4、主人公、ようやく方向性を決める
「あ、言い忘れていたが」
「なんでしょうか」
「お主の体術スキルもなかなかすごいぞ。その歳で14歳ほどの筋力を持っている。仕事できるレベルだな」
「なにを仰ってるんでしょうか?僕は14歳ですよ?」
あっ、口が滑った。ここの人間にとって俺くらいの見た目のやつはまだ子供なんだろう。失敗したな、、、
「はっはっはっ!面白い冗談だなユスティンよ。お主は座席に座るのも一苦労なほど小さいじゃないか!」
むっ、癪に触る言い方だな。まるでチビって言われてるみたいだ。
「皆さんが大きすぎるんです!」
「人間としては標準だ。あそこに鏡があるから自分の姿でも確認して感傷に浸るがいい!はっはっはっ!」
くそこの老いぼれが、、、
俺は鏡の方向を見て、固まった。
、、、そこには3歳くらいの俺の知っている姿とは違う男の子を。自分の姿をみて、固まった俺を映し出していた。
もういい。俺は驚かない。それよりギルドで活動する力の獲得方法の方が大事だ。
自らの個の力はとても弱々しい。剣技や体術では足元にも及ばないだろう。
だが、魔力を使った魔法なら小さくても大きくても変わらないんじゃないか?という淡い期待と共に自分にそれだけの素質があるかどうか不安になり、怖くなった。
「ユスティン、お前はギルドで活動する上でどう強くなりたい?」
悩む必要なんてない。
「俺は魔法使いになりたいです」
「覚悟は?」
「勿論」
俺は償うために帰る。帰るために強くならなければならない。彼女に赦してもらう、、、いや、謝れるだけの人間になるために努力をしなくちゃいけない。
「ふふふ、はっはっはっ!良い目をしている。早速特訓だ!帰るぞ!ユスティン!」
「えっ、、、登録は、、、」
「ははははは!」
そんなわけで、俺はギルドに来た意味を理解しかねているなか家へと強制連行されるのだった。
帰った俺はベッドの横に大量の本を置かれた。これは読めということなのだろう。
手書きで温かみがあるものから、聖書のような重量感のあるものもある。
魔法使いになりたいといったものの、今は当然できるわけがない。知識を蓄えなければ、理解しなければいけないらしい。
悪いな。俺は不運だけが取り柄じゃない。
俺は理数系の象徴みたいなものなんだぞ?家には物理学の本が溢れかえっていたし、全国模試も「理科だけなら」一位を不動のものにしていた。はっきりいって物理学だけなら東大生とタメ張れる自信がある。
俺は魔素について書いてある本を読んでいた。魔素は無色透明で、その辺を漂ってるらしい。空気に含まれるって事だな。
そういえば俺はなぜ本を読めているんだ?月光がネックレスをわざとらしく照らし、1人で納得していた。「このネックレス万能すぎだろ。」
そう呟き、本に集中する。
俺は夜が深くなるまで、紙のめくれる音を響かせ続けた。