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フラグ回収から始まる悪役令嬢はハッピーエンドが見えない〜弟まで巻きこまないでください〜  作者: 空野 奏多
悪役令嬢、物語に挑む〜ゲームの舞台もフラグだらけです〜
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163話 悩みの種

「お前……家に届いた学園規約とか、見てないだろ!」

「え?」


 怒りのあまり敬語を忘れちゃったヴィンスに、怒られました。


「ヴィン君ごめん、こいつ馬鹿なんだ」

「馬鹿って何よ馬鹿って‼︎」


 弟に馬鹿にされます!

 怒っても耳を塞ぎます!

 しかも、はー面倒って顔してるの!


 なんなのよその態度はー! 読んでなかったのは私が悪いけどー‼︎


「まぁお兄様の強行を知らないなら、それはそれで……」


 口元に手を当てて、そっと目をそらすリリちゃんを私は見逃さない!


「待ってリリちゃん? 今『お兄様の強行』って言った?」

「うふふ」

「可愛いけど騙されないぞ⁉︎」


 リリちゃんの両腕を掴んで問い詰めると、頬に片手を当てて微笑まれた。誤魔化し方かわいいし似合うね! そしてそうじゃない‼︎


「あー誰があれ作ったのかと思ったら、殿下だったんですねー」


 レイ君がなるほどー! って顔しているので、こっちに聞こう。驚き2号は口が軽いから。


「それはなんだったの?」

「『婚約者のいる者は、婚約者とともに学ぶように配慮する』って、書いてあったんです。なんだこれ? って思ったので覚えてましたね」


 なるほど!

 私はそこまで心配されてたのね!

 しかし言わせてもらいたい!


「……私、そんな頼りないのかしら……部下として頑張ってきたのに……」


 頭を押さえて、ため息を吐く。


「んー、頼りないっていうかですねー」

「いや頼りないって。胸に刻んだ方がいい」

「それはお姉様なので……」

「目を離すと何をするかって考えるよな……」

「……心配」


 そう言ってみんな、眉を下げてこちらを見る。


 おい2番目! というかセツ‼︎

 聞こえてるぞ! 聞こえてるからね⁉︎

 しかもあんただけ小馬鹿にした顔してる!


 私が拳を握り、ぐぬぬぬっとなっていると。


「気にしなくて良いんですよ? 私が責任持って面倒みますから」

「ひょえ⁉︎」


 両肩にポンッと手を置かれて、耳元で声がした! 驚きで私の肩が跳ねる。しかも変な声出た。


 こんな事する人は、この件の犯人しか知りません!


「アルー! どうなってんのよー!」


 私はキッと睨んで、そっちを振り向いた。


「何か問題でも?」

「優雅に尋ね返された⁉︎」


 プリンススマイルで小首を傾げられました……近い! 効果はバツグンだっ‼︎ 


 ってそうじゃないのよ! 流されちゃダメだ‼︎


「なんなのよ婚約者は配慮って!」


 そう口を尖らせて抗議するけど。


「いえ、むしろ今まで配慮がなかった事が問題です。学園生活は限られたものとはいえ、クラスメイトは共に過ごす時間が長いです。婚約者を吟味するには、うってつけでしょう?」


 そ、そうなのか?

 そう言われればそうかも?

 たしかに他人への接し方とか、観察できるし。


 む? と考え始めた私に、アルはにこやかに畳み掛ける。


「大抵は家同士が決めたものですので、仲良くなる為には時間も必要です。なら、一緒にいた方が良いですよね? それに婚約者に悪い虫が付くのも防げますし」

「……最後のが本音」

「うわ、王子ガチだなー」


 外野の声で現実に戻された。


「フィ、フィーちゃんは悪い虫じゃないっ‼︎」

「……フィーちゃんとは誰ですか?」


 拳を握った私の主張に、アルが不思議そうに反応した。あ。うーん、これどうしよう?


「え、えーと……」

「ティア?」


 目をキョロっとして、指をちょんちょんしながら、そっぽを向いてみたが。


 顔の進路方向は顔で塞がれました!

 くっ! 先回りだと⁉︎

 面舵いっぱい切ったのに‼︎


 しかもこっちが凍りそうなほど、刺すような瞳をしております……ひぇ……。ちゃんと話さないと、この先は涙の海に沈められることなってしまう……。


 という事で見事に白旗を上げ、話し始めました。



「あれですよーそのぉー……アルの運命の人だよっ‼︎」



 途端にみんな目を見開いて止まる。

 いや、ノア君だけは瞬きが増えたけど。

 セツはなぜかうわぁという顔をした。


 この微妙な空気に戸惑うのは私の方。え、どうしようと思っていたら。


「……ここで話すのも良いけど、お昼食べに行かない?」


 そう後ろから問いかける声がした。


「あっ! ブラン‼︎」

「みんな固まりすぎだよ。まぁクリスティがいけないけれどね。ごめんね、片付けで時間かかっちゃった。お腹空いたでしょう?」


 優しい私の救世主〜‼︎ 思わずブランの方に駆け寄ろうとしたら。


「⁉︎ あ、アル?」


 肩に力が入って、ガクッとなった。

 そういえば、肩掴まれたままだったなぁ。

 反射的に振り向いて、その顔を見ると。


「どうしたの?」

「……ちゃんと、話して下さいね」

「う? うん」


 なんだか、寂しげな顔に見えた。不思議に思って尋ねたけど、ため息と共に手は離された。なんだったんだろう?


「じゃあ、学内食堂に案内するよ。FGはみんな平等だから、メイドが運んできたりしないからね?」


 ブランもちょっとアルを眺めた後に仕切り直して明るく、わざと揶揄うように話した。


 おー! 自分で運ぶタイプかな⁉︎

 庶民の私に優しいタイプだー‼︎

 学食美味しいといいなー‼︎


「そこ、味はどうなの? ブラン兄ちゃん」

「作ってるのはシェフだから普通に美味しいよ。まぁ、難しい料理が出ないだけかな」

「オレもお腹空きましたー! 楽しみです!」


 のんきなセツに、笑って答えるブラン。ワクワク顔のレイ君……まぁさすがに料理には研究とかないしね。


「よーし! じゃあ食堂に出発だー!」

「ふふっクリスティじゃ、場所分からないでしょ?」


 拳を突き上げる私に、おかしそうにブランが笑う。


「うん! 案内お願いします!」

「随分と元気の良いお願いだね?」


 頼りにしてますよお兄ちゃん!


 返事の代わりにニコッと笑えば、首を振りやれやれって感じでブランは歩き出した。みんなそれに続く。お昼だー‼︎


 そんな頭がご飯でいっぱいな私は、アルの異変に気付かなかった。


「……アルバ。あんま気にすんなよ」

「お兄様の運命の相手なんて、私がコテンパンにしてやりますの!」


 ヴィンセントはアルバート王子の肩に、ポンと手を置いてから先に歩き出す。リリチカ姫は兄の前で、ファイティングポーズをちょっとしてから、みんなの後を追いかけた。


「……そんな運命、いらないのに」


 ボソッと、けれど吐き捨てるように言われたその言葉は、誰に宛てたものだろうか。


 下を向いていた王子の服が少し引っ張られた。


「⁉︎」

「……信じて」


 驚いて顔を上げて見れば、そこには銀髪の青年がいた。


「ノア……」

「……信じてないと、引っ張られる」


 それは洋服のことか、それとも……。


「いえ……そうですね。まずは問い詰めるところからでした」


 そう言った王子の顔は、さっきのような曇りはなく……すごく良い笑顔があった。それは悪い事を思いついた、子供のような笑顔だ。


「……あんまり酷いこと、しちゃダメ」

「大丈夫ですよ。私はティアにはすごく優しいですよ?」


 おそらく心配してこちらを見る顔に、王子は満面の笑みで答えた――その時遠くで、誰かがくしゃみをする音がした。


「追いかけましょうか。少し距離が離れました」


 そう言って前を見るが、もう他のメンバーは見えない。


「……場所、分かる?」

「ええ。学園案内にありましたからね。私たちの中で覚えていないのは、ティアくらいでしょう」


 2回目のくしゃみをした誰かさんは、寒気を覚えた。風邪かもしれない。


 そして2人は何事もなかったかのように、加速(アクセラレーション)で追いつくと、何事もなかったかのように話に加わるのだった。

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*企画ありがとうございました!*
i583200

*短編悪役令嬢*
流星の如く輝く没落を!〜悪役令嬢はざまぁフラグ貯金でクソゲーを改変したい〜

*こっちは学園物です*
BLACKCAT SYNDROMEー黒猫症候群ー

参加しています。よろしくお願いします!
小説家になろう 勝手にランキング

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― 新着の感想 ―
[良い点] >「……信じてないと、引っ張られる」 ノア君の意味深なセリフが気になる。 なんか含みのある言葉だよね。 [気になる点] 学内食堂楽しみですね。 クリスの能力(望めばなんでも実現可能)でメ…
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