6、3本の矢
目を覚ますと、ふかふかの布団だ。
もやがかかったように頭が動かない。てか身体も動かない。もう一眠りしよう、、、
「あっ、やっと繋がりましたね。」
ふとそんな声が聞こえた。いや、聞こえたというか分かった。頭に響くような感じだ。
「いやー、さっきまで繋げようと思ってたのに繋がらなくて……」
周りを見る。「白」に包まれた空間に、燕尾服を着た男が目に入った。
「なっ……」
「やぁ、覚えててくれてるかな?忘れてたら泣くけどね。」
そういってクククと笑う。
頭が回らないが、それでも、どうしても聞きたいことがあった。
「な、何故、俺を殺したんだ……」
「私、夢として貴方に毎回会いたいのですが、力及ばずいつもは届かないんですよね。」
やれやれと肩をすくめる。
「で、せっかく繋がったから、良い話、普通の話、悪い話の三つを用意しようと思って、用意してきたんです。どれから聞きますか?」
「なんでっ!俺を殺したんだ!
しかも、よくわからないところに飛ばしやがって!」
「別に恨み言を聞きたいわけじゃないんですけれど……
まぁ良いでしょう。教えてあげます。貴方はあの後死ぬんです。」
「……は?」
「あの後、貴方は心ここに在らずといった様子で家へと向かいます。するとですね、家にもいるんですよ。」
「……」
「快楽殺人犯が。」
「……嘘だ……」
「まぁ嘘と思って頂いて良いですよ。そして落ち込んでるついでに悪い話から行きますね。」
わざとらしく咳払いする。
「コホン、貴方……今はユスティンでしたっけ?
ユスティン、貴方は国や組織から狙われます。それも強引な手段で、です」
「……ああ、そうかい。」
「反応薄いですね〜、次!普通の話です。
魔術を使ったあの辺り、雑草が魔力を吸い、魔物化します。放っておくとあのお兄さんが勝手に殺しますが、その時死体を処分してしまいます。
実はあの雑草、魔力を吸ったことで質の良い薬草となっています。これを手に入れればちょっとは楽になるかもですね。」
「……」
「……私は独り言を話しているのでしょうか。
まぁ良いや、ラスト〜いい話〜。
王宮魔術師の話、反故になります。
理由は簡単、強すぎるからですね。
質問はありますか?」
「……俺の夢に出てきた理由は?」
「恐らく魔素を溜め込む器官の魔素がすっからかんになったから、抵抗がなくなったとかだと思います。」
「……夢が覚めるようにするには?」
「私の力が持つまでです。最高で15分くらいまでなら行けます。」
「……最後だ。何故俺に関わる?」
「私の仕事だからです。」
「そうかい。もう終わってくれ。」
「……むちゃくちゃ冷たいですね。泣きそうです。
まぁ、死なない程度に頑張ってください。では。」
そうすると「白」にヒビが入る。ヒビは大きくなり、「白」が割れる。そして俺は目を覚ました。
「あいつには……関わりたくない……」
震える。あいつは未来を見通す力まであるというのか。
俺が生きているうちにあいつを超えなきゃならない。
急がなきゃ、急がなきゃ、死ぬ。飼い殺しだ。
俺は目をこすりながら布団からでようとした。
しかし、それは叶わなかった。何故なら、
「ユスティン!起きたか!」
とお兄さん(名前はエルク)に言われたから。
それともう一つ、手足に力が入らなかった。
そりゃもう、産まれたての小鹿より筋力ないと思う。
「お前さんよく生きてたな。普通あんだけの火災だったら骨すら残らんよ。王宮魔術師レベルの人が速攻で鎮火してくれたおかげで、燃えたのは裏庭の雑草の上の方だけだがな」
正直、どうだっていい。
あの燕尾服は多分あの100倍はやってくる。それも完全にコントロールした状態でだ。
だが、心配してくれているのにそれもダメだろう。
「心配してくれてありがとうございます」
「おいおい、全然ありがとうって顔してないぜ?」
あぁ、やばい。無表情になってたっぽい。
「あの爆発を間近でみたので、怖かったんですよ」
「へぇー、お前自身が起こしたのにか?」
「なっ、なんでそれを?」
「あ、本当にそうなんだ。カマかけただけなんだけど、、、」
くそっ!ハメられた。エルクは見た目によらず知性派っぽいな。
「まぁあのジジ……エリアスが認めてるからそれくらいしても同然かなと。
それよりも……
ユスティン、君はどうやってこの部屋から出たんだ?」
「本棚からジャンプして」
「はぁ?3歳の届く距離じゃねぇけど、まぁ信じてやるよ」
「ありがとうございます」
「だからありがとうっぽい顔しろっての」
どうやら照れてるっぽい。可愛い側面もあるとは、エルク侮れぬ……
そんなくだらない事を考えながら、ベッドの上でゆったりと過ごす。
燕尾服とあった焦燥感は、もう残ってはいなかった。