#5【生活1st】
初日。
さっそくやることがなくなった。テレビはない。本もない。
寝よう。
そう思った瞬間、
「239番! 昼飯だ」
もう昼飯の時間だ。
というより、ここでは番号で呼ばれるみたいだ。
不快に感じるどころか、こっちの方が、気が楽だ。
名前なんて所詮飾り。
出てきた昼飯は、鉄板焼きのハンバーグ、グリーンピース、フライドポテト、白いご飯、水。
鉄板からジュージュー音を立てている。
実に豪華でおいしそうな食事だ。
まるでご褒美みたいだ。
人間を殺すとこんなにおいしいご飯がくれるのか……。
そんな錯覚を感じてしまう。
1時間かけて食べ終わると、
「239番! 食べ終わったか!? 」
とここの管理・監視を行う警備員とかいう人間が現れた。
「はい」
と答えると、食器を片づけられた。そのあと本をくれた。
「しばらくそれでも読んでいろ」
渡された本は、高校生が使っている国語の教科書だった。
すぐ飽きるだろうと思っていたら、
“檸檬”だとか“羅生門”などと難しいのが載っている教科書なのでなぜか飽きることなく読んで夕食までの時間を過ごした。
そして夕食の時間。
「239番! 夕食だ!」
再び番号で呼ばれた。やっぱりこっちが落ち着く。
出てきた夕食は、
ステーキ、野菜サラダ、白いご飯、杏仁豆腐、水。
なにか企みでもあるのでは? と思うくらい
今回も実においしい。
それで明日の朝、食パンと牛乳だけだったらどうしてやろうか?
食べ終わったころに、食事を持ってきてくれた人間が来た。
「239番! 食べ終わったか?」
「はい」と答えると、また本をくれた。
理科の教科書だった。生物……、化学……、食物連鎖……、CO2……
裁判長とかいう人間の話なみに難しく、つまらなかった。
1時間もしないうちに飽きて、壁に投げつけた。
あぁ……、って言いながら寝込んだ。
なんかおもしろいことないかな~。
そんなこと考えているうちに寝てしまった……。