横ですから、」


 馬が少しこっちを向いている。その耳は、ピンと立っている。


 こういうのは、警戒してると伝わっちゃうよね……。


 そう思って、ちょっと肩の力を抜く。なんな鼻先とか首は、撫でてるイメージなんだけど……。


 犬と同じなら、手を鼻先に出してからかな?


「こ、こんにちは?」


 そしてちょっと撫でるけど、ブルブルと鼻を鳴らしている。良いのか悪いのかはよく分からない。


「大丈夫そうですね」

「これは大丈夫なんですかね……」


 まぁアルが言うなら、大丈夫なのかなぁ。


「じゃあ乗りましょうか。失礼しますよっと」

「ひょあ⁉︎」


 声をかけられたけど、誰でも持ち上げられたびっくりすると思うの!


 でも申し訳ないから、鞍の上に横乗りになる……けど高いよー!


「よっと」


 アルは体重を感じさせない軽さで、ひらりと後ろに乗った。……運動神経の違いなの?


 そして手綱を預かる……のは良いんですけど。


「どうですか? 怖くないでしょ?」

「こ、ここここ」


 そう私の方を向いて言うけど、私は壊れた機械のように目を白黒させる。


 怖いより! 近いです……‼︎


 つまりこれ、抱きかかえられるみたいな感じなんですけど! あの、前にもおんなじような事はあったんですけどね⁉︎


 逃げ場がないんですよ‼︎

 密着度も高いんですけど‼︎

 でも離れて落ちたら死ぬ‼︎


 私が泣きそうな思いで、アルを見上げると。


「……ふふっしっかり捕まってて下さいね?」


 蕩けるような素敵なスマイルを頂きました……私の怖さと混乱を分かってないでしょ⁉︎


「じゃあ行きますよ」

「えっちょ、待って!」

「進みますよー」

「いやー! まってまって⁉︎」


 そうして初乗馬体験は終わりました……。


「どうでしたか?」


 覗き込まれるように微笑まれて、目を逸らしながら答える。


「……悪くはなかったです」


 まぁ……慣れたら楽しいんじゃないでしょうか。


 その解答に満足したのか、アルは「また乗りましょうね」と言った。

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*企画ありがとうございました!*
i583200

*短編悪役令嬢*
流星の如く輝く没落を!〜悪役令嬢はざまぁフラグ貯金でクソゲーを改変したい〜

*こっちは学園物です*
BLACKCAT SYNDROMEー黒猫症候群ー

参加しています。よろしくお願いします!
小説家になろう 勝手にランキング

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