10、厨二病だった俺が生き抜くため 2
注意‼︎
この回は非常にグロテスクな表現が用いられています。耐性がない方は『決して』閲覧しないでください。
まずはこの牛もどきを運ぶ方法だが、これが思いつかない。
とりあえずこの場で少し頂き、それで後は切り分け持って帰る事にしよう。
ちなみに魔法は出来るだけ使わない方針でいく。前ぶっ倒れた時、いわゆる魔力枯渇が原因だと思われるからだ。敵に会う時か、どうしようもない時のみ使う。
今回はさっきぶつけて粉砕された過熱水蒸気製造機の破片があるから有効活用させていただく。
周りに誰もいないと信じ、玉鋼製の破片で牛もどきの腹に切り目を入れていった。
肉を裂く嫌な感覚の後、そこから血が噴き出す。気持ち悪いが我慢できぬものではない。
気持ち悪い感触に耐え、腹を切り終わったら木に括り付て血抜きをしたいと思う。木のツタが近くにあったのでそれを使う。
あまりに重い。てか持ち上がるわけがない。しかし、これをしなければ生臭くて食えたものではなくなるらしい。ならばどうしてもしなければならないだろう。
こればかりは致し方ないと自分に言い聞かせ、腹の反対側に回り、腹の切り目に指を突っ込む。
グチョ、という生理的嫌悪感を覚える音と血の生温い感触。更には肉がまとわりつく感覚に堪らず死体から離れ吐いた。
だがこれをやらなければ死ぬ。仮に別の獲物が見つかっても同じ事が出来ないということなのだから。
もう一度試す。今回はさっきの感触、感覚に耐えることが出来た。いや、感覚が麻痺したと表現しよう。
突っ込んだ指に慣性を発生させる。そして血液を強制的に排出しようとして、全身に血を浴びた。
全身に血を浴びた理由は、血流とは反対に血液を流してしまったがために血管が破裂し、水圧により皮膚が破れたせいである。が今はそれどころではない。
血がまとわりつく。僅かに残る温もりと鼻につく鉄の匂い。重力に従い下へと滴る血が舐めまわしているようで気色が悪い。
「ひっ……」
止めてしまいたい。逃げてしまいたい。死んでしまいたい……考えるのをやめてしまいたい。
そんな時に頭にもやがかかるような感覚を覚えたが、そんな事を言ってられる場合ではない。今はこの瞬間を生き抜かねばならないのだ。
頭に水をかぶり、また作業を進める。
まずは今食える分。足を一本切り落とし、それから皮を剥ぐ。皮を剥ぐのは力が入り、全く上手くいかない。30分ほどかけて出来たのは上側三分の一ほどだけだった。
ただこれだけあれば三日は持つだろう。
皮の剥いだ部分を焼き、かぶりつく。筋繊維が硬くて全然噛めなかったが、一つ言えることがある。
脂はギトギトしていて、味覚は動物園を思い出させる臭いしか伝えない。もうはっきりいってその辺に生えている草の方が100倍は旨いと思わせる味だった。
食わねば死ぬ。その思いで筋繊維を噛みちぎり、死ぬほど不味い肉を食べる。その三分の一を食べ終わった頃に、死体の腹が少し動いた。
不思議に思い死体を見る。ベチャ、という音と共に見えたのは、“形成されて間もない頭部”だった。
俺の自我はこの瞬間に吹き飛んだ。