第11話 シャルク村
メイが言うには姉とその友人が秘宝探しに出掛けてしまい、心配なのだそうだ。
シャルク村でも、領主様の御触が出ていたらしく、二人はお金目当てで旅に出ていってしまったと言っている。
「お姉ちゃんもマサムネお兄ちゃんも、旅をしたことないから……」
「そうか。心配だよね」
「うん」
道のど真ん中で話すわけにもいかず、私たちは小さな公園に来ていた。公園は初めて見るので、珍しかった。木にブランコが取り付けてあったり、ベンチと街灯のような時計が置いてあった。ベンチにはアキラとメイが座っている。
「アキラお兄ちゃんなら、助けてあげられるよね?」
メイはアキラの服の裾をギュッと握った。
アキラは答えに困っているようだった。
私はそれを見かねて、メイの真正面に座り込んで、メイの顔を見た。
メイはドキリとしたのか、少し跳ねてからアキラの影に隠れようとした。
「お姉ちゃんたちはいつ旅に出たの?」
「……今日のお昼」
「それなら!」
私は立ち上がって、皐月を見た。皐月はものすごく嫌そうな顔をしている。
今は夕方だ。陽もだいぶ傾いてきている。
「今から探しに行きましょう!」
「杏奈!?」
アキラは驚いたのか、目を見開いている。
「姉さん。もう陽も暮れるし、危ないんじゃ……」
「それはメイのお姉ちゃんたちもそうでしょ」
「野宿してるかもよ?」
「それなら、追いつくチャンスじゃない」
私は名案だと思った。秘宝を早く探しに行きたかったし、メイの姉も探しに行ける。一石二鳥だ。
「杏奈……」
アキラはこちらをじっと見つめていた。
何かを訴えているような気もしたが、無視した。
「杏奈ちゃん。いいの?」
メイはアキラを影から出て、私を不安そうに見つめた。
「大丈夫!」
私は両手を腰に当ててから、右手で握り拳を作って前へ出した。
「どこが大丈夫なんだよ」
皐月の呆れた声が聞こえたが、それも無視した。
私はアキラの手をとり、行こうと催促した。
アキラはゆっくりと立ち上がり、メイの方を見て、優しそうに笑った。
「探してくるね。メイちゃんはお家に帰ろうか。送って行くよ」
「……私は大丈夫。早くお姉ちゃんを探しに行ってきて」
メイとは公園で別れて、私たちは村の東側の入り口に立っていた。
「杏奈」
アキラに声をかけられて、振り向いた。
「何?」
「夜道は危険なんだ。それをわかってて、言ってる?」
「もちろん」
もちろんでは、なかった。どれだけ危険なことかは正確にはわかっていない。
「アキラ、無理だよ。姉さんは一度決めたら、引かないから」
「……わかった。杏奈は俺が守るからね。皐月は自分で身を守って」
「はいはい」
「アキラ。ありがとう」
シャルク村を出ていき、私たちは森の中を歩いていた。陽はすっかり落ちていたので、アキラが持っているランタンで辺りを照らしながら、歩く。なるべく、私たちの周りを照らすために、アキラが私たちの真ん中を歩いている。皐月が先頭だ。獣道のため、迷うことはなさそうだった。
「メイのお姉ちゃんって、どんな人か聞くのを忘れたわね」
「俺が知っているから、大丈夫だよ」
「どんな人なの?」
「メイの姉は、ショウっていって、メイと同じ色の髪と瞳で髪は二つくくり。目はメイよりツリ目だな。俺たちと同い年くらい」
メイの姉ということは、猫耳族よね。同い年の猫耳族とは会ったことがないから、内心ワクワクしていた。友だちになれるといいな。
「もう一人は、マサムネって名前で、茶髪に青い目のセンター分け前髪で、ショウの前だとデレデレになって面白いやつだよ」
「面白い人なのね……」
二人の特徴はわかった。
暗闇だから、わかりにくいだろうが、何とかなるだろう。
「ん!」
私は立ち止まり、耳をピンと立てた。
「どうかした?」
アキラと皐月も立ち止まった。
「足音というか、何かたくさんの生き物が動く音がする」
アキラはサッとサーチャーを出した。青く光っている。
「誰かがモンスターと戦っているかも」
「ショウたちじゃない?」
「そうとは限らないだろ」
私の言葉を皐月はすぐに否定した。
「サーチャーを見る限りだと、モンスターは三体いるな」
「三体なら、アキラは戦えそう?」
私と皐月はモンスターと戦った経験はない。アキラが戦えるなら、ショウたちが戦っているかどうか確認しに行きたかった。
「三体は無理だな」
「そりゃ、そうだろ」
皐月が同意する。
「そんな……」
「このままだと、ね」
アキラは私に向かってウインクをした。アキラはポーチの中を探り、一枚の羊皮紙を出した。
「紙?」
「これはスクロールと言って、魔法が込められている紙なんだよ」
アキラは丸まっていた羊皮紙を開いて、両手で持った。
「活力の源。天の力。……ピュイサンス・ヴィテス」
アキラがそれを唱えると、スクロールは金色に輝いた。その光はアキラの全身を包む。
「まぶしっ」
皐月は目を手で覆った。
少しすると、光はおさまり、アキラが立っているだけだった。スクロールは消えていた。
「魔法が込められているって、何の魔法なの?」
「身体能力強化だよ。杏奈と初めて出会った時も使っていたんだ」
なるほど? もしかして、私の脚力に着いて来れたのもそのおかげなのかしら。
「これなら、大丈夫だろう。行こうか」
次はアキラを先頭にして、私たちはモンスターのいる所まで行くことにした。




