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最悪な夜

屋敷へ帰ると待っていたのはお父様とお母様。そしてリーシェだった。私が帰ってくると私を睨みつけ近づいてからお父様たち。すると突然、


──パチンッ


(!?今…叩かれた…?)


頬に感じる突然の痛み。

原因はお父様からの平手打ちだった。

突然のことで何が何だかわからない私。

自分の頬に手を触れればまだ痛みを感じる。

ソフィアとリューストが私を庇うように前に出てくると、お父様は、


「何だ。お前ら。クビにされたいのか?お前らなんて必要ないんだからな。」


こんなにも私に尽くしてくれて、助けてくれたこの二人をクビにするなんて私が許さない…


「二人とも下がって。」


「でも!」


「いいから下がって!」


「「……っ!!」」


二人は不満そうだったけど、私が言ったことだから素直に後ろへ下がった。


(大丈夫…何をされても二人を恨むことなんて絶対にないから…)


心の中でそう思いながらお父様と向き合った。


「シャーロット。その二人を守ったな。分かった。クビにはしない。」


私は安心した。するとお父様は私に聞いてきた。


「今日はどこに居た?」


鋭く怒ったような目で私を見るお父様。


「セリフィアガーデンに居ました。」


「誰と?」


「ソフィアとリューストです。」


クリス様が居たことは言わなかった。

言えば面倒なことになる。そんな気がしたから。

だけど、そう言った私にお母様と一緒にお父様の少し後ろで見ていたリーシェが言い出した。


「嘘ですわ!お父様!私、見たんですもの!今日、クリス第一王子殿下とお姉様が仲睦まじく話しているところを!」


!?


見てた…?私とクリス様が話してるところを…

リーシェがそう言った途端、お父様はまた、


──パチンッ


さっきとは反対の頬に平手打ちをしてきた。


「嘘をついたな。お前のような出来損ないの悪女がクリス第一王子殿下と話すなんて身の程を知れ!!」


──パチンッ


また叩かれる頬。

ソフィアとリューストが私の方に来ようとしていたけど、私が来てはダメと言うと二人はその場で止まった。


そこから何度目だろう。

ずっと平手打ちをされる。

最後の一発は力強い平手打ちだった。

平手打ちの勢いに負けた私は床に倒れ込んだ。

顔を上げれば私を見下ろし渡っているお父様たち。

ソフィアとリューストが私の方へ向かってこようとすると今度はお父様が、


「お前ら、近づいたらこいつのようにしてやる。そして二度とこいつに会えないようにしてやるがそれでもいいんだな!!」


脅すように言うお父様。だから私は二人を見て大丈夫だからという目線を送り、来ないでという意味を込めて首を横に振った。


そんなお父様は私の髪を掴んで無理矢理立たせてくる。そして楽器を背負ったままの私を髪を掴み、引っ張りながらどこかへ連れていく。ソフィアとリューストが着いてこようとしていたけど、お父様が来るなら私を殺すと言って二人を動けなくさせた。


髪を引っ張って進むところはあの隠し扉のある部屋。

隠し扉を開け、私を階段から突き落とす。


「イタッ!!」


痛いと叫ぶとお父様は


「いい気味だ。」


そう言って笑っていた。

お父様はゆっくり階段を降りてきてまた私の髪を掴んで無理矢理立たせた。足を痛めたのか、立つのがすごく痛い。それに、楽器は大丈夫なのかが気になる。いくらケースに入れてても衝撃によれば凹んだり、音も出にくくなる。…ほんと、最悪…


お父様は人骨のあるこの目の前の部屋の扉を開け、私を突き飛ばし、扉を閉めた。そして、外から聞こえた鍵を閉める音。どうしてこんな目に…あそこで正直に話してればよかったのか。そう考えるけど、どちらにせよ同じ結果だったと思う。最悪だなぁ…


それにしても、楽器は大丈夫なのかしら…

部屋の明かりをつけ、楽器が無事かを確認する。


「良かった…凹んでない…」


奇跡的に凹みがなかった。

一度吹いてみても音は変わらずお昼に練習したときと同じ音だったから安心した。


でも、どうしよう…

明日、セリーヌ王妃様への演奏が…

この部屋にいたら明日行けない…

そんな…どうしたらいいの……



────────────────────


「おい、ソフィア、リュースト。お前ら、クビにされたくなければ今見たこと誰にも言うなよ。それと、お前らは当分来なくていい。分かったな。」


ふざけるな…シャーロットをあんな風にして…


「旦那様。シャーロット様のお食事などを運ぶのは我々の仕事です。」


俺がそう言うと、旦那様は、


「他の使用人がやる。シャーロットがいないんだ。お前らは必要ない。分かったならさっさと荷物をまとめて屋敷を出ろ。」


悔しかった。何も出来ない自分が。

シャーロットを守れなかった…

弱い自分に腹が立つ…

隣を見れば、ソフィアも唇を噛んで悔しそうな顔をしてる。俺はソフィアの肩をそっと叩いて荷物をまとめようと言った。


荷物をまとめ、俺とソフィアは屋敷を出た。

屋敷を出ればソフィアが泣いていた。


「リューストさん、シャーロット様が…私たちどうすれば…」


「ソフィア…大丈夫だ。シャーロットなら…」


「でも…」


「とにかく、明日のことだ。セリーヌ王妃様に演奏が出来なくなったことを伝えないと。それにシャーロットも助けないと。」


「でも、どう言うんですか…?私たち、言ってしまっらクビになるんですよ…?シャーロット様にも会えなくなってしまうじゃないですか…」


「分かってるよ…」


それは俺が一番よく分かってる。

でも、シャーロットを助ける方が先だ。


「ソフィア。あの方たちの力を借りよう。」


「あの方たち?」


「耳を貸せ。」


「はい…」


ソフィアに耳打ちをした。

それを聞いたソフィアは、分かりましたと言って自分が伝えてくるから俺にはクリス第一王子のところへ行って出来なくなったことと原因をちゃんと話してほしいと言ってきた。


「もちろん。ソフィアも頼むぞ。」


「はい!ところで、今日はどうします…?」


そうだなぁ…早朝に向かうとしても少し時間がある。


「街で宿を借りよう。」


そう言って街に出た。

そして、俺たちは宿を借りて、早朝に馬車を借りて、それぞれの目的地へ向かうことにした。

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