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群青の空に舞う絆


 

 辺り一面に広がる針葉樹林と白い大地。俺はそんな場所で生まれ育った。父親は居らず、母親は農家。外の世界なんか知らないし、興味も無かった。幼い頃から将来、母親と同じように、朝早く起き、農作業をして1日が終わる、そんな人生を送るのだろう、そう思ってた。

 テレビが映す世界は何処か別の世界の出来事。俺とは一生関係無い。変化も無く、ただ毎日同じような日々が続く。いつかは村で結婚して、子供を育てたりする側になって、いつかは死ぬ、その程度にしか、自分の人生の事なんか考えて無かった。

 そんなある日、母親が日本に行こうとか言い出した。旅行か何かだと思ってた。実態は違った。まさかの移住。一人きりではないとはいえ、いきなり放り込まれた異国の地。母親が一体何を考えているのか、わけがわからなかった。ただ、その後わかった事が有った。俺の身体に流れる血の半分は日本人のものだということ。母親から教えられた2つの言語の片方は、この国のものだということ・・・・・・。そして、俺は今ー・・・。


 

 第1章 俺と亡霊機

 

 二年前

「ヤツェーク!!起きなさいッ!!!!」

 朝っぱらからけたたましい咆哮によって、我がささやかな休息の時間は終わりを迎えた。

「・・・・・・ウッサイなぁ・・・・・・朝早くから何なん・・・」

 軽く口答えすると同時に眼の至近距離にG-SH■CKを突き付けられた。・・・・・・・・・1437・・・・・・・・・なんだよ、全然遅くな・・・

「おやつの時間一歩前で『まだ早いだろ』見たいな顔してんじゃないッ!!早く食事!!」

 ーやれやれ、我が母ながら本日もテンションが高い。大人しく命令に従って遅い朝食兼昼食としよう。


「・・・で、アンタいつ働くの?」

「開口一番それですかね・・・・・・・・・働いてんじゃん。むしろ俺経営者だぞ?」

 皿洗いしながら俺を見る目線は冷たい。

「ふーん?ど ん な 会 社 ? 」

「説明しよう。業種的にはサービス業だ。主に警備業務を担当している。」

 得意気に説明してみせる俺に向けられた表情は、一切笑っていないが、構わず続ける。

「どこ警備を担当しているのかな?」

 声音も一切笑っていないが、続けて、

「それはズバリ!我が家のセキュリティ・・・ィイッ!?」

 顔面真横を高速で何かが通過した。恐る恐る振り向くと、そこには襖に突き刺さったティッシュの箱・・・

「コラそこッ!避けるんじゃない。」

「直撃してたら右眼球、イッてましたがッ!?」

 右手には、今度飛ばすために用意したと思われる泡立て器が握られていた。 

「洗い物ミサイルにしてんじゃねぇ!!こっちはもう飛行機に・・・・・・」

 言葉が詰まった。同時に母親の右手も下げられる。

「ヤツェク・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 2ヶ月前の事だ。航空自衛隊芦屋基地第13教団。その日朝早く俺は教官に呼び出された。

「芦原、悪いがお前に・・・T-4を降りてもらう。」

・・・・・・・・・・・・え?

「・・・・・・・・・村田1尉、それは・・・・・・俺に・・・・・・」

 目の前の教官、村田1尉は黙って首肯し、そして、言った。

「お前は過程免だー。」

 この瞬間、俺がこの国の戦闘機乗りになる可能性は、永久に絶たれた。過程免ーエリミネートとも言う。信じられなかった。飛行訓練の成績はどちらかと言えば良い部類。そのまま順調に行けばいつかは・・・・・・・・・。


「・・・F-2に乗る未来だって・・・有ったのかも知れないのになー。」

 声が沈んでいく。心中察してか、母親も黙っている。

「・・・・・・戦闘機乗り以外にビジョンなんて無いしな。どんな仕事して良いか、分からん。」


『ーこの電車は、中央総武線、各駅停車、三鷹行きです。次は両国、両国です。』

 時刻は既に17時をまわったか。やることが無いので、アキバに同人誌買いに行く事にした。・・・軍資金、何円入れてたっけ・・・。気になって、財布を開けると、中から折り畳まれた何かのメモ。・・・何だろう。見覚えが無い。開くと、いきなりこんなことが書かれていた。

『いつまでも あると思うな 親と金 by かーちゃん』

 ・・・なんだよ・・・。丸めようとした瞬間、一文の下に書かれている何かの住所を発見した。日本語ではない。

「・・・?」

 ポーランド語で書かれたそのメモが、やがて書いた張本人でさえ、予想外の結果となるほど、俺の人生を大きく左右することになるとは、その時知る由も無かった。


 遥か西方の地 ノルトシュルス共和国 ハインツベルク州


 小国、ノルトシュルス共和国南部にある観光で栄える地域、ハインツベルク。世界中から集まる観光客が中世の時代から残る建築物と美しい海を見ながら海の幸を楽しむため、やってくる。だが、生憎、今日の天候は雨模様だ。最も、俺には関係ない。何故なら俺はー。

 ドォオオオオオオオオオオオ

 風防(キャノピー)に吹きつける雨粒と、風切り音。前方視界は極めて悪く、コンディションは悪い。頭上に広がる灰色の空と黒っぽい海が眼下に・・・いや、この機の腹のすぐ下に広がっている。アナログ高度計は10メートル、正面のHUD表示は30フィートと表示している。ーそう、俺と俺の愛機、MiG-29Gファルクラムは、悪天候の中、海面スレスレで絶賛超低空飛行中だった。眼下には白波が立ち、今すぐにも接触しそうに思えてくる。あまりにも危険、だがー。

「・・・低空飛行が怖くて偵察任務が出来るか」

 やがて、正面に島影が迫る。フリーグアウゲン島、最高標高は1500フィート。迫る島の沿岸線。ウィンドサーフィンが盛んな島だが、この天候だ。当然そんなものは居ない。好都合だ。

 僅かに機体を傾け、島の山頂に機首を微調整する。現在速度430ノット、沿岸線に入って2秒で山肌だ。

「・・・・・・・・・」

 軽く息を吐く。

 3・・・2・・・1・・・

 沿岸線上空に進入した。山肌が迫る。

 スウッ!!

 強く息を吸うと同時に右手に力を込め、操縦桿(スティック)を手前に引いた。

 グンッ!!

 身体を押し潰すかのようなGが頭上から襲う。瞬時に機体を180度ハーフロールさせる。

「ーフッ!」

 頭上を山肌が流れる。前方の頂きに十字架が見えた。ビュンッ!!といわんばかりに、後方の視界へと消えていく。機体は未だ背面状態のまま、上昇中だ。

「シュヴァルツ01よりバルト。シュヴァルツ01よりバルト。コンプリートミッション、RTB」

 帰投の旨を告げ、機首を北へと向けた。


 初めまして。当作品は私の趣味全開の作品となっております。ツッコミ所が多数ございますが、ご容赦ください(ヽ´ω`)

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