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106話 腑に落ちない反応

 やぁぁぁってしまったぁぁぁぁ‼︎


 アルだー! って思ったら、ここが廊下なことはすぐ忘れてた!


 いや! 誰か止めてよ‼︎


 お父様もお母様も、私を止めようよ‼︎ 失礼なことしたら怒って! お願いだから‼︎ 恥をかくのはうちの一家全体だからね⁉︎ まぁ私が悪いんですけどぉ‼︎


 貴族ほぼいるんでしょ⁉︎ マズいじゃん! それマズい以外の何ものでもないじゃん‼︎


 顔面蒼白で、おろおろしている私の耳に入ってきたのは……。


「あの様子からどんな子供だと思ったが……」

「あぁ、どうなるんだと思ったがなぁ」

「人外じみているのかと思っていたけれど」


 あぁぁぁ! もう既に! もう既にマイナス評価ですか⁉︎ 人生にリセットボタンはないというのに⁉︎


 思わず泣きそうになるが。


「……むしろ今回の事は、転んで正解でしたね」

「え?」


 アルがにっこり笑って、きゅっと手を握る。


 なんでその反応? ていうか、何がですか……? 転ぶのが正解とか、コントが何かですか……?


「あそこで転ぶとはなぁ!」

「いやはや、やはりただの子供だったな!」

「完璧でなくて、むしろ安心しましたわ」


 あ、あれ? 何この反応?


 そして気付けば、お父様とお母様は他の貴族に捕まっていた。主に私の話題で。


「ふふっヴィンスの時と、同じですね」


 クスクス肩を動かしながら、アルが笑っている。ちょっと! どういう事ですか! 私は真剣に焦ったのに‼︎


「ヴィンスってどういう事です?」


 ちょっとむーっとしながらも尋ねる。


「ヴィンスに力を見せた時、怖がられたでしょう? この中には、ティアがセイレーヌ様を呼んだり、コランバイン卿を眠らせたことを知ってる者もいます。それに何より、今回の事件をほぼ1人で、解決したようなものですから」


 あぁ……だから逆に「安心した」のね。


 でも一つ訂正しとかないとね。


「アル、違うよ」

「何が違うんですか?」

「最後のが、違うよ。私は1人で解決なんてしてないよ。むしろ、1人じゃ何も出来なかったよ」


 そう。勘違いしないで欲しい。私は別に、そんなにすごいことはしていない。


「あれは、シーナが私に訴えて、シブニー教に使われてた人たちが、情報をくれて。状況を理解してくれた、アレキサンダー王が動いて、部隊が突入してくれたから、解決したの。私はただ、ちょっと手伝っただけだよ」


 当日も家にいましたしね。私がしたのなんて、シーナから聞いた状況を王に伝えて、あと当日、邪魔をちょっとだけ排除しただけ。実際に動いていたのは、私以外の人だ。


「みんなが優しいから、なんとかしなきゃって動いてくれたから、解決したの。私はむしろ、ほとんど何もしてないよ」


 私の力は、確かにすごいのかもしれないけど、でも私は1人しかいないし、子供だし。出来ることは限られる。だから誰かの協力なくしては、何も出来ないも同然だ。人の手柄をとりたくない。


 そう思って真剣に話せば、驚いた顔をして聞いていたアルの顔が、ふっと緩む。


「それでも、君がいなければこの事件は解決しませんでした。ティアのした事は、他の誰にも出来ない事ですから」

「そうかなぁ……」

「そうじゃないなら、教えて欲しいですね」

「むー……いじわる」

「そんな事はありませんよ。まぁティアにはちょっと、意地悪したくはなりますが」

「えぇ⁉︎ なんでよ! 酷くない⁉︎」


 そのままアルに引っ張られて、廊下を移動していく。


 捕まったシンビジウム家の人々は、「わざわざ殿下が迎えに来たり、庇ったりするほど仲が良いなんて、仲睦まじくて素敵だ」と、褒め()やされるのであった。



****



「さぁ、ここから出ると、すぐバルコニーです。準備はいいでしょうか?」


 アルに連れられて、バルコニーのある城の上の階へやってきた。この場所は城下からも見えるし、特別な時だけ解放される、城の広場からも見えるので、確かに王国民への謝罪には良い場所だ。


 実際、王国民にめでたい知らせなどをする場合は、王族はここから顔を出したりする。アルやリリちゃんが生まれた時も、ここから見せたりしたみたいだ。


「ま、待って! さっき転んだとこ大丈夫だったか確認が‼︎」

「ああ、そうでしたね、見てみましょう……」

「あ、いいよそこに立ってて!」


 手をパーにして、ストップをかける。


「ちょっと見ててね!」

「え? はい?」


 微妙な返事だが、見てくれるみたいではあるので、そのままゆっくり回転する。


 ピンクの、レースやリボンをあしらったスカートが、ふわりと広がる。ちょっと楽しい。


「どう⁉︎ なんか汚れとかあった⁉︎」


 回り終わって、真剣な表情でアルに尋ねると。


「その……すごく可愛かったです」

「?」


 彼の方からは、とんちんかんな返事が返ってきた。見てなかったのかな?


「確かにこのドレス、可愛いもんね! ふわふわでひらひらで、リボンがあって! 見惚れちゃうの分かる!」

「……まぁ、そうですね」

「え! なにその反応⁉︎ 確かに私にはちょっと、可愛すぎるかもしれないけど……」

「それはないです」


 間髪入れない、即答だった。


「そ、そう?」

「はい、断言します」

「そ、そう……ありがと。じゃあ! 今度こそ見ててよね!」


 ドレスに見惚れてたなら仕方がないので、もう一回回って「どう⁉︎」って聞いたのに、アルは目の辺りを押さえて、下を向いていた。


 ちょっと⁉︎ 見てないじゃん‼︎


 もー! ちゃんと見ててよね‼︎


 その後、ちゃんと確認してくれるまでくるくるしたので、ちょっと目が回りました。

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*企画ありがとうございました!*
i583200

*短編悪役令嬢*
流星の如く輝く没落を!〜悪役令嬢はざまぁフラグ貯金でクソゲーを改変したい〜

*こっちは学園物です*
BLACKCAT SYNDROMEー黒猫症候群ー

参加しています。よろしくお願いします!
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