#17【真実】
葛飾は239番が気を失ったことを確認していると、
「どうだね? 葛飾くん。彼は静かになりましたかね?」
出てきたのは滝川徳夫。
先ほど239番の頭を固い物で殴った人物。
この施設で1番偉い人間。
「彼はいまだにここを刑務所だと思っているのですかね?」
「さぁあ、どうでしょう? ……まぁ、彼に、この施設の真の目的が、ばれたところでなんにも問題ないのでね」
葛飾は鼻で笑った。
そう、ここは刑務所ではない。
ここは、国立死刑判決者臓器提供支援施設。
そもそも、この施設が誕生したきっかけは、
現在この国は、臓器移植を待つ患者であふれている。
科学では解明できない病原菌ウイルスが、この国を支配していた。
このウイルスは、人間の臓器機能を停止に追い込むほど危険なウイルスであり、
治療法は無い。
そのため一刻も早く移植しなければならない状態にあり、このままでは人口が減り、国として成り立たなくなってしまう。
しかも、それを加速させるかのように
現在、他の人間を殺し、死刑判決を受ける人間が多くなってきている。
ふざけている。
死刑判決を受け、亡くなった人間の臓器がもったいないと考え始めた政府は、
“死刑判決を受けた者は、臓器を国に提供しなければならない”
という命令を下した。
資金関係は、国や政府が全額負担してくれているため、239番のように豪華な食事が提供できる仕組みとなっている。
場所は、受刑者や国民には知らせていない。
遊び半分で来られるのを防ぐためであるとしている。
「ところで……、」
滝川が葛飾に、訊いてきた。
「239番……いや、あなたの息子である葛飾拓哉くんは、これから手術ですか?」
「はい……そうです」
239番は……、葛飾啓斗の息子である。
世間でいうならば、血がつながっている親子と言える。
しかし妻は、3年前に強盗殺人の被害に遭い殺された。
犯人は……、あいつしかいなかった。
それから数日後、拓哉は突然家出をした。
理由は不明。
捜索願を出そうとしたが、妻が殺されてから関係は北極とほぼ同じくらい冷え切っている。
時は流れて、このあいだ久々に会えたと思ったら、
殺人鬼という肩書をもって裁判所に現れた。
もう……、息子とは思いたくなかった。
だから、赤の他人として今まで接してきた。
近い将来……いや、もう会えない。
会う気は、まったく無いが。




