地獄の夕食会
ソフィアとリューストが部屋を出たあと、私は楽器を磨いていた。
「このトランペット随分古いタイプね…」
別世界にいた頃に使っていたトランペットとは違う古いタイプのトランペット。元々私がいた世界だとこのトランペットには出会えなかっただろうし、こうやって触れて、演奏することもなかったと思う。そう思うとこれは貴重な経験だ。
手入れも終わったところにソフィアが部屋にやってきた。
「シャーロット様!夕食のお時間です!」
「分かったわ。行きましょう。」
ソフィアと扉の前で待機していたリュースト、三人で食卓へ向かった。
するとそこには先程、顔を赤らめ荒ぶり、しまいには人を価値のあるかないかで判断するリーシェが先にいた。
「お姉様、遅かったですね。普通は私よりも先に来るべきですわ。だって、私は聖女だもの。」
「聖女なら聖女らしい発言をしないとダメよ?」
また顔を赤らめ何か言いたそうにこちらを睨みつける。だけど、丁度そこにお父様とお母様がやってきた。
それにしても、リーシェは自分が聖女に選ばれたことを知ってから今まで以上に自由になってる気がする。
──いつか暴走しなければいいけど…
私がそんな事を考えているとき、突然、お父様が口を開いた。
「リーシェ、お前に縁談が来ているぞ!ナルティース家からだ!ナルティース家は公爵家の中でも三番目に影響力も金も持っている家だ。リーシェ、受けてみてはどうだ?」
「お父様、縁談のお話はありがたいのですが、私にはまだ早いと思いますわ。それに……」
「どうしたんだ、リーシェ?」
「それに……お姉様より先に私が結婚してしまったらお姉様が恥をかいてしまうわ!!そんなのダメよ…私の大好きなお姉様を傷つけたくないわ…」
「そうかそうか…リーシェは本当にいい子だな…それに比べて、シャーロットはなんだ。愛嬌もない、可愛くもない、なんの魅力も感じない。そんなんだから縁談の話が来ないんだ!お前はリーシェを見習え!」
「シャーロット、あなたには早くこの家を出て行ってもらいたいわ。あなたはこの家には不要なのよ。リーシェがいればこの家は安泰なの。わかるわよね?早く消えなさい。」
「お母様酷いわ…もう少しシャーロットお姉様にも優しくしてあげて?可哀想だよ…」
「リーシェ、本当に優しいわね…聖女に選ばれたのは必然のことだったのね。シャーロット、あなたにはこの美しい心が足りないわ。リーシェの全てを見習いなさい。」
お父様もお母様もリーシェの本当の姿を知らないからこんなことが言える。リーシェの本当の姿を知ったらどうなるのかしら……楽しみね。
腹は立つけどここは冷静に。
「ええ、見習わなければなりませんね。その性格。ご馳走様でした。部屋に戻ります。」
ソフィア、リューストと一緒に部屋へ戻った。
相変わらずソフィアは感情を爆発させていたが、二人ももう疲れているだろうと思い部屋で休んでと言った。
入浴後私はリューストの部屋へ向かった。
どうしても話したいことがあったから。
扉をノックすると出てきたのはこちらも入浴後であろうリューストが出てきた。
「シャーロット様、何か御用ですか?」
「…リュースト、話があるの。」
「分かりました、入ってください。」
そう言われ私はリューストの部屋に足を踏み入れた。