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フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、物語に挑む〜ゲームの舞台もフラグだらけです〜
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184話 言霊ですから

『ねぇリリちゃん』


 珍しく私は、自分からウィスパーボイスを使って、リリちゃんに話しかける。


 理由は簡単だ。

 あんまり聞かれたくないから!


『あら、どうされましたのお姉様』


 チラッとこちらに瞳だけを動かし、なんでもなかったかのように、正面へ戻した。


 だから私も、正面にいる2人を眺めながら、聞いてみる。


『アルって、フィーちゃんが好きなんだと思う?』


 そう聞いた途端、リリちゃんが噎せた。


「だ、大丈夫⁉︎」


 こほこほいっているリリちゃの背中を摩る。

 そんな変なこと聞いたかなぁ?


「わっ姫様大丈夫ですー?」

「だ、大丈夫ですの!」

「何か拾って食されでたのでは?」

「ヴィンセントは黙るの」


 レイ君に心配され、リリちゃんは慌てて返事するが、ヴィンスのチャチャ入れで台無しである。


 奥ではセツが驚くように言っている。


「レイまともな心配できたのか……」


 それにブランが笑顔を向けて返す。


「こらセス君?」


 お陰様で、お姫様はぷくぷくの風船のように、膨らんでしまった。


「……本心じゃない」


 そうノア君が、弁明してくれるがそれは収まらない。


「姫様……可愛いですね!」

「えっあ、うん? そ、そうですね!」


 突然隣から声が聞こえたと思ったら、フィーちゃんだった。驚いた私は、落ち着きのない返しをする。


「フィリーも黙るの」

「可愛らしいは、褒め言葉ですよ! 姫様‼︎」


 眉を寄せるリリちゃんにも、果敢に褒めそやしていくスタイル。結果、リリちゃんは黙り込んだ……なんと!


 こ、これが主人公の力なのね⁉︎

 リリちゃんでさえも心を開き!

 多少の強引も許される愛らしさ!


 私が一生かけても絶対無理だわ……と思いながら、眺めていたら。


「何ぼーっとしてるんですか?」

「ふひゃ⁉︎」


 耳元で声がして、変な声が出た。


 慌てて距離を取って振り向こうとしても、肩に手を置かれていて動けなかった。


「あ、アル! びっくりしたでしょう⁉︎」

「普通に声をかけただけですけど?」


 私は耳を塞いで、アルの方をバッと振り向くが、何か? というような笑顔が向けられるだけだ。


「近いっ!」

「そうですかね? 今までと対して距離は変わりませんよ?」


 顔が熱くなりながら怒っても、飄々と返される。


 むむっ! 黒ドS王子め!

 いたいけな悪役令嬢に悪戯するな!

 ……いたいけない悪役令嬢の矛盾よ。


 でもふと考えてみると、まぁ今までもこのくらいだったかもしれない。


 最近はフィーちゃんに、アルが構っているからなぁ……。


 ん? つまり?


「野生に返りかけている?」

「待ってください。何の話をしてますか?」


 顎に指の関節を当てて、考えていたら横から突っ込まれた。


「わんこがご主人様を、忘れかけてる話?」

「ティアはいつから犬になったんですか?」


 悩み顔でアルの顔を見て尋ねても、彼は呆れた顔しかくれませんでした。


「……お、お姉様は」


 生き返り、息も絶え絶えな様子の姫様が、こちらに何か伝えようとしている。


「ど、どうしたのリリちゃん?」


 その必死さに心配になって、リリちゃんの方に行く。


「お姉様は……どう思いますの?」


 近付いて告げられた言葉は、さっき私が聞いたことに対しての、質問返しだった。


「……関心はあるのかなと思う」


 一瞬だけ瞬きして、瞳を彷徨わせて答える。


 何故そんなことを言ったのか、自分でもよくわからない。


 けれど何故か、いきなり『好き』なんだろう、とは言えなかった。


「……お兄様、もっと頑張ってくださいませ」

「え……あぁ、その話だったんですか?」


 リリちゃんの気迫のある怖い顔に、アルが少したじろいでいる気がする。


 ところで、どの話だと思ってるんですか?


 とりあえず混乱は収まったので、みんな教室へと動きだした。


「私は結構頑張ってる方だと、思うんですがね。どうしてダメなんでしょう?」

「え? まさかそれ私に聞いてる?」


 歩きだしたら、何故かアルとリリちゃんが入れ替わった。


 前2人が美少女で埋められております。

 眼福なんだけどなー。

 でも横が気になる……。


 考え事なのか、正面を向いたままこちらを見ない、その顔を見上げながら尋ねる。


「というか、何の話?」

「人に気付いて貰うのは、難しいなっていう話です」


 やっとこっちを向いた、その姿を見て少し安心する。


 ……なんで安心してんの?


 いやいや。今はこれじゃないね。

 気付いて貰う、ねぇ……。


「何のことか分からないけど、それ直接本人に伝えられない事なの?」

「……と言いますと?」


 不思議に思って尋ねてみれば、少し目を大きく開けて、促される。


「うーん、人って言葉にするの躊躇いがちじゃない? でも大事なことは、言葉にしないと伝わらないって、結構あると思うんだよね。分かってよ、じゃ分からない、というか?」

「行動にしていてもですか?」


 真剣に聞いてくるので、どうもこれは本当に悩んでいるらしい。

 そうであれば、私も真剣に返すまでだ。


「行動だけじゃ、気のせいかもって思う人もいるよ。だって勘違いしたくないじゃない? 期待して、違ったら悲しいもん」


 少なくとも、私ならそう。


 人に期待して、期待した事を後悔して。

 前はそんな事の繰り返しだった。


 自分が勝手に期待した事で傷付くのは、自分のせいだって分かってる。


 だからいつからか。

 期待する事を、それ自体をやめた。


 しっかり目を見て伝えれば、アルは何か感じたのか、早々に目を逸らした。


「……私の覚悟が足りないんですかね?」

「うーん? 分からないけど、アルはきっと頑張り屋さんだから、そのうち分かってもらえるんじゃない?」


 少し俯いて言われたので、覗き込むように言ってみる。


「……たしかに、真剣に言うのは恥ずかしいですからね。でもそうですね、考えてみます」

「うん? うん、頑張って?」


 少しだけ顔をこっちに向けて微笑む姿に、よく分からないながらも笑顔でそう言った。

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