気づきたくなかった
この部屋を抜け出すことは無理だね…
そう思いながら楽器を眺める。
すると、扉が開き入ってきたのはリーシェだった。
「お姉様、そこに入った気分はどう?」
嫌味に聞こえる言い方。
「別に?良い気分でもないけど、悪くもないわ。」
「へえ〜。ねえ、お姉様。お父様が私をクリス様に紹介してくれるらしいの!もしかしたら結婚するかも!!そうすればお姉様は惨めね〜!ふふっ!」
「で?それがどうしたの?それを言うためにここに来たの?」
「あら?嫉妬してるの?可哀想なお姉様!あははっ!!ついでだし、私がもしクリス様と結婚したらリューストさんを私の執事にするわ!あのソフィアってメイドはいらないからお姉様にあげる!可哀想なお姉様には十分でしょ?」
「あなた、今ソフィアを侮辱したの…?だとしたらただじゃおかないわよ…それにリューストは私の執事だから。」
少し怯えていたリーシェだったけど、ここぞとばかりに強気で、
「今のお姉様には何も出来ないでしょ?ふふっ!悪女で嫌われ者のお姉様に味方なんて一人もいないのよ!ほんと、身の程知らずのお姉様。あははははっ!!!」
そう言うと私を蹴って部屋を出ていき、扉に鍵をかけていった。
親が親なら子も子ね。
いや、私もその娘だからそうなのかもね…
自然と流れる涙。
悔しい…悔しい…どうしてこんな風に扱われないといけないの…私は、どうして悪女なの…
ゲーム内にはなかった物語が始まってる今、シャーロットのこれからを決めるのは私自身にかかってる。だけど、どうすればいいのかも分からない。ただ、分かるのはゲーム内のシャーロットもこんなに苦しい思いをしてたんだということだけ…
早く抜け出したい…
(クリス様……)
って。私なんでクリス様のこと考えてるの…
私にとってクリス様はシャーロットの運命を変えるために必要な攻略対象のキャラにすぎないのに…
どうして…どうして、こんなにも考えてしまうの…?
正直、さっきリーシェがお父様がクリス様に紹介してやるって言ってくれたと聞かされたときは心底嫌だった。これは、シャーロットの運命がバッドエンドに向かうからっていうよりも、私が…私自身の心が嫌だった。
気づきたくない。気づきたくなかった。
ずっと、分かっていたけど。
だって、いつかこの世界じゃなく元いた世界に戻る可能性もあるのに…もしそうなれば、苦しくて辛くなるのは自分自身なのに…それなのに…
「クリス様が好きなの…」
一人で呟けば消えていってしまうこの声。
周りを見れば、アーサーのお母様とその伯父様の骨だけ。私もこうなるかも知れない。でも、そういうわけにはいかない。こんな所で死ぬなんて。お父様たちの罪をしっかり暴いて償わせる。そして、ここにいるアーサーのお母様と伯父様をちゃんと供養をする。安心してお空へ行けるように…
ソフィアとリューストにも会いたい…
二人は大丈夫かしら…
◇
「ソフィア、朝だぞ。」
「ん……」
あんまり深くは眠れなかったみたいだな…
俺とソフィアはそれぞれ馬車を借りた。
「ソフィア。そっちは頼んだぞ。」
「分かってます。リューストさんも。」
「ああ。昼ごろアーシェント家名前に来てくれ。そこで落ち合おう。」
「分かりました。」
俺たちは後で落ち合うことを約束してそれぞれの場所へ向かった。
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