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フレンドシップ

 里美は入浴後、ビタビタに濡れた髪のまま勇太から受信したメールをポチポチと消去していた。

 元彼の受信メールを片端から消去するという行為自体、女々しさに拍車をかけている様でイヤだったが、およそ三ヶ月間も携帯内にメールが残ったままという事実そのものが、いつまでも里美に執着を捨てさせないでいた。


 「ハァ?卒業するから別れるぅ?なにそれ。国語は成績良かった方だったけど、そんな日本語の意味習ってないし。ワケわかんない。」


 「里美も広い大海に船出して世界の大きさを知るべきって事だよ。」

 

 「勇太、アタマに虫でも涌いた?冗談に逃げないでよ。説明してよ。説明されても理解する気なんか無いけどさ…」


 「ごめん…他に好きな人が出来たとかじゃないんだ…。ただこう…辛かったと言うか…。俺の器では里美は荷が重過ぎたと言うか…うまくいえな…へぶっ!」


 里美はムカつきを抑えられず、勇太の鼻っ柱に頭突きをかました。

 

 「そんな漫画でも言わない様なクソ台詞求めてんじゃねーっつの!私を思いやるなら卒業しても付き合い続けやがれ!このダメ男!うわぁぁぁぁぁ」


 チェリーブロッサムレインの中学卒業式、里美は学び舎の別れとは全く関係の無い悲しみに包まれ、他の卒業生とは違う内容で大粒の涙を流していた。


 勇太は優しい男だった。その優しい男という生物は、愛とは違った疲労感情の方が膨れ上がってしまう。中坊の恋愛なんて押し付けあってパンクするというマッチメークが定石となっているので、勇太の選択は実に若さの定義に沿った正しいものだった。

 里美と交際中、大海に船出しなければと感じていたのは誰でもない勇太本人であった。

 里美の傍若無人なアンチコントロールっぷりでは、マッチのドライビングテクニックでもアイウォンチューベイビー♪ライドン♪ってな具合には中々いかなかったであろう。

 

 「わかってる。わかってるよ。勇太はピエロ。里美はライオン。いったいそれって誰の為だったんだよ。」


 そんな事を不毛に考えながら、里美は勇太のメールを全て消し終えた。

 

 …と同時にメール着信音。

 

 アニーだ。

 

 添付されてきた写メを解凍すると、岡本信人の写真が画面上を埋めた。メッセは無い。

 今日のピン子ネタに被せてきたのであろう。どシュールなアニーのメールに、里美は思わず含み笑いしてしまった。

 いつもだったらスルーするのだが、里美はあえて返信した。


 「冗談に逃げるのもいいね」


 返信されてきたアニーにしてみれば岡本信人以上のシュールなメールであるが、里美は大真面目だった。


 里美は、大海に船出する準備の為、生乾きの髪をドライヤーで整え始めた。

 



 

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