7、全貌と本性
俺は大勢の気配を感じて目を覚ました。
周りに人はいなかったが、遠くに足音が聞こえる。
俺は身体を起こし、魔法の練習代わりを兼ねて魔素を意識し、ドアノブを右回りに回しドアが開くように力を加える。
あれだけ高く見えた壁がこんなに易々と……
俺は少し感動を覚えながら廊下に出る。
廊下は、床のデザインが木目のはっきりしたもの。壁は茶色く少し塗りムラのようなものがあり、モダンな印象を与える。ここを見る度に高級感を感じるほどに細部に味が出ている。
そんな廊下を進み、みんなで食事するリビングへと向かう。
ここは床は木板、天井は板材を幾つか貼り付けたようなデザイン。壁は白い壁紙が貼られている。はめ殺しの窓が3つ付いていて、ここから裏庭が見える。
裏庭は異常に広く、正しく豪邸の見栄えである。
しかし、ここには誰もいない。裏庭にもだ。
すると残りは書斎かエルクの部屋、アンドレアの部屋、トイレ、キッチン、客間、物置、玄関か……
あれ?この家むちゃくちゃ広くね?
ちなみに「絶対に立ち行っちゃいけない」部屋がある。おれは言いつけを守る人間だからな。この部屋数多さだが、見当はついている。
一番可能性があるのは玄関だ。なんたってさっきから足音がしない。
さっきまで足音がしてて、更に今音が止んでるということは玄関で止まっているか3人集まって話し合ってるかだ。
つまりリビングにいなかったという事は玄関の可能性が高いという事だ。
え?今考えただろだって?気にするな。
というわけで廊下をダッシュで玄関へ向かう。
さて、どんな事が起こってるのかな?
面倒な事になった。
きっかけは昨晩の裏庭で起こった火災および爆発。
わしが趣味の世界に入り込んでいる時にそれは起こったらしいのだが、全く気づかなかった。
まぁ防音機能がついているから仕方ないといえばそこまでなのだが。
問題はそこから。
中級でも魔力を込めないと完成しない『青い焔』だったらしいのだ。しかも、その後にその頭上で大爆発が起きた後に大量の水が降るという上位の『震涙』であろう呪文が構築され、その『青い焔』を鎮火したというのだ。
はっきりいって雨などでは『青い焔』の前では水蒸気になって終わりだ。
わしはもう一つ別の呪文、『呼吸困難』を構築していたと考察している。最近の研究で、『呼吸困難』は鎮火作用があるという事が証明されている。
さて、面倒な事になった理由。それは「犯人探し」だ。
わしの首を狙う輩など数えるのもためらうほどいるが、それにしては今回の攻撃は謎である。
『青い焔』を構築できる時点で攻撃を開始してもなんらおかしくない。しかし『震涙』『呼吸困難』を使いわざわざ鎮火するわけが分からない。
まぁわしがわからない事が国の部隊の人間如きに分かるわけなく、今わしの家に部隊長が訪ねてきたわけだ。
ここではっきりと知らないと宣言するのは簡単だが、ここで一つの問題が発生する。
これは魔術王が助けを出した可能性だ。確かに王宮魔術師ならば『震涙』を構築できる。『呼吸困難』は初級であるからして余裕であろう。
魔術王には頭脳を買われている。ここで検討もつかないと言ってしまうと愛想を尽かされる可能性だってある。
だからわしは、
「うちの拾い子が行った事だ。」
全てを押しつけた。