9 四つん這いで額を地につける
「アルティーナさん……お願いします」
『言われなくても分かっているぞ少年』
ナビゲーションスタート。
『三時の方向に敵三人、所持している武器は右から、薙刀、棍棒、ナイフだ。薙刀は間合いが長いが立ち回りが遅い、走って後ろに回り込め。棍棒は一度相手の棍棒に強く鞘をぶつけてその反動から復帰する前に手首をやれ。ナイフなど私は武器だと思っていない。無視して鳩尾をやれ』
「分かりました」
一瞬でその情報が頭に入ってくるが、何とか処理し、理解できた。
薙刀使いを三秒で倒してからすかさず棍棒の攻撃を鞘で防いでから弾き飛ばし、手首を攻撃して怯んだ隙に鳩尾を突く。
そしてナイフ持ちを蹴りで吹き飛ばした。
ここまでかかった時間、八秒。
目の前の戦闘を見て、仲間達に衝撃が走った。
絶対に勝つと思っていた三対一で体格差もこちらが有利な戦い。
しかし、我々の中でも実力が飛び抜けていた三兄弟のゴブリン達が数秒で一人の華奢な少女に倒されたのだ。
この光景を見て、臆病な奴にの中には気を失ってしまった奴もいる。
さて、どうやって倒そうか…………
考えるもあの手練れを倒す方法が見つからない。
「どうしましたか?殺すのではなかったのですか?」
少女が健康的な笑顔で挑発をしてくる。
「あ、兄貴…………あのロリ、できるロリですよ。どうしやすか?」
「降参、するしかねえだろ!」
そう、生きて帰るにはそれしかない。
ここで極東の地から伝わりし、大和魂の最終奥義、DOGEZAを全員でして、最大級の謝意を少女達二人に向ける。
「「「すいやせんでした!!」」」
「……………………」
「「「どうか命だけはお助けください」」」
先程まで威勢がよかったゴブリン達が急に謝り出した。
「ふん。あなた達、その程度で生かしてもらえるとでも言いたいのかしら?」
あ、うちの兎が調子に乗り出したぞ。
さっきまではビビってちびりそうになってたくせに。
「そこを何とか!」
「いいでしょう。あなた方を殺しはしません」
「ということは!?」
「ですが」
「もう二度とあなた達の住処に帰れないと思ってください」
「そ、それはどういう?」
「僕達と一緒に来てください。そして、人間と和解し、悪魔を倒しましょう」
「「「人間と和解?」」」
「「「悪魔を倒す?」」」
「「「そんなことより美少女二人と旅ができるぞ!やったぜ!!」」」
「ねえイナセ、私こいつらと一緒に旅をすることに不安しかないのだけれど」
「大丈夫、きっと楽しい旅になるよ」
この日、イナセとアリスの旅の愉快な仲間達がたくさん増えたのだった。