二人の関係と隠し事
部屋に入りるとリューストは椅子を用意してくれ、私はそこに腰掛け話を始めた。
「リュースト、どうしてそんなに堅苦しいの?私たちは幼馴染なのよ。気を使う必要なんて一つもないのに…」
するとリューストはこう言った。
「シャーロット様、昔なら何も考えずに行動や言動もしていたでしょう。ですが今は違います。私はあなたの使用人です。昔のようには出来ません…」
「私にはそんなこと関係ないわ…それに、私はあなたを使用人とは思ってないわ。あなたは私の友人であり、大切な幼馴染なの。」
「シャーロット……分かったよ…ただし、二人の時だけだからな。」
そう言われてすごく嬉しかった。
私がこの話をした理由は、どこか彼が遠くにいる気がしたから。ゲームをプレイしている時も思っていた。
幼馴染なのに全くと言っていいほど絡む気配がないシャーロットとリュースト。ゲーム内の結末でもシャーロットが殺害されるとき、その近くにリューストはいなかった。それがずっと引っかかっていた。リューストは剣術を昔から習っているキャラクターだからこそ、彼はシャーロットのそばにいないといけない。もし彼がそばにいたら運命は変わっていたはず。
こんなにも近くにいるのに、どこか遠いところにいる感じ。だからちゃんと話して昔のように気軽に話せる幼馴染の関係に戻れるように… 今ここでまた一つ運命が変えられた気がする。
──でも、私が話したかった本題はこれだけじゃない。
「リュースト、もう一つ聞きたいことがあるの。」
「何?」
「何か分かったことはある?どうせ、夕食の時間までに少しでも調べたんでしょ?夕食後も調べてたんじゃない?」
「…どうして?」
「だっていつも夕食の時、私よりも先に食卓へ向かうあなたが今日は珍しく私の扉の前で待機していたから変だと思っていたの。でも確信したのはこの部屋に来てからよ。」
「…?」
「だって細かく何かが書かれたメモが机の上に散らばってるんだもの。綺麗に片付いているこの部屋にメモが散らばってるなんて変よ。だから何かを調べていたんだろうって確信したの。調べていたのはリーシェのこと?」
「……シャーロットに隠し事は出来ないな。」
「当たり前でしょ!私はあなたの幼馴染なんだから…あなたのことなら大体分かるわよ…」
──そういうと少しリューストの頬が赤くなったように見えた。
「リーシェのことを調べていたんだ。実は、シャーロットが見る少し前にリーシェが公爵家の方々を誘惑し貢がせていることを知っていたんだ。だからずっと少しずつだけど調べていたんだ。」
「そうなのね…リュースト何か分かったことはある?」
「分かったことは、リーシェが誘惑するのは自分に声をかけてきた公爵だけ。それもこの家よりと同じぐらい、あるいは上の財力を持った人間だけをターゲットにしてるみたいだ。今分かっているのはそれだけ。」
──それ以上はまだ掴めていないって事ね…
「リュースト、その公爵家全員の名前は分かる?」
「全員は分からないけど、分かってる人はいるよ。」
「ちなみにそれは誰?」
「ナルティース家長男、アルフレッド様だ。」
「ナルティース家!?」
ナルティース家と言えば、今日の夕食の時にお父様がリーシェに持ってきた縁談の公爵家…
「もしかして、今日の夕食の頃、お父様が持ってきた縁談の相手はアルフレッド様だったの?」
「そこまでは分からないが、可能性は高いだろうね。」
なるほど。アルフレッド様は言わずと知れた女好き。一度惚れたら執着し、飽きれば捨てるそんな方だ。ただ、ナルティース家は公爵家の中でも権力がある家の一つ。だから、
「リーシェにとってナルティース家は使えると思ったのね。ただ、計算外だったみたいね。まさか縁談話になるなんて。」
「ああ、そうだろうな。もっと調べないと分からないから調べておくよ。」
「ありがとう。この話はソフィアにも共有しておきましょう。」
「分かった。」
何か起きる前にきっちり調べないと…
「私は部屋に戻るわね。おやすみなさい。」
部屋を出ようとするとリューストに手首を掴まれた。
「…!!どうしたの…?」
「…いや…なんでもない…おやすみ、シャーロット。」
「…?おやすみ…」
自分の部屋に戻り、さっきまで掴まれていた手首を握る。まだ残るリューストの温もり。
(何か言いたそうだったけど、どうしたんだろう…)
深く考えるのはやめよう…
──私は早く運命を変えるためにクリス第一王子殿下に会わないとね…
そう考えているといつのまにか眠りについていた。