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#20【薬と夢】
電話を受けて数分後、葛飾と滝川が手術室に現れた。
被害にあった人間たちは、怪我をして動けずにいた。
こりゃ、ひどい。そう思っている滝川をよそに、
やっぱりな、と葛飾は思っていた。
239番……、いや拓哉は、突然狂ったように暴れだすことが多い。
今回も意識が回復したら起きてしまうのではないかと思ったら、
本当になってしまった。
だから、強力鎮静剤と称して“ある薬”を、この部屋にいる人たちに1錠ずつ渡した。
その薬の名前は、“強力退化促進剤”という。
つまり、飲んだ人間は、一瞬で5歳児まで、身長・体重・頭脳などが急激に退化する薬なのだ。
本当はこんなことしたくはなかった。
臓器を取って世界で困っている人たちに提供したかった。
それが私の夢だったのに……。
溜息しかでなかった。
滝川は
「葛飾くん、……どうします? この子」
と訊いてきた。
この子……、拓哉はもう5歳児になっていた。
効き目が意外と早い。
あとは他の人と同じように成長していくのを見守るため、どこかの保育園に預けよう。




