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プロローグ

「……君の名前は…?君のことが知りたい…」


(……氷の王子……悪役令嬢のシャーロットはこの王子に殺されるんだよね…)


なら、彼に殺されないためにこの運命を変えないと……!







私の名前はシャーロット。

シュタルツィア王国にある公爵家の一族でトルデイン家の長女だ。

青に輝く宝石のような目に金色に艶めく長い髪、そんな私は今日で18歳を迎えた。


だけど、私の誕生日など祝ってくれるような人はいない。いるとするならばそれは、


「シャーロット様、18歳のお誕生日おめでとうございます!」


「ありがとう、ソフィア。」


この人はソフィア。ソフィアは私のメイドであまり歳は変わらないが、年上のわりに少し子供っぽく常に明るいメイド。


「シャーロット様、おめでとうございます。」


「ありがとう、リュースト。」


この人はリュースト。リューストは私の執事で私とは同い年の幼馴染。口数が少なく、無表情だけど、顔がいいこともあり、メイドたちだけでなく、他の家の令嬢たちやうちの妹から好意を持たれている。


私を祝ってくれるのはこの二人しかいない。

私の側近はこの二人だけ。私のような悪役令嬢に使用人は二人もいれば十分だ。幼馴染のリューストを私の使用人にしただけでも感謝しろ。そうお父様は言っていた。


お父様もお母様も私には無関心。私の二歳年下の妹であるリーシェしか見えていないのだ。おかげで、リーシェは両親が知らない間に好き勝手している。そんなことを考えていると、


「シャーロット様、本日のご予定はありませんが、どうされますか?」


リューストから今日はどうするのか聞かれた。

特に何も考えてなかった…何をしよう…本でも読もう…


「今日は読書の日にするわ。」


「かしこまりました。」


読書をすると言うと素早く本を持ってきたリュースト。ソフィアは紅茶を入れて何かあればお呼びくださいと言い二人は部屋を出た。


持ってきてくれた本を読もうと一冊の本に手を伸ばした瞬間、頭を鈍器で殴られたような重く鋭い頭痛がした。


「ゔっ…イタッ…な…にこれ…」


痛みに耐えていると目の前に見たことのない服を身にまとい、楽器を演奏する一人の少女が見えた。


「一体誰なの…ゔっ…また…」


また同じ痛みが襲ってきた。そして先程と同じように少女が見えた。さっき見た光景と同じく、楽器を演奏する少女。ただ今度はその後も見えた。演奏が止まり彼女な顔が見えた。


「……!?私にそっくりじゃない!?」


驚くのも仕方がない。私と瓜二つの少女が映像として見えたのだ。


なぜかモヤモヤする…

何かを忘れてる気が…


──思い出せ、私…


「…!!思い出した…」


やっと思い出した。私は別の世界で学生だったことを。そして、私はトランペットを吹いていたことを。


「じゃあ、ここは一体……」


他に思い出せること…


「ソフィア…リュースト………思い出した!!」


これは別世界で私がプレイしていた乙女ゲームの世界だ。確かそのゲームの名前は…


【定められた運命の秒針〜氷の王子と聖女】



───このゲームはよく覚えてる。氷の王子と呼ばれるクリスが一目惚れした聖女と結ばれるゲーム。その聖女はシャーロットの妹であるリーシェ。そして、それを邪魔するのがシャーロット。シャーロットはクリスに一目惚れしたが、そのクリスは聖女に夢中。それに腹が立ち聖女に嫌がらせをし、最終的には氷の王子ことクリスに殺されるそんなゲームだ。


ゲームをプレイしてる最中はヒロインである聖女よりも悪役令嬢のシャーロットに感情移入していた。

リーシェは自由に行動し、何でも許されていた。

そんな中、シャーロットは何一つとして自由はなく、ずっと自由もなく、挙げ句の果てにはシャーロットの好きになった人はリーシェを好きになっていた。


そんなの、感情移入しないわけがない。

感情移入しながら、どうか幸せなルートに行ってほしい。そう思って選択肢を変えても最終的な結果は同じ。どうやっても報われず、バッドエンドを必ず迎えるシャーロットに涙が止まらなかったことを覚えてる。


……ちょっと待てよ。え、私ってシャーロット様って呼ばれてたよね…?メイドにはソフィア、執事にはリュースト。


──ということは、まさか…


私が転生したのは悪役令嬢のシャーロット!?

ということは、どの選択肢を選んでも私は死ぬってこと…?


「そんなの絶対嫌!!!!」


扉が大きな音を立てて開き、ソフィアとリューストが慌てて部屋に入ってきた。


「シャーロット様!?一体、どうされたのですか!?」

「シャーロット様、少し落ち着いてください。」


頭が混乱しながらも受け入れるしかない現実。

夢だと思い頬をつねるとすごく痛い。

本当に現実なんだ…


現実を受け入れて冷静にならなくちゃ…


「二人とも驚かせてごめんなさい。もう大丈夫よ。」


そういうと二人は安心した表情で部屋を出ていった。


私が死なないようにするには運命を変えるしかない…

でも、どうすれば…


そこで、もう一つ大事なことを思い出した。

ゲーム内のシャーロットは生粋の音楽家でトランペットをよく演奏していた。


「これだ…!!」


私との共通点、トランペット。これを使えば何とか運命を変えられるかも。


音楽は人の心を動かす。もし、それがこの世界で出来るとするなら、運命も変えられるはず。

やるしかない。そして、バッドエンドを回避しなければ…


ただ、バッドエンドを回避するには、音楽だけではダメな気がする。


──他に何をすれば…


そうだ…氷の王子クリスと聖女のリーシェが出会う前に、私とクリスが先に出会えば変わり始めるんじゃ…


思いつくのはこれだけだった。

このゲームは最後までプレイ済みなこともあり、クリスが好きな場所、食べ物、大体のことは覚えている。

なら、実行に移さないと。


「ソフィア!リュースト!」


私が呼ぶと部屋にやってきた二人。


「トランペットを用意して!セリフィアガーデンに行きましょう!」


「セリフィアガーデン!いいですね!」


「どうして急に…それにトランペットを持って何をなさるんですか?」


「自然を感じながらのびのびと演奏してみたいの。」


「……お任せください。」


「ありがとう。」


私がありがとうというと二人は微笑み、ソフィアは言った。


「今日のシャーロット様は幸せそうですね!」


「ええ。すごく幸せよ。」


そう言うと二人は少し照れながら準備をすると言って各々の準備を始めた。



「準備ができました。参りましょう。」


下で待っている馬車に乗り、セリフィアガーデンへ向かった。だんだんと目的地に近づいてくると、綺麗な花が沢山咲いている。そんな景色を見ながら馬車の中ではしゃぐソフィア。


「シャーロット様!見てください!!綺麗なお花たちが沢山咲いてますよ!!」


「ソフィア、うるさいぞ。」


そう言って怒るリュースト。

そして怒られたことによって静かになってしまうソフィア。


「まあまあ、いいじゃない?なかなか来なかった場所なのだから、はしゃぐのも無理ないわ。ソフィア、これからは沢山ここに来ましょうね?」


そう言うとソフィアは涙を流した。


(やってしました…泣かせてしまった…何かいけないことでも言ったのかな…?どうしよう…)


心の中でそんなことを考え、慌てているとリューストから笑われた。


「ははは!シャーロット様、慌てすぎです。ソフィアが涙を流しているのはあなたのせいではありませんよ。」


リューストの言葉に反応したソフィアが私の手を握った。


「違うんです!シャーロット様にこれからは沢山ここに来ましょうねと言われたことがすごく嬉しくて……はっ、申し訳ありません…手を握ってしまって…」


「ソフィア…それにリュースト。ごめんなさい。私はあなたたちに酷くあたり、二人を大切に出来ていなかったわ…これからは、二人を大切にしたいの。この先、何があっても、一緒にいたい。これは私の本心よ。」


するとリューストが口を開いた。


「シャーロット様、私はこれから先もずっとあなたのそばにいます。どんなことがあってもあなただけのそばに…約束します。」


それに続くようにソフィアも言った。

「私も約束します!これから先もシャーロット様についていきます!!」


嬉しくて涙が溢れた。

二人は驚いていた。私が泣くとは想像もしていなかったのだろう。慌てる二人を私は抱きしめた。


「ありがとう…二人とも…私も約束するわ…あなたたちを幸せにすると…」


ソフィアとリュースト、この二人と心のから繋がらたような気がする。


セリフィアガーデンに到着し、早速楽器を用意し、音程チェック、基礎練をその場でした。


基礎が終わり、何か演奏しようと思い考えた。


楽譜を持ってきていない中、どうすれば…


(何か思い出せる曲……あれだ!)


「♩〜♫ ♩〜♬♬〜♩♩〜」


自然を感じながら演奏するのってこんなに気持ちいいことなの…?すごく幸せ…


「♬♩〜♩〜♬♩〜♫♩♩〜」


気持ちよく演奏を続けていると後ろから声をかけられた。


──振り返るとそこに立っていたのは、氷の王子クリス様だった。


思った通りだ…クリスはゲーム内で聖女にこの場所、セリフィアガーデンが好きだと伝えていた。

ここにはほぼ毎日来ていると言っていたクリス様。

予想していた通り、ここに来た。まだ、リーシェとは出会ってないだろうから第一関門は突破…かな?


頭の中で考えているとクリス王子から名前を聞かれた。


「俺はクリス・アーシェントだ……君の名前は…?君のことが知りたい…」


「初めまして、クリス第一王子殿下。トルデイン公爵家長女、シャーロットと申します。」


「…シャーロット…素敵な名前だ……それにしても綺麗な音だった……また聴かせてほしい…」


「…光栄なお言葉をありがとうございます。もちろん私なんかでよろしければいつでも演奏いたします。」


「……また…会おう…シャーロット…」


なぜか頬を赤くし、馬に乗り去っていくクリス第一王子殿下。ただそんなことよりも気になったことがあった。


(ゲーム中のクリスってあんな感じじゃなかったよね…聖女に最初にあった時、声をかけても名前を褒めたりせず、ましてや、また会おうなんて言ってなかったけど…)


もしかして、少しずつ運命が変わり始めてるの…?

すると突然力が抜け座り込んでしまった。

ソフィアとリューストが私を支えながら馬車に乗り、今日はお家へ帰ることにした。

新連載のこの作品を読んでいただき誠にありがとうございます!もしよろしければ、ブックマークや☆評価を頂けますと今後の作品づくりの励みになりますのでよろしくお願いします!!

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