第1章<平凡>
初登校です。
コイツナニ言ってるの?みたいな描写があるかもしれませんが。
甘く見てやってください。
でわ。
目の前に一人の少女が見える。
少女の周りには目を伏せてしまうほどの白い光が漂っている。
よく見えない。
少女は私に何かを伝えようとしている。
「は・・・に・・て・・・」
光と共に周囲には波打つような雑音が響いていた。
声が聞こえない。
そんな中で一際大きく鳴り響く音が聞こえた。
鈴のような、鐘のような音だ。
あまりの音の大きさに耳を塞ぐかのように手を顏の近くに持っていった。
何かに触れたようだった。
「はっ・・・」
夢か・・・。
眩い光の中手に握り締めた物を頭上に持ってきた。
そこにはデジタルの文字で
「9:28」の文字。
俺は何かを失ったような、絶望に似た感情を抱いた。
遅刻寸前である。
「あなた、遅かったわね」
「あぁ・・・。飯は食ってく。先着替えてくるわ・・・」
俺は寝ぼけたような薄れた声で妻へそう告げた。
「夏海は?」
俺はトーストを片手にスーツを着ながらそう言った。
「学校よ。もうすぐ10時。あなた今日は休み明けの出勤でしょ。これから1週間頑張ってね」
その言葉に少し泣きそうになった俺は堪えた。
「じゃ、行ってくる。今週は水曜に休みがあるだけだ。寂しい思いをさせて悪いな。」
「いいわよ。あなたが健康なら。」
「行ってらっしゃい」
ドアを閉めカギをかけ、俺は遅刻しまいと急ぎ足で駅へ向かった。
俺は軍人だ。
日本国防軍海軍所属、水無月級駆逐艦の艦長で士官学校の実技教師でもある。
1週間に一度だけ休みの日があってそれ以外は常に宿舎暮らしである。
宿所内では電話のみ許されている。
宿舎へ着くと荷物を預け俺は士官学校棟へ向かった。