練習開始!!②
見られていることも知らず、私は練習を再開した。
クリス様の前で演奏なら分かるけど、まさか練習をすることになるなんて…緊張する…頑張らないと…
曲の練習の前に、一度、音程と基礎練をやっておく。
時間が経っている分やっておかないと後々後悔するからね…
それが終われば曲練に入る。
次の曲は、P.ヒンデミット作曲 【ソナタ】より第一、二楽章。
こっちのソナタは最初から高い音で始まる。
比較的曲中に高音が多く出てくることもあってアタックミスが一音でもあればそこで台無しになる。
さっきと同じように楽譜を見てリズムを理解する。
リズムの理解が出来たら一度楽譜通り吹いてみる。
「♩♩〜♫〜♬♬♩〜♫♩〜」
所々に出てくる16分音符。その音程も気になるところだけど、高音のアタックミスが多すぎる…それに、クリス様がいることに意識しすぎてる…このままじゃダメ…しっかりしないと。
まずは音符を分解して全部4分音符にする。
そして、音程を合わせる。
「♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜」
音程…音程…
「♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜」
高音の音程が酷すぎる…それに高音だから力が入りすぎてる。もっと力を抜いて…
「♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜」
まだまだ…
「♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜」
全然ダメ…
「♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜」
アタックミスが多い…
「♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜」
音が汚い…破裂音みたい…
「♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜」
そうそう…良くなってる…
「♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜」
ラストの音程…
「♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜」
これで音程は大丈夫。音色も大丈夫そうだけど、楽譜通りに吹けばそう簡単にはいかないんだよね…頑張るしかない。一度テンポを落として、
「♩♩〜♫〜♬♬♩〜♫♩〜」
いくらテンポを落としてても楽譜通りに吹けばアタックミスが際立つ。私の実力がない証拠…もっともっとやらないと…
必死になって一音一音の高音を当てる練習をした。
時間はかかってるけど、これでいい。
まだ帰るまでには余裕のある時間。大丈夫。
落ち着いてやれば出来るから。
もう一度、楽譜通りにやってみる。
しっかり高音の練習をしたからかミスが無くなった。
これで大丈夫。そして、元のテンポに戻しても何の問題もなく出来た。ほんと、練習あるのみね…
最後の曲は、ロパルツ作曲【アンダンテとアレグロ】。
この曲は緩やかな曲だけど、途中から本当に高音が多い。でも、それより大変なのが途中から大変になるほどタンギングが上手く出来なければ曲が台無しになってしまう3連符がある。これも必死に練習しないと…
まずはリズムの理解から。それが終われば一度本番と同じテンポで楽譜通りに。
「♩〜♫ ♩〜♬♬〜♩♩〜」
やっぱり、音程とタンギングが問題…
高音のアタックミスはさっきのソナタのおかげでマシ。
分かればすぐに音符を分解して4分音符にして練習。
「♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜」
高音の音程が不安定。
「♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜」
音がきつい。
「♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜」
もっと伸びのある音で。
「♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜」
音程が合わない…
「♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜」
あ…少しずつ合ってきた…
「♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜」
もう少し。あと音色に気を遣って…
「♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜」
音程は大丈夫そう。あとは音色…
「♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜」
…今の音、すごくいい!!最後にもう一回…
「♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜♩〜」
…最高…完璧…
満足の音が出せた。
次はテンポを落として楽譜通りに吹いてみる。
「♩〜♫ ♩〜♬♬〜♩♩〜」
音程と高音は完璧だけど、やっぱり、3連符が鬼門…
ひたすら3連符を練習する。
テンポを落としてるときから練習しておかないと、元のテンポに戻しても出来ないからね…テンポが遅いからといって手を抜いたりせず、確実に出来るまでやる。
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やっと出来た…
どれくらい時間がだっただろう…
もう夕日が落ちてきている。
3連符が出来た次はもう一度、テンポを落としたまま楽譜通りに演奏する。
「♩〜♫ ♩〜♬♬〜♩♩〜」
大丈夫そう…疲れてきたけどこれで最後。最後は元のテンポに戻して楽譜通りに。
「♩〜♫ ♩〜♬♬〜♩♩〜」
何音かミスした…
焦っちゃダメ…落ち着いて…
もう一回。
「♩〜♫ ♩〜♬♬〜♩♩〜」
よし…完璧…
「終わった……」
そう独り言を言って振り返ると私の方をいつも通り見つめるソフィアとリュースト。でもいつもと違うのはその場にクリス様がいること。練習が終わればクリス様がこちらにやって来て、
「シャーロット。お疲れ様…こんなに練習したんだから明日は大丈夫そうだな。」
そう言ってまた微笑むクリス様。
(その表情…本当にダメなの…)
何度この表情に胸が高鳴ればいいのか…
そろそろ心臓が止まりそう。
「明日、楽しみにしていてください。」
「ああ。」
私は楽器を片付け、クリス様を見送った。
クリス様はまた明日と言っていたので私もそれに返すように返事をした。
私たちも馬車に乗って、楽しく話しながら屋敷へ帰った。




