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フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、物語に挑む〜ゲームの舞台もフラグだらけです〜
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169話 ヒロインポジション

「リリー? 婚約者の前で、堂々と口説かないでくれますか?」


 耐えられなくなったらしいアルが、リリちゃんの肩に手を置いて引っ張った。私もそれで現実に帰ってくる。


 そりゃそうだよねぇ。

 妹が危ない橋渡りそうだったら、止めるよ。


「お兄様! 私は真剣に話しておりますの! 大丈夫ですわ! 私の部屋に閉じ込めて、他のものには触れさせませんわ‼︎」

「危ない危ない、危ないからね? その思考」


 リリちゃんがアルに向かって、拳を握り熱く語り始めたので止めます。


 あのね? 知ってる?

 私、ペットじゃないよ?

 よく犬扱いされるけどさ?


「お兄様も他の者に盗られるよりは、よろしいのではなくて⁉︎」

「まず盗る前提の話をやめましょうか?」


 何故こんな話になっちゃったんだろうか。


 すっごく真剣に話すリリちゃんに、すっごく黒くて、にこにこの笑顔向けているアル。


 喧嘩やめようよー。

 え、これ言うべきなの?

 私のために争わないでーって?


「そんなヒロインポジションじゃないでしょ……」


 はぁ、とため息を吐いて自分にツッコミを入れた。


 どう考えても、リリちゃんの方がヒロインだし。

 というか、正ヒロインこの学校にいるし。


 悪役令嬢(わたし)はお暇したいですね!


 この布陣に勝てるやついる?

 いないよ、いないいない。

 最初から負けてるよー!


「何言ってるんですの! お姉様はヒロインですの!」

「え、えぇ……?」


 こっちにバッと振り向いたリリちゃんが、その勢いのままに言ってくれる。お顔が怖いですよー。


 気持ちは嬉しいよ?

 リリちゃんの中で、私お姉ちゃんだもんね。

 お姉ちゃん補正偉大だなー!


 そう思うと、なんか嬉しくなってきた。


「ありがと、いいお姉ちゃんでいられるように、頑張るね!」


 そう笑顔で言ったんだけど。


「お姉様に……フラれましたの……」


 そう言ってリリちゃんは沈んでいった。その結果、私も解放される。


 えっ。そんな大袈裟な。


「そのくらいで挫けているうちは、私に勝ち目はないですよ」


 で、なんでアルは誇らしげなの?


 思わず呆れ顔で見てしまう。


「お兄ちゃんなんだから、妹に優しくしてあげなよ……」

「負けられない戦いがあるんですよ」


 そのままキリッとした顔を、こちらに向けられた。


 いい感じにキラキラだけども。

 アルは何と戦ってるのよ?


「まぁそもそも、現実的ではないですからね姫様の案は。そのうちご結婚なさるでしょう?」

「黙るのヴィンセント……そんなもの、全部破談にして差し上げますの。それか、お姉様付きでも許す人のところに行きますの!」


 腕を組んで、ヴィンスも呆れ顔だ。


 リリちゃんに声をかけているが、地を這うような声で反論されている。


「何言ってるんですか、一国の姫が」

「優秀なお兄様がおりますから、問題ないですの!」


 ヴィンスをキッと睨みつけるリリちゃん。


 それは私も問題あると思うよ?


「……リリーが妹でよかったです」

「え? なんで?」


 アルの表情がちょっと死んでいる。

 心配なので、理由を尋ねるけれど。


「弟だったら……王位継承権の、取り合いになる未来までありますので……」

「いやないでしょ……リリちゃんアルのこと大好きだし……」


 どこまで考えてるのよ。

 リリちゃんに限って、それはあり得ないでしょう。


「恋は人を変えるんですよ?」

「そんなので変わりたくない……」


 そう言ってこちらに、キラキラプリンススマイルをくれました。


 とってもいい笑顔ですね。

 まったくもう。

 呆れ果てちゃうよ。


 お返しに半眼つけときますね。


「その口ぶりじゃ、まるで恋を知ってるみたいじゃないの」


 私がちょっと笑って、アルにそう返すと。


 ピキーーーーーーーーン‼︎


「ん? なんか空気凍ってない?」


 ていうか、アルだけじゃなくて、みんな凍ってない?


 何ここ、冷蔵庫なの?

 いや、冷凍庫なの?

 北極? 南極? 絶対零度?


「……クリス、みんなに謝った方が良い」

「え⁉︎ 私何もしてなくない⁉︎」


 あんまり凍ってなかったらしい、ノア君からありがたーいアドバイスを、頂いたんですけど!


 もう一度言うけど!

 私、今回何もしてないよ‼︎

 えっしてないよね⁉︎


 もしかして、私が悪いのか⁉︎ と思って頭を巡らせ思い返す……はっ!


「アル……もうフィーちゃんの事が好きなの⁉︎」

「なんでそうなるんですか」


 あ。溶けた。


 私が口に手を当てて、驚きのポーズで聞いたら、その拍子にアルが解凍されて、解答をくれました。


 ねぇ、でもその顔なんなの?

 なんでそんなに呆れてるの?

 私が気付くの遅すぎたから?


 逆だよね? みんな気付くの早すぎだよ。

 私ずっと一緒にいても、気付かなかったよ?


「お兄様……そうだったのですね! お姉様のことは任せて下さい!」

「そこは便乗しないで下さい」


 次に溶けたのはリリちゃんだった。セリフを言いながら、またガシッと抱き締められる。


 あ、よかった。リリちゃんも気付いてなかったのね。じゃあなんで固まってたの?


 しかし衝撃の演技上手いなー。

 みんな劇団でもやったら?


 劇団ノーブル、みたいな……あ。これ演技しなくても売れるね。満員御礼。チケット完売。


「あ、じゃあオレもオレもー!立候補しますねー!」

「却下です」

「えー! ほら! ヴィンス君とブラン君も、声を上げるなら今のうちですよ?」


 レイ君の立候補は、早々に否決された。


 ていうか、何を2人に無茶振りしてるんだ。

 みんながみんな、君のようなはっちゃけ研究ボーイじゃないのよ? 知ってる?


「あはは。……でもちょっと、殿下には同情します……」

「……アルバの手前遠慮しますけど、これは酷いですね」

「えぇ⁉︎ 私、そんなに鈍チンだった⁉︎」


 2人とも、チラッとあるを見た後に、哀れみの目でこちらを見る……何その残念なものを見つめる瞳は!


 私だってこれでも頑張ってるのよ⁉︎

 ていうか! なんか言いなさいよ‼︎

 なんで黙って見つめてるのよ‼︎


「……話を聞く前に、これをどうにかしないといけない気がしてきました……」


 アルが手で顔を押さえて、嘆きのポーズをしている……えっなんかごめん。


「も、もうフィーちゃんが好きって気付いたから! 大丈夫! すごい応援するよ⁉︎」

「……はぁ」


 慌ててフォローするも、ため息で返事されます。器用だな!


「ん、あれ。何やってんのこれ。カリキュラムは?」


 そこに扉を空けて、弟が帰ってきた。

 ナイスタイミング、セツ‼︎


「あ! セツ! 助けて! みんなが‼︎」

「よく分かんないけど、絶対姉ちゃんが悪いから謝れ」

「えぇ⁉︎」


 ヘルプを頼んだのに、勝手に決めつけられたんですけど⁉︎ 話聞く前に決めるの酷くない⁉︎


 そして説明したら「……やっぱコレは、諦めた方が良くないですかね王子。なんか申し訳なさすぎて」って言われたんですけど!


 普通に姉がすみませんって言われるより、酷いこと言われたんですけど‼︎


 なんで⁉︎

 そんなに気付くの遅かったの⁉︎

 えっフィーちゃんに会ったの今日じゃん⁉︎


「……対策を考えます。まさか1ミリも伝わらないなんて、思わないじゃないですか……」


 という、アルの嘆きの声だけが、悲しげに響いていた。なんかごめんよご主人様。

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*企画ありがとうございました!*
i583200

*短編悪役令嬢*
流星の如く輝く没落を!〜悪役令嬢はざまぁフラグ貯金でクソゲーを改変したい〜

*こっちは学園物です*
BLACKCAT SYNDROMEー黒猫症候群ー

参加しています。よろしくお願いします!
小説家になろう 勝手にランキング

cont_access.php?citi_cont_id=289234961&s
script?guid=on
― 新着の感想 ―
[一言] リリちゃんが男だったら、とんでもないことになってそうですね(^-^; 二人でクリスを取り合って、最悪内乱に((((;゜Д゜)))) >よく分かんないけど、絶対姉ちゃんが悪いから謝れ やっぱ…
[気になる点] 「勝手期に決めつけられたんですけど⁉︎」 ??『勝手期』? 違かったらごめんなさい。『期』は誤字ですか?? [一言] 燃えるりり様=炎華?(安直) りり様「本気」と書いて「マジ」ですね…
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