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リューストとシャーロットの出会いと過去。そして本心。

(………)


シャーロットと出会ったのは5歳の頃だった。

俺はシャーロットのお父様とお母様に使えていた執事とメイドのもとに生まれた。

シャーロットとは生まれた頃から一緒にいる。

昔のシャーロットは心優しくて、彼女こそ聖女らしかった。俺の両親が病で亡くなったときもずっとそばにいてくれた。


そんなシャーロットが変わってしまったのは15歳の頃だった。というよりも、変わってしまったのは間違いなく両親とリーシェのせいだろう。


旦那様も奥様もリーシェが生まれてからはシャーロットのことを見ることはなくなっていた。シャーロットがどれだけ勉強が出来てテストの点が良くても褒めることはせず、満点でなければ意味がないと言っていた。それに比べ、リーシェは点数が悪くても何も言われず、よく頑張ってるから大丈夫と言われるだけだった。


礼儀作法が完璧なシャーロットに比べ、全くと言っていいほど出来ないリーシェ。

だけど、いつも大切にされるのはリーシェだった。

シャーロットがどんなに頑張っても認められることはなかった…


ある時、シャーロットに相談されたことがあった。


「ねえ、リュースト…私はいつかお父様とお母様に認めてもらえるかしら…どれだけ頑張ればいいの…」


泣きながらそう話し出したシャーロットを見るのが苦しかった…何も出来ない、無力な自分に腹が立った。

そんな俺はこう言うことしか出来なかった。


「シャーロットはよく頑張ってるよ…いつか認めてもらえるはずだ。」


そう言うとシャーロットは微笑み頑張ると言った。

どんなに辛くても苦しくても、シャーロットの笑顔は眩しかった…


──そんなシャーロットは俺の初恋でもあり、今でも…


今でも彼女を思っていても叶わない恋だと分かってる。シャーロットは伯爵家の長女で俺は使用人の家系に生まれた凡人だ。


シャーロットのお父様にも言われた。


「お前は、ただの使用人なんだ。気安く喋るな。お前が態度を改めないのなら、シャーロットとは二度と会わせないからな。」


「…かしこまりました…」


俺はそう言われた日から使用人として関わろうとした。そしてだんだんシャーロットが変わっていくのを目の当たりにしていた。リーシェが聖女だと分かった瞬間、旦那様も奥様も今まで以上にリーシェを溺愛するようになり、シャーロットに対して


「お前は悪女だ。聖女であるリーシェを引き立たせる悪女だ。」


「リーシェさえいればそれでいいわ。悪女のシャーロットなんていらないもの。せいぜい苦しむといいわ。」


それをきっかけにシャーロットは自分の心を閉ざし、自由が無くなっていった。自由があるとするならトランペットを演奏しているときだけ。でも、両親たちからは毎日同じことを言われたり、外を歩けば、平民たちからも悪女だとコソコソ話されたり、指を差されたり。シャーロットは我慢の限界だったのだろう。本当に悪女になったのだ。まるで、あなたたちの望む通り私は悪女になったわと言わんばかりに自分から人を遠ざけ、嫌われるような行動をしていた。まあ、シャーロットが悪女になったと言っても、それはこの屋敷の中だけ。外では一度も悪女のように振る舞ったことはない。


それでも、俺には分かってた。

本心で悪女になってるんじゃないと。

シャーロットのことは俺が一番分かってる。

だからこそ分かるんだ。


シャーロットは自分を偽り、自分を守るためにこうしてるんだって。


旦那様も奥様もシャーロットから使用人たちを外したが、俺はそれを拒否した。残してほしいと。

そしてもう一人、俺と同じように言って残ったのがソフィアだ。


ソフィアはあんな感じだが、シャーロットに対する忠誠心のようなものがある。シャーロットが変わり始めた頃にやってきたにも関わらず、シャーロットのそばにいることを選んだ。


そこからはずっと俺とソフィアの二人でシャーロットの使用人をしている。


リーシェがよくからかいに来たり、見下しにくるがシャーロットがそれに屈することはない。


リーシェがたまに俺のとこに来て腕を組んできて言ってくる。


「リュースト、あんなお姉様じゃなくて、私の執事になりません?私といればお父様に認められ、もしかすると、聖女の私と結婚出来るかもしれませんよ!その方がご両親も天国で喜ぶはずだわ!」


ふざけるな。俺がリーシェ様につくとでも?

あなたの本性を知っているのにつくわけないだろ。

ただ、こんなことを言えば俺の首は飛んで、もう二度とシャーロットに会うことも話すことも出来なくなってしまう。だからここは丁寧に…


「お気持ちは嬉しいのですが、私はシャーロット様の使用人ですので、申し訳ございません。」


すると、リーシェ様は素直にこう言って帰っていく。


「そう…残念だわ…気が変わったらいつでも、私のところへ来てね!」


これが何回もあった。

正直、すごく面倒だ…

だけど、機嫌を取らないと色々と大変だろう。

それに、シャーロットの苦しみに比べたら機嫌を取るなんて大した事ない。


──シャーロットのためなら、いつだって自分を盾にする…


だけど、最近のシャーロットは昔のシャーロットみたいなんだ。笑うことが増えて、俺たちを頼ってくれる。シャーロットは乗り越えてきてるんだ…何がきっかけなのかは分からない。俺たちに謝ってきたけど、正直、俺もソフィアもなんとも思ってなかった。だって、あんな風に扱われていたのだから。俺もソフィアも自分たちがシャーロットの立場なら同じようになってただろうって言ってたから。正直、この屋敷で働いてる人は昔からいる人と新しくきた人がいるけど、みんな旦那様たちのシャーロットへと扱いを見た人は俺たちと同じ思いをしてるらしい。


それと最近思うんだ。主人と執事。分かってるのに、昔のように二人で笑い合って、もし、許されるなら俺がシャーロットを幸せにしてあげたいと…


無理だと分かっているのに、願ってしまうんだ…



入浴後、リーシェに関する調査をしてまとめているときにシャーロットがやってきた。そして、シャーロットに昔のように沢山笑い合って気軽に話したいと言われた。


内心すごく嬉しかった。こんなにも願っていた事の一つなんだから。だけど、もし旦那様にバレれば終わりだ…二度と会えないなんて俺には出来ない。だから俺は、昔のようには出来ないと言った。


だけど、シャーロットは折れることはなかった。

どこか寂しそうな目をしていたが、はっきりと言われた。


そんなこと関係ない… あなたを使用人とは思ってない。俺は友人であり、大切な幼馴染だと…


嬉しかった…ずっとシャーロットの中で俺は大切な人間だったんだと。


俺たちは二人の時だけだと約束した。

シャーロットに隠れてリーシェの調査をしてたことはバレてしまったけど、そんなことよりもシャーロットと笑い合っているのがこんなにも幸せなんだと改めて気づいたんだ。


その後、部屋に帰ると言ったシャーロットの手首を思わず掴んで言いそうになった。


「……(シャーロット、好きだ…)」


だけど、言ってはダメだ。こんなこと言えば困らせてしまうだけなのは分かってる。だから何も言えず、ただおやすみと伝え扉を閉めた。


手に残るシャーロットの細く白い手首の感覚。

ベッドの上で握ったその手を胸に置き、あることを心の中で言って眠りについた。


(シャーロット、ずっと君だけを愛してる…)

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