7 ウサギの村のアリス
古くから伝わるーー剣聖伝説ーーその伝説を築き上げてきたスペルニイ一族は、固有の剣技を多数所有し、円卓の騎士達とは別行動で王家を守る王国の剣として王に仕えてきたという。
その、王国が誇るスペルニイの名を語る者が山兎種であるアリスの前に立っているのだ。
しかし、彼女の戦いぶりを岩陰から見ていたが、物凄い腕前であった。
「助けていただきありがとうございます!」
スペルニイの名を聞いてしばらくの間皆固まっていたがようやく状況を理解できたようで、次々とお礼の言葉を述べていっている。
「い、いや別にそんなに感謝されても…………」
少女はやや困惑した様子で必死になってお礼をする者達を宥める。
「スペルニイ様!お礼としてこの娘を差し上げましょう。華奢な見た目ながら、力はあるので鉱山奴隷として最適かと」
アリスは山兎種の集落の若長老に背中を押された。
「「え?え?え?ええ!?」」
長老の突拍子もない発言にアリスと少女が同時に声を上げる。
「それでは、私達一同貴方の旅のご武運をお祈りいたします」
そう言い残して仲間達は去っていってしまった。
取り残された二人で思わず顏を見合わせる。
「えっと………よろしく?」
「あ、嗚呼………」
これが夢だと願いたい。
「あのー?聞こえてますか?初めまして、僕イナセっていいます」
「え?僕?あなた女の子じゃないの?」
「男だよ!!色々あってこんな姿だけど男だから!」
こんなに可愛らしい少女が男?
でも嘘をついているようには見えない。
とりあえずこの少年?の言葉を信じて見ることにした。
「私はアリスっていいます。山兎種なので変わった耳ですがよろしくお願いします」
「山兎種っていうんだ。あ、僕は半霊種っていう種類だからご飯はいらないよ」
「え?剣聖って確か人間だったはずですが?」
「え?そうなの!?…………ええと、秘密です」
肝心な部分を誤魔化された気がする。
「ーーあと」
なんだ?こいつ自分の事を男とかいってるし、私の肉体を弄ぼうとしているのか!?
「か、覚悟はできてますから!好きなだけ私の体をーー」
「もっと気安く話しかけてくれていいですよ。年上の人に敬語で話されると違和感があって」
「あ、」
今、アリスはこれからの人生の中で一番恥ずかしい勘違いをした。
「わ、分かったわ」
「あ、そんな感じが自然でいいと思います」
何処と無くぎこちないやりとりだが、この時アリスは胸が熱くなっていくのを感じた。