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ACT2 赤黒き光

 いつも歩く道がいつもと同じ様に感じるかといえば、そんなわけは無い。

 そりゃ同じ道だから、景色自体は変化が無い限りは不思議と感じない。けど、その日その日によって感じる事や思う事は違う。だから、同じ様な景色を見ていても、同じ風に感じるなんて事はありえない。

 今日だってそうだ。現に俺は、考え事をして歩いているからだ。

 何を考えているかというと、セリアと俺の事だ。

 セリアは、女性ながらも俺より強い。それが俺にとっての悩みの種だったのだ。 ―男が女に勝つのは当然だ。 と言う言葉を真に受けてるわけじゃないが、俺はやはり彼女を守ってやりたい。自惚れてるわけじゃないが、カサントの剣術大会でベスト5に入るくらいの実力なのに、勝てないと言うのは些か納得がいかない。

 戦闘力そのものが、まるでデュオン族じゃないかのように思えるくらいだ。

 5000年前の「断罪戦争」の折に、ほぼ絶滅してしまったといわれるフロレット族。学生時代に教科書で見たくらいだけど、彼らのような強さを発揮するときがある。

 とはいえ、彼女はバルムンク族の父とデュオン族の母が居るのだ。そんなのはあくまで俺の仮想でしかないわけだ。


 5分くらい歩き、俺はセリアといつも待ち合わせてる山道付近の公園にたどりついた。 セリアの方が家から近いので、すでにブランコに腰をかけていた。

 「あ、リアン。」

 こちらに気づいた彼女は、ブランコから腰をあげ、こちらへ走ってきた。

 「待ったか?」

 「ううん。全然だよ。」

 首を横に振り、猫の様に上目遣いで俺を見るセリア。 ―む…可愛い。

 「今日は町の方まで出ようか?」

 「そうね。適当にお散歩でもしましょ」

 そういうと、彼女は俺の手を引き俺の前を歩き出した。

 「お、おい!こういうのは、男の俺がリードするもんだろ!」

 「なにそれー、男女差別ー?」

 ぶーっと、わざとふてくされた様な表情を作り言った。 

 「いや、まぁ、そういうことじゃないけどさ。」

 と、俺が言うと、にっこり笑って

 「じゃ、行きましょ♪」

 ―ま、たまにはこんなのも良いか。


 街へ続く道は、今居る山道付近の公園から、歩いて10分くらいの場所にある。俺たちが出た学校や、良く行く店があるのだ。

 カサント北部の地域には、大学や研究院があるが、俺はそういったところに進学しなかった。

 なぜかというと、俺には、アルヴィン王国直属の騎士になるという夢があるのだ。いくら平和になったとはいえ、まだ紛争や内戦がある地域はある。苦しんでいる人たちを、少しでも助けてあげたいし、世界を平和にしなければいけない。だから、俺は騎士になりたいのだ。それに、最近はレギオンも増えているから、人々に大きな被害が出る前に倒さなければいけない。

 そういった夢があるから、俺は進学しなかった。だが、アルヴィンに行くには相当のお金が必要だし、それを両親に打ち明けるきっかけがない。自分でお金を作って、いつか家を出ようと考えているから、俺はアルバイトに勤しんでいるのだ。

 セリアにもこの事を伝えたら、なんと彼女は

 <私も、リアンの傍でお手伝いしたいし、ヒーラーとしての心得はあるから、衛生兵にでもなりたいって考えてたの>

 と言った。

 「…アン」

 彼女は、俺が何を考えてるか分かっていたようなのだ。つくづく凄いと思う。だが、俺も、もっと男として「凄い」と思われるくらい、成長しなければいけないと思うのだ。

 「…アンってば…」

 そう。世界中の困っている人をたすけてあげるのもそうだけど、セリアを守りたいのだ。

 「リアンってば!!」

 「え!?な、なに!?」

 彼女の声にびっくりして俺は、我に帰った。

 「もう!何度も呼んでるのにー!」

 不満そうな顔をして見上げるセリア。

 「いや、悪い悪い。ちょっと考え事しててな。」

 俺は情けなさそうに笑って見せた。

 「そう?でも、ぼーっとして歩いてると危ないわ…きゃっ!」

 ―ドスン! いい音と共に、石に躓いたセリア。

 「おい、大丈夫か?人に言う前に自分の心配した方がよさそうだな。」

 俺が笑ってそういうと、「もーっ!」とふくれっ面を見せた。

 「ほら、立てよ。」

 「ふーんだ。自分で立てますよーだ。」

 なおも膨れたように言うセリア ―やれやれ、仕方が無い。

 「ほらよっと!」

 「きゃぁ!」

 言う事を聞かないセリアを、お姫様抱っこした。顔を紅く染めたセリアが、「もう…」っと照れながら言った。

 「起こして差し上げましたよ、お姫様。」

 「…いやー。照れるー!」

 街にもうすぐ着く辺りの所であった。人目もつかなかったので、俺はセリアの顔をじっと見つめた。彼女も何かを察したのか、ゆっくりと瞳を閉じた。

 俺が口付けをしようとしたその時だった。


 ―ドゴゴゴゴ!!

 

 大きな地鳴りのような音を立て、地が大きく揺れた。

 「な、なんだ!?」

 「地震!?」

 俺は、すぐさまセリアを抱き下ろした。

 街が割と近いせいか、ザワザワした声も聞こえる。

 「山の方から……あれは!?」

 俺はカサント山の方を見た時に、見てしまったのだ。赤黒い光を放っているものを。

 「ど、どうしたの?」

 セリアが慌てたように俺に聞いて来た。

 「昼間、セリアと分かれた後に、カサント山から不気味な光をみたんだ。それが、また光っているんだ。」

 揺れが収まった。 

 「カサント山の…あれ?」

 セリアが赤黒く光る物体を指差して言った。

 「あぁ、そうだ。あそこに何かがありそうな気がしてしょうがねぇ。」

 カサント山は死火山だ。それなのに、何故、カサント山の方からあんなに大きな地震が発生したのか。それもあの赤い光に何か秘密が隠されているのかもしれない。そう思った俺はカサント山の方を睨み、言い放った。

 「もしかしたら、何か分かるかも知れないわ。」

 セリアがそういうと同時に、俺の携帯の音が鳴った。 母さんからだ。

 「もしもし。」

 <リアン、今の地震大丈夫!?それにセリアちゃんも。>

 慌てた様な声で話す母さん。

 「あぁ。俺もセリアも無事だよ。それより、母さん。俺達、今日、遅くなるかもしれないからよろしく」

 焦っていたせいもあるのか、矢継ぎ早に言ってしまった。当然、母さんは困っている。

 <えぇ、それは良いけど…>

 「じゃ、セリアん家にもよろしく!」

 有無を言わさないくらいの勢いで言い、電話を切った。

 「よし、行こう!」

 「う、うん!」

 俺が駆け出すと、セリアも走り始めた。


 この時、俺は、何か嫌な予感がしていたのだ。だけど、走ってしまっていたのだ。

 これから起こる事も知らず、ただ闇雲に。

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