表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、物語に挑む〜ゲームの舞台もフラグだらけです〜
176/566

閑話 なんか捕まった【Ⅰ】

「セスー! 終わったから生徒会室行きましょー!」


 女性陣の視線など、あいつにとっちゃ日常なんだろう。クラスメイトたちが大きな声に反応するのも気にせず、呼んできた。


 それにオレは顔を顰めて言う。


「声でけーよレイ。そんなに出さなくても、このクラス人少ないんだから聞こえるだろ?」

「えー? 普通なんだけど」


 不満そうにしているが、どうせすぐ忘れる。


 いっつも研究のことしか考えてないしな。

 あと、目の前のことしか見えてない……オレの周り、そんなやつばっかじゃね?


「ノアー、行くぞー」

「……うん」


 その後ろについて来ていた、ぽへーっとしたイケメンにも声をかける。


 身長はオレの方が大きいけど、姿勢考えると変わんないかも。ノア、すごい姿勢がいいんだよなー。


 あ、レイは論外。こいつチビだし。


「ねぇセスって今、すごく失礼なこと考えませんでした?」


 そう言ってレイが問いかけるのは、オレじゃなくてノアだ。


「ノアに聞くなよ!」

「だって、嘘だったらすぐ分かるし」

「便利道具扱いすんな!」


 「そんなつもりじゃないんですけどー」と言いながらも、唇をタコのように突き出している。その顔面じゃなきゃ殴られてるぞ。


 まったく。こいつこういうところあるからなー。


 くー姉のこともそうだけど、ノアの光の魔力にも興味持ってるから、何かと調べようとしている。


 ほっといてやれよそんなの。


 まぁ話しても平行線だから、こういうのは切り上げるに限る。だから無視して、ドアの方に向かうとそのまま廊下へ出た。


「こんなに可愛いオレを置いていくなんてー」

「お前、それ自分で言うか?」


 ぞろぞろと連れ立って教室から出ると、そんなことを言っている。呆れてものも言えないぞ。


 つーか、可愛いとか言われたくないって、言ってたじゃん。


「セスは絶対言わないからいい。言うヤツには水を掛ける」

「いきなりえげつな!」


 スッと表情を消して言う様にドン引きした。ノアは興味深そうに見ているけど、離れるなら今のうちだぞ。


「あ! 弟様!」


 その時、鈴の音のように凛とした声が、廊下に響いた。


 誰だ? と思って2人から目を離して、そちらを見ると。


「あ。『フィーちゃん』じゃん」


 いつぞやの侵入者がいた。


 あの時よりもさらにふわふわそうな髪に、驚いた顔。そしてそのまま指をこちらに差して、固まっている。


「フィーちゃん? え、セスにそんな親しげな仲の女性がいたんです?」


 彼女に目を向け、バッとこちらを向くと、信じられないようなものを見た目をする。

 顔を見た後に爪先まで見られてから、また顔を見られる。


 なんも変わんねーよ。

 おちょくってんのか。


 仕方がないので、目を瞑りため息を吐きながら、反論する。


「おい失礼だろ。オレだって仲の良い1人や2人……」

「ないなー。百歩譲って1人はクリスちゃんだとして、もう1人は誰です? そんな人がパーティーの際に、オレに泣きついてくるわけないじゃないじゃん」

「……嘘はよくない」


 レイから冷たい視線でジトっと見られたあと、ノアに首を振りながら否定される。


 思わずなんとも言えず閉口する。


 冗談くらい言わせろ。

 モグラ叩きを鉄のハンマーで叩くな。

 全力すぎるだろ。


「あ、あの! ここで会ったのは何かのお導きだと思うので! ちょっと先日の謝罪と、相談に乗って頂けないでしょうか⁉︎」


 手をぐっと握って、見るからに必死です! といった感じで、そう訴えてくる。


 なんでも全力でやらないと、ここのやつらは死ぬんだろうか? 力みすぎだ。


「うわー。逢瀬ですかー。隅におけないですねー」


 レイは相変わらず、というか手を口に翳す演技までつけて、おちょくってくる。


「めっちゃ棒読みやめろ」

「あ、ご友人ですか? あの……弟様を貸して頂けないですか⁉︎」


 オレは物か。

 そしてこいつの弟ではない。


 必死な『フィーちゃん』へ、レイは特に返事はせず無表情で見つめている。そして言った。


「オレに聞くのはおかしいのでは? 決めるのは本人の問題です」

「そ、そうですね……すみません」


 レイの言葉の矢が刺さったのか、『フィーちゃん』は萎縮してしまった。冷たい目に、少し怯えていてかわいそうだ。


 おいおいやめろよな。

 射抜くのは乙女心だけにしとけよ。


 仕方ねーなぁ。餌を投げるか。


「やめろ、レイ。この人『聖女様』だぞ」

「えっ! 『聖女様』⁉︎」

「え、あ、まぁ……」


 冷たい視線はコロッと変わり、キラキラの熱視線になる。


 食い気味に身を乗り出して言うので、その代わりように『フィーちゃん』も、たじろいでいる。


「うわぁー! 本当ですかー⁉︎ オレ、あなたのファンです‼︎ すごい興味あります!」

「おい嘘つくな」

「いったぁ⁉︎ 何するんだよセス‼︎」


 物凄い勢いで、襲いかかりそうなので、頭をチョップして止めた。上目遣いで怒られるけど、さっきの無表情の方が怖かったぞ。


「……興味あるのは、本当」


 ノアがレイをチラリと眺めてから、『フィーちゃん』に向かって謝罪のように言った。


「……あなたは、光の魔力持ちですか……?」


 目を大きく開いてそう尋ねれば、ノアはこくりと肯いた。


「おんなじ」


 まあ光って珍しいもんな。


 よくわからんけど、くー姉も悩みがあるみたいだし、光の魔力にも持ってるやつしか分からない、悩みとかがあるのかもなぁ。


「……また今度、お話ししても良いですか?」

「……うん」

「オレもお話ししたいですー!」


 ノアを見つめて少し嬉しそうな『フィーちゃん』に、また肯いている。そこに手をブンブン振って、いらんやつが割り込んだけど。


 オレはノアの制服の首元を引っ張って、引き離した。


「わっ! 離せよー! 今からお近付きになる予定なのに!」

「今度にしろ。そして人の邪魔をするな。あと怖がられるようなこともするな」

「してないですー!」


 どの口が言うんだ。


 ふしゃーふしゃーと何か言っているが、無視して話を振る。


「で? 話聞けば良いんだっけ? あれ、でもクリスティアと同じクラスじゃなかった?」


 不思議に思って尋ねると、「うっ」と唸って眉を下げられた。やばい放っといたら泣きそう。


「……はぁ。まぁ良いや。話聞くから移動するか。レイとノア、先行っててくれ」


 目を瞑り下を向いてため息を吐いた後、掴んでいたレイをノアの方へ、ポイッと投げるように渡す。


「扱いが雑!」

「ノア、それ頼むなー」

「……うん」

「オレは物じゃない!」


 毛を逆立てて怒っているが、それオレも同じような事されてるからな?

 無視して『フィーちゃん』の前に行く。


「で、どこ行くの?」


 そう聞くと、ぱぁっと笑って「こっちです!」と、あろう事か腕を引っ張られて進む。


 ……オレの周り引っ張り回すヤツしかいねー。


 そんな事を思いながら、ふわふわ揺れる頭を後ろから眺めて進んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 脱字報告です。 「バッこちらを向くと」 「バッ『と』こちらを向くと」ですかね? [一言] 美少女りり様の微笑み……あっ、なんか私も扉開きそう。誰か閉めてください。 クリスティアよりア…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ