11話 王子様と崖っぷち作戦 (挿絵)
扉開けて廊下にでてしばらく歩いてから 「もう大丈夫ですよ」と、アルバート王子に声をかけた。
「え?」
「大人が見ていたから、気をつかっていただいたのですよね? もういないので大丈夫ですよ」
「ちょっとお姫さま気分で楽しかったです」と付けくわえて、手を離す。彼は6歳私たちは5歳。 完全にお守りをさせられている上に、望まぬ許嫁の世話だ。私はこれ以上ヘイトを貯めたくない。ヘイトポイント貯金反対。 もっと有用に運用できるもの貯めたいもんね!
彼は私の発言に少し瞬きして、「そうですか……」と。
不思議そうな顔をされた。
どうしたんだろう……え、まだ死亡フラグ立ってない、よね?
「えーと……アルバート王子、これからどこに向かわれるのですか?」
そんな微妙な空気に助け舟を出したのはセツだった。グッジョブ!
「そうですね……案内といっても城の中は子どもが見ても、そこまで楽しくはないでしょうし。かといって中庭は……また何かあってもよくないですからね」
そう言ってこちらに、少し困ったように微笑む。はぁ、6歳とは思えぬ聡明さねー……子どもが見ても、とか言っちゃうあたり、おそらく本人も自分を子どもだと思ってないのでは? ……とか思ったけど、王子の発言から思い出した。
やばい。まだ謝罪してない!!!!
「その節はご迷惑をお掛けいたしました……!!!!」
いきおいよく深々と頭を下げた。
あらためて考えると王子様になんてことさせてるんだ私は! こわっ!
今はまだなったばかりの婚約者だから、かろうじて許されると信じてるけど‼︎
これが積み重なるとバッド直行なんだってば!!!!
けれども返事が来ない。ん? どうしたの? 頭上げないとわかんないけど、頭上げたら終わる場合ってどうしたらいい? とりあえずどうにもならないので、
この体制を維持していると。
「……貴女は」
「はい?」
「本当に先日お会いしたクリスティア嬢で、お間違いありませんか?」
……
…………
………………。
あーーーー! そうですよね‼︎
5歳児通常ここまで賢くないよねーーー‼︎
やりすぎちゃいましたよねーーーー!!??
いや、でもセツも同じレベルだし⁉︎ そしてアルバート王子に至っては1歳違いとは思えぬ品格あるし⁉︎ 問題ない問題ない……。
「クリスティア……僕は最初からこれだから」
問題ないよね? と目線で訴えたら、やれやれと言った感じで猫を被った弟はそう言ってきた。うーん! そこまで言われると、さすがの私でも理解したよ!
そりゃそうですよね!
池ぽちゃ事件の時の私は正真正銘の5歳児だけど!
今は精神18歳だもん! 違和感しかないよねー⁉︎
なんてこった! こんなところで不信感を抱かせるわけには! いけないんです‼︎ バッドまっしぐらじゃん! し、信用してもらわなきゃ‼︎ あとの策が死んでしまう‼︎
そう! ここは……‼︎
「わ、私! 先日池に落ちたことで覚醒したんです‼︎」
「覚醒……ですか?」
明らかに驚きと不信の色が目に見えるが、もう押し通すしかない!
ここは言いくるめるのよ!
うなれ! 私の言いくるめ技能よ‼︎
今こそ灰色の脳細胞とかに目覚めるべきとき!!!!
「……その事について私、アルバート様にお話ししたいことがございますの」
言いくるめは! 話のすり替えと勢いが大事‼︎
さっと水晶をとりだして不敵に笑う。
私は悪役令嬢クリスティア!
悪役のその凄みを利用するのよ!!!!
「ぜひお話に……お付き合いくださいませ?」




