13話 秘密は迷路のなかで
「ち、父が言っていたような気がしたのですわ!」
引きつる頬と唇をむりやり動かして、そう話す。苦しいか⁉︎ と思ったけど。
「あぁお父上ですか……勇敢な方でしたね……」
別の意味でなんともいえない空気になった。
ごめん。そんなつもりじゃなかったよ。
暗いお顔にさせてしまいましたわ。
婚約の原因でもあり父王の命の恩人の話は、彼を子どもとは思えない苦い顔にさせた。うーん! 会話って難しいよう……!
でも逆に考えれば話を繋げやすいかもしれない!
めげない負けない止まらない!
使えるものは同情でも使う!
私は純粋ないい子ではないからね……と心を鬼にして。同情を引くように話はじめる。演技にはそこそこ自信がある。
「父は本望だったと思います……私、父のことを誇りに思っているのです。のぶれす「ち、父が言っていたような気がしたのですわ!」
引きつる頬と唇をむりやり動かして、そう話す。苦しいか⁉︎ と思ったけど。
「あぁお父上ですか……勇敢な方でしたね……」
別の意味でなんともいえない空気になった。
ごめん。そんなつもりじゃなかったよ。
暗いお顔にさせてしまいましたわ。
婚約の原因でもあり父王の命の恩人の話は、彼を子どもとは思えない苦い顔にさせた。うーん! 会話って難しいよう……!
でも逆に考えれば話を繋げやすいかもしれない!
めげない負けない止まらない!
使えるものは同情でも使う!
私は純粋ないい子ではないからね……と心を鬼にして。同情を引くように話はじめる。演技にはそこそこ自信がある。
「父は本望だったと思います……私、父のことを誇りに思っているのです。貴族の義務として、最高の行いでしょう。私もそうありたいです——父のように身を呈しての力はないですが」
ノブレスオブリージュは『地位あるものはお手本となるように』という、誇りとか精神論的心がけの話。まぁ簡単に言ってしまうと、これから逸脱した行動が多かったからクリスティアは裁かれちゃったわけなんだよね。だからこの言葉は、半分本心だ。それもあってかアルバート王子も聞き入っている。
よし、このまま空気を掴むのよ、私‼︎
まずはひとつ深呼吸。
キッと顔を作って、王子を正面から見据えて話す。
「私、あなたの未来を少し知っているのです」
「え?」
ちょうど行き止まり、東屋に突き当たった辺りで話を切り出す。
頑張れ私!
ここは重要な場面よ!
雰囲気で引きつけて、まずは興味を持ってもらおう!
少しずつ、意味深に。重みがありそうにゆっくりと話しはじめる。
「私の父がどのようにアルバート王子のお父上を救ったかは、ご存じですね?」
しっかり目を見て意図的に、一国の王子ではなく個人に呼びかけるように言う。
「え、ええ……それが?」
「私には騎士のように、体格からわかるような力はございません。ですが……父より引き継いだものもございます」
戸惑う王子に、少し微笑みながらそう言って、水晶を取り出す。
「聡いあなたならばご存じでしょう? ……これがどのような道具か」
目を細めて、ニヤリと笑う。
裏がありそうだというように。
まぁ本当はたぶんのはったりだけどね!!!!
私はゲーム知識しかないから! ゲームでは特に、水晶には説明とか触れられてない。それくらい一般知識だったのかもしれないけど、まぁ単純に悪役は描写がそんなにないし……。
にしたって6歳に無茶振りではと自分でも思うけど!
この国は魔法が溢れているからきっと大丈夫!
セスのお父様も、聡いって言ってたし‼
「未来予知……まさかその歳で?」
アルバート王子が驚いた顔をした。
お。当たりですよ王子ー!
私、賭けに勝ちました‼
魔法というのは通常、きちんも習い始めるのは6、7歳くらいかららしい。それも最初はすごいのは使えない。そのほとんどの魔法には、呪文が必要だから。知らないとまず使えもしない。
けれど水晶を使った未来予知……予言は違う。
知りたい事を思うだけ。
そうすると夢を見るように映像が見える。
だから簡単なんだけど、闇属性を持ってない人は一生使えないから他と同じように難しそうに感じるのかもしれない。
「そうです……私の未来予知は父より当たりますわ」
にこりと微笑んで、じっと王子の目を見る。
何もかも見すかすように。
離したら負けだ、これは心理戦だから。
「アルバート王子……あなた様はこのままいけば入学するであろう王立学校で運命の出会いがございますわ」
当たり前の中に紛れるものを人は信じやすくなる——詐欺師の手管を利用しつつ話しはじめた。