僕の誓い
僕は生まれたのが小さな島。
その島自体が村だった。
父は鍛冶屋で母が小さな畑をお世話していた。
僕以外に父の仕事を手伝う兄、年頃の姉の3人兄姉弟。
父は寡黙で職人気質。母は優しく、兄は大人しく、姉はとても奇麗で陽気だ。
僕たちの村の人口は100人もいない。
陸地から少し離れているのもあり、僕たち自身が自ら他者と関わりを持たなかった。
周りの海が穏やかで夏は暑過ぎず、冬は寒過ぎずだった。
農産物、海産物などで食卓がいつも華やかだった。
僕は今でも母の手料理が懐かしく・・・時折無性に食べたくなる。
父の弟子が姉をめとりたいと言い出して、村全体がお祝いムードになった。
兄は姉に抜かれて少し落ち込んだが、村長の娘といい雰囲気だ。
僕はこの平和な生活が好きだった。
幼馴染のサナが僕と島の一番高い山を登りたいといい、僕たちはある日を朝早くでかけた。
サナがとてもやんちゃだが、目がくりくりしていて、僕は大好きだった。
身長が僕のほうが高いし、子供にして、力がある。
父や大人たちに比べれば大したことないけど。
僕たちは一生懸命小さな山を登った。
まだお昼前だったので山頂で休憩をとった。
「ね・・・レイキ、舟が見えるよ。」
サナが僕に声をかけて、島の入り江に侵入してくる小さな船を指さした。
「ヘイタさんの舟だろうな・・・」
僕は関心なく答えた。
ヘイタさん時折島を訪れる陸地の商人だ。
僕たちと公正な取引をして、陸地の情報が教えてくれる。
僕たちと違うのに、普通に接してくる。
村長、父や村の大人たちが彼と話すのは好きだ。
「違うよ・・・ヘイタさんがこの前来たばかり。」
「何か面白いものでも入ったのだろう。」
「そうかもね・・・見に行く?」
「いいよ・・・行こう!!」
僕はサナの手を握り、山を下り始めた。
途中でサナがその辺の実を食べたため、お腹を壊したので下山は思った以上に時間がかかった。
「ごめんね・・・」
「いいよ・・・仕方ない・・・でもサナのお母さんに怒られるのは嫌だよ。」
僕たちは山を下りて、村へと向かった。
途中で煙の臭いと悲鳴が聞こえてきた。
「サナ!!ちょっと待って!!」
僕は幼馴染を止めた。
「嫌だ・・・母ちゃん!!父ちゃん!!」
サナは僕の制止を振り切って、火が上がっている村へ入った。
僕はサナをほっとけないので急いで村に入った。
僕は恐ろしいものを見た。
僕の平和な日常の終わりを告げる光景を見た。
若い男とその仲間が村人を殺しまわっていた。
村長や他の大人たちが無残にも切り捨てられていた。
男は鋭い日本刀で僕の父の首をはねた。
父の前に母が殺されていた。
男の仲間の一人、獣の装いをした男が姉を犯し、喉を切った。
兄は父同様、首を落とされて、村長の娘の遺体のとなりにあった。
「母ちゃん!!!父ちゃん!!・・・」
サナが泣きながら叫んでいた。
男の仲間の一人、別の獣の装いをした恐ろしい男が無残にもサナの胸を刺した。
サナの目から生命の光が消えた。
「貴様らあああ!!!!」
僕は叫んだ。
後ろから3人目の獣の装いをした男が僕の背中を切り、僕は倒れた。
「どうすんの?とどめを刺すほうがこのガキのためだぜ・・・頭。」
「煽ってやるよ・・・苦しみながら死んでいくようにな・・・ははは」
4人が笑い出した。
それから若い男が僕のところに来て、僕の前にしゃがみ込んで、あごを掴んで、僕の顔をあげた。
「絶望しながら死ね・・・ガキ・・・」
また男とその仲間の笑い声が聞こえた・・そして僕は意識を失った。
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目覚めた時、商人のヘイタさんが僕の隣で泣いていた。
「目が覚めないと思った・・・」
僕は彼を見た。
「村は・・・」
ヘイタさんの頭を横振った後、顔が悲しみで崩れた。
僕は分かっていた。
「こんなひどいことは誰の仕業?!」
ヘイタさんが泣きながら聞いてきた。
僕は意識を失う寸前に襲ってきた4人組の頭の名前を聞いた。
「桃太郎・・・」
そして僕は気づいた。
額にあった僕の角が切り落とされていたことを。
回復するまで数か月かかったと思う。
角を落とされた僕はヘイタさんのような人たちの外見と同じになった。
ヘイタさん、公平で平等な商人が僕を養子にした。
そのときまでは僕が知らなかった。
ヘイタさんには名字があったこと。
山田平太は養父となり、僕は山田玲喜(霊鬼)となった。
そして僕は生きている限り必ず完遂しなければならない誓いを立てた。
桃太郎という残忍な野盗、そしてその仲間を必ず狩る!!
試験的な短編。
あの物語を別の視点で書いてみただけ。
元々は好きじゃない物語なので・・・
ご意見をお聞かせいただけたら幸いです。
よろしくお願い申し上げます。