14話 勝負
「え? それはどういう……」
困惑顔の王子に畳みかける!
「もちろん! 恋愛的な意味でというお話ですわ!」
「それは……あったとしてもどうしようもないでしょう、君に言うことではないけれど」
複雑そうな、苦笑いというには柔らかい微笑み――絶対子どものする顔じゃない(でも美しいと思っちゃいました煩悩ごめんなさい)な表情を浮かべ、「君」という彼は先ほどよりも心の距離がちかく思えた。
好機! このチャンス逃すまじ‼︎
「大丈夫です! 私は辞退しますから!!!!」
「え?」
私は勢いのままにそう告げた。予想外の反応だったのか、アルバート王子がたじろぐ。
「お2人でお幸せになっていただいて大いに結構! むしろ最高! お邪魔はぜーーーっっったいにいたしません! 神に誓って!!!!」
「神に!!??」
自信たっぷりの私に、何故か王子の方が焦っているけど知ったこっちゃないのだ。こっちは信用されて、バッド回避を目指すという目的がある‼︎ 作戦成功しないとバッドエンド! やらねばやられるのだから‼︎
フレーフレー私!
フレッフレッ私ゴーゴーゴー!
脳内応援歌でテンションをあげて攻める!
「そ、それは……現実的にむずかしいですし。君にもよいことは何もないでしょう?」
「いえ! 私は王子が幸せであればそれ以上望みません‼︎ それに方法はありますし……たとえば私が病気でどうにもならないとか! ……国外追放するとか!」
「えぇ⁉︎ そんなことできないよ!」
汚れた大人の八百長発言に、驚きすぎて王子のしゃべり方が子供っぽくなっている……! かわいい……じゃないよ! だめだめ気をしかっり持たねば! さぁ、仕上げよ‼
「はい、そこまでは私も望むところではございません……で・す・か・ら!」
胸に手を当て、大きな声で!
そのかおをしっかりみつめて!
そして笑顔で‼
「私、絶対役に立ちます! ご希望とあればアルバート王子のために未来予知いたしますし、恋路の邪魔はしないとお約束します! すごくいい駒になれます!!!!」
息もつかずに捲し立てる。口を挟ませないことで謎の説得力をだす!
「ですから……どうか国外追放だけはなさらないでください~‼ 邪魔になってもせめて田舎送りでご容赦いただけたら……!!!!」
必殺、超本気の泣きつき!!!!
多分今の彼には意味がわからないだろう。でもこれだけ頼まれたら、衝撃的だからそういう思考になりにくくなる、と思う! そう、これはもはや懇願であって、彼の情に訴えているだけ! 策かも怪しい! でもね⁉
姿形にこだわってられないんですよ!
だって国外追放は、バッドエンドなの!
つまり死ぬの!!!!
私が死んだら弟も没落の恩恵を受けちゃうし背水の陣なの!!!!
土下座しろっていうなら土下座も辞さない! まぁこの国に土下座はないと思うけど! ぜんぜん、なんでも、今ならやりますけど!!!!
必死すぎる形相で、手を組んで訴える私に、アルバート王子は。
「えっと……とりあえず座っては?」
すこし敬語が外れ気味になるくらい圧倒され、完全に苦笑いになりながらも、席をすすめてくれるのだった。




