06.主従契約
目を開けるとあたり一面真っ白い空間にいた
意識ははっきりしていて、さっき眠ったことも覚えている
これは、俗に言う夢だとわかる夢を見ている状態だと気づくのにもそう時間はかからなった
すると前方から何かが走ってくる
その何かは今日出会った魔物だった
魔物は私の前に立ち止まり座る…そして、真ん中の犬が口を開き
「助けてくれたことに感謝する」
「…っ!!?」
喋った…喋ったのだ…
信じられない…だって怪我を治したあとから一緒の部屋で寝るまで一言だって人間の言葉は話さなかった
話せる時間はいくらでもあったのにだ
混乱のあまり呆然と魔物を見る
しかし、魔物は私の様子に動じることなく続ける
「驚くのも無理はないだろう。普通の魔物は話せないからな」
「じ…じゃあなんで…」
「それは簡単な話だ。我達は普通の魔物ではない。代々地獄の門番を務めている家系だからな!」
顔の変化はまだ良くわからないが、自分の家について話した時の魔物の顔は自慢げになっているような気がした
そんな真ん中に向かって右が吠える
「分かっている!…あと、お前の血を飲んだからだな」
「えっ!?」
さっきの自慢げな顔はどこへやら
気まずそうに言われた
普通の魔物と違うということで納得しかけていたため余計に驚いてしまった
「我達は何百年もの間休まず働いていたんだ。それを気にされた王が休暇を下さったのだ…だが、毎日働いていたので動きたくて仕方がなく王に無理を言って人間界の出張を手に入れてやってきた。しかし、思いのほか魔力の消費が多い挙句、人々は我達の存在珍しい魔物だと言い捕獲しようとしてきやがった…そんなぼろぼろだった時お前と出会ったんだ。そして、お前の血から我は魔力を貰いこうして再び話せるようになったわけだ…体を傷つけて悪かった」
自分達の事情を語ったあと今日のこともきちんと謝ってくれた
その時点でこの魔物に対して好感をもっただから言ってしまったのだ
「血を渡せば話せるってことは他の2人も血をあげれば話せるの?」
「ま…まぁそうなるが…」
「それならあげるよ血。そうしたら皆話せるでしょ?あっでも痛くはしないでね?」
「な!?何を言っているんだ!我が言えたことではないが自分の身をもっと大切にしろ!!」
「死ぬほど取られるわけじゃなく痛くなかったらいいよ。それに、1人だけ話せてたら不公平だしね」
軽い気持ちで言ったのだが、魔物は目を見開いて驚く
そんな魔物のことは気にせず、腕まくりをして手を差し出す
2人とも最初はどうするか迷っていたようだが、おずおずと近づいてきて軽く噛んだ
最初に噛まれた時に比べたら天と地の差…それ以上に優しく噛んでくれた
そして、血を少し飲み込む
すると
「血をありがとうございます。兄者のせいですみません…」
「ありがとう〜!声がでたよ!!」
2人とも喋り出す
2人の声が出たことに満足したその時にふとまだ名前を決めていないことに気づいた
なのでついでに名前も決めてしまうことにした
真ん中のこは赤い瞳をしている
右側の子は青色左側の子は黄色だ
皆宝石のようにキラキラした瞳だった
そこで彼らの名前を閃いた
真ん中の子は紅玉
右の子は蒼玉
左の子が黄玉
紅玉はルビー、蒼玉はサファイア、黄玉はトパーズを意味する
我ながらいい名前が付けられた気がする
そこで呼んでみることにした
今は話せるのだ…気に入らなかったら変えればいいそんな気持ちで呼んだんだ
「一緒に暮らすなら名前が必要だって話をナターシャ…一緒に住んでる女の人に言われたんだ。だから真ん中の君は紅玉、右の君は蒼玉、左の君は黄玉って考えたんだけど…どうかな?」
そう聞いた瞬間
魔物が一瞬輝いた
なぜ輝いたのか疑問に思っていると
魔物は焦ったような顔をしたあと、私に顔を近づける
「ばかもの!!さっきまでの血は仮契約であり一時的に我達に魔力を与えていたに過ぎないが名を与えてしまうと契約が成立してしまい死ぬまで我達に魔力を渡さなきゃいけなくなるんだぞ!?」
「そうです!!しかも私達は自分で言うのもなんですが結構強い魔物ですから人にしてみれば大量の魔力が必要になるんです!最悪あなたの命にさえ影響があるかもしれないんですよ!!」
「名前はとっても素敵だし僕ら嬉しいよ?でも、あなたが傷つくのは嫌だ!!!」
紅玉は怒鳴り、蒼玉は咎め、黄玉は目を潤ませながら各々が自分気持ちをいう
そうはいってももうすんでしまったからにはしょうがない
それに私は人に比べ魔力がある
だから少し取られたって気にしない
考え方を変えれば、この子達といることで普通魔力量になり目立たなくて済むのではないかとも考えてしまう
「だって名前が無いと不便だし僕の魔力量は多いからね!それにこれからは家族なんだから気にしなくてもいいだよ?」
そう言って黄玉の頭を撫でる
すると、渋々といった感じで皆納得してくれた
意外とすんなり納得してもらい安心していると魔物が距離をとる
「我が名はケルベロス…しかし、汝に与えらた紅玉、蒼玉、黄玉をもって汝を主と認めよう」
声をそろえて告げる
突然、そんなことを言われて恥ずかしく思っていると
「これからよろしく頼むぞ主よ」
「これからよろしくお願いしますね」
「これからよろしくね!あとさっきの頭ナデナデするのまたしてね!!」
「うん、よろしくね」
お互いに挨拶をして私は3人を抱きしめた
気がつくと、いつものべっどのうえだった
3人は隣で眠っている
「ゆめ…だったのかな…」
(気のせいなどではないぞ。さっきあいさつしたばかりではないですか… 頭撫でて〜)
そういった瞬間、頭に3人の声が響き渡る
「なにこれ!?」
(魔力を使い直接頭に話しているだけだ! 主が契約してくれたので魔力が回復して出来るようになったんですよ。頭撫でてったら〜)
確かに普通魔物が話したらみんな驚くだろう…
かと言って私が一人で話し続けるのも変な話だ
黄玉を撫でながら納得した
「他に出来ることとかある?例えば体の大きさを変えれるとか人間になれるとか…あと出来るなら僕以外誰もいない時は普通に話してくれても大丈夫だよ」
「あぁ出来るとも!下級どもには出来ないが我達は上級の魔物だからな」
「兄者?自慢げに話せることじゃないでしょう?私達は今主の魔力に頼ってる状態なんですよ?分かっているんですか?」
「わ…分かっているとも!主には感謝している!!」
「あはは!紅兄、蒼兄に怒られた〜!」
「うるさいぞ!!お前こそ…「二人とも?静かに」
「「はい…」」
蒼玉に怒られた途端大人しくなる紅玉と黄玉
その一連の流れを聞いていた私はとりあえず困ったら蒼玉に頼ろうと思った
「コホン…失礼しました主。さっき兄者が言った通りある程度のことは出来ます。魔法を使うことも主の例えも出来ます…が主の魔力に頼ることが多いので主に負担がかかります。特に人型になる時は3人に分裂するのでとても負担がかかります。しかし、小さくなる場合は逆に負担を減らすことが出来ますよ」
「そっか…それなら大丈夫かな!」
蒼玉にいいことを聞きご機嫌な私を3人とも不思議そうな顔をして首を傾げるのだった
ブクマ50件達成しました!
本当にありがとうございます( ;∀;)
感想もお待ちしてますので気が向いたらどうぞ!