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09.ナターシャの試練 前

初めての仕事から気づけば、一ヶ月が過ぎていた

あの後もレイ達の家に度々、お邪魔させて貰っている

レイラの調子も安定している

最近は私が魔術の先生になって教えるようになったけど、レイラには魔術の才能があるみたいだ

飲み込みが早く魔力量も多いからこれからが楽しみだ


そんな平和な日々が続いていたある日

いつものように仕事で王都へ来たはずなのに、連れてこられた場所は診療所でなく冒険者ギルド『サーガ』

ナターシャは入ってすぐに受付嬢に声をかける



「ギルド長のラザフォード・ヒューストンはいるかい?」



「はい、少々お待ちください...」



受付嬢は他の人に持ち場を任せてどこかへと走り去って行った

何か嫌な予感がする

数分後、受付嬢は再び戻ってきて私達を奥の部屋へと案内する

そしてその部屋に入ると顔に眼帯を付けた男が立っていた



「お久しぶりです!ナターシャさん。いらっしゃるなら連絡してくれれば良かったのに」



「久しぶり、ラザ坊。いやなに、ギルド長さんは忙しいと思ってね。今日もいたら挨拶をするかな...くらいだったからね」



二人は親しげに話し出した


まぁ、知り合いなんだろうとは思っていたけど...


ナターシャの人脈の広さに少し驚いていた



「いや、それ絶対連絡するの忘れてただけですよね...ところで、そこにいる少年は知り合いですか?」



「いや、私の息子 (けん) 弟子だ。今日はこいつのことで用があってね」



「あぁ、はいはい息子 兼 弟子ね...息子!!?ナターシャさんの!?えっ、冗談ですよね!!?」



「ほう?お前は私が嘘を言ってるとでも思っているのかい?」



息子と聞いた瞬間、ラザフォードさんは目が落ちるんじゃないかというくらい目を見開いて驚いていた

その反面、ナターシャの顔は目が全く笑っていない笑顔をうかべている

しかも、後には般若のお面みたいな幻覚すら見える

そのオーラをラザフォードも感じ取ったのだろう慌てながら訂正しだした



「いや、そんなことないですって!えっと...そのー...今まで、ナターシャさんにこんな大きな子供がいたなんて全然知らなかったんで、つい驚いてしまって、あ...あはは...」



「はぁ...あんたは本当に馬鹿だね。見りゃわかるだろう?養子だよ!養子!!この年で子供なんて産めるわけないだろう!」



「で...ですよね〜」



ラザフォードの誤解が解けた時にはナターシャは怒りを通り越し呆れていた

実は、私はナターシャの『本当の子供』に間違われたことが嬉しかったのだが、話がめんどくなるので黙っておく



「まったく...ギル、この馬鹿に分かるように自己紹介してやってくおくれ」


「うん、分かった。僕は、ギルバート・アルダンテです。年は6歳です」


ナターシャに言われた通り自己紹介して頭を下げる


「俺はラザフォード・ヒューストン。もう知ってると思うが、ギルド長だ。昔、ナターシャさんにはお世話になってな...まぁ、お前の兄弟子みたいなもんだ!これからよろしくな」


ラザフォードは私の頭を乱暴にぐしゃぐしゃと撫でるとにかりと笑う

私もそれに合わせてにこりと笑った


「それで、ナターシャさん今日の要件はなんですか?こいつの紹介だけじゃないですよね?」


「あぁ、もちろん。今日来たのはギルにちょっとした試験をしようと思ってね」



「試験?こいつの?」


ナターシャの発言にラザフォードが不思議そうにこちらを見る

しかし、こちらを見られても困る

だって私も今知ったのだから...



「あぁ、ギルには色々と教え込んできたんだ。その力試しをしようと思ってね。そうだね...Bランクで何かいい獲物はいるかい?」



「Bランク!?ナターシャさんまだこいつは6歳ですよ!?普通、魔物討伐に行かせる年じゃないですしせめてCランクじゃないと危険ですよ!」


Bランクと聞いた途端、慌て出すラザフォード

しかし、私には話がまったく見えず混乱してしまう


「あの...そのBとかCランクってなんなんですか?」


私の発言にラザフォードは小声で「嘘だろ...」と呟いた


「ナターシャさん本気ですか!ランクすら知らない子供に魔物討伐なんて!」


ラザフォードはそのまま私の質問には答えずナターシャに向かって叫ぶ


だから、ランクって何??


「ラザ坊?お前なら分かるだろ。私の特訓に付いてきてて私がそれをさせようとしてるってことはこの子にはその素質があるってことだ...私がそれも分からぬほど老いたと思っているかい?」



「いや、そんなことはないですけど...ですが!」


ナターシャはさっきよりも威圧的な雰囲気を漂わせ、部屋の空気は一気に居づらいものへと変わる

私はそれに耐えきれなくなり口を開いた


「あの!だからランクってなんなんですか?あと、ラザフォードさんは僕のこと馬鹿にし過ぎです。ちょっと調子乗ってる発言かもしれないですけど、強さに年齢は関係ありませんから!」


私の突然の発言にナターシャは笑いだしラザフォードは口を開けポカンとしている


「あっははは!あー流石はギルだね。私の子供だけあるよ!ちゃんと説明してやるからよく聞きな!ランクってのはね、魔物の強ささ。C・B・A・Sまでのランクがあって冒険者は自分のランカーカードのランクまで魔物の依頼がこなせるのさ。お前はまだ冒険者じゃないが、力試しさせたくて今日、直接ギルド長に頼みに来たんだよ」


ナターシャが教えてくれたのでようやく全てが理解出来た

まぁ、そんな規則違反&力も分からない子供に魔物討伐は反対するラザフォードさんの気持ちも良くわかる

でも、私も自分がどれほど強くなったか確認したい


「ラザフォードさん、お願いします!やばそうになったらすぐ帰ってくるし全て自己責任にするので!」


頼み込む私を見てラザフォードは少し考え込むと深いため息をついた


「はぁーーーーー。いやまあ?ナターシャさんが来た時点で嫌な予感はしてたし断れないと思ってたんだけど...はぁーー分かりました!分かりましたよ!!許可します...その代わり、ギル、必ず生きて帰って来ることを約束できるか」



「もちろんですよ!待っててください」


真剣な顔で私の顔を見るラザフォードさんに手を差し出す

その手をラザフォードさんは強く握りしめ堅い握手を交わす


そして、私は最低限の装備を手に今回のターゲット『ジャイアントロックベア』を倒しに向かう

なんかとか間に合いました...(.;゜;:д:;゜;.)

いや〜良かった...


ラザフォードさんは本当はガタイの良いいかにもな感じの人を想定していたのに書いていくと頼りない感じの人になってしまいました_| ̄|○

想定外!!




気が付けば、ユニーク数6000人を超え!PV数は20,000人を超えました!!

読んでくれている皆さんに感謝です!!

いつもありがとうございます!

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