第029話、エピローグ―山脈帝国エイシス編―
喧嘩はよくありませんわ、と。
今回の騒動で活躍した暗黒迷宮の領主、聖女コーデリア=コープ=シャンデラーが言ったからだろう。暗黒地帯に出現している魔猫聖堂には多くの組織の人間が集まっていた。
コボルト達がお客さんだ! お客さんだ! と足の肉球を覗かせるほどのスキップをしてみせる。
モフモフ達が飲み物や茶菓子を運ぶ聖堂の会議室にて――。
国と教会の新たな条約は結ばれた。
玉座に似た、少し高い空間。
山脈帝国エイシスの皇帝、賢王ダイクン=イーグレット=エイシス十三世が言う。
「先の内乱で発生していた教会からの裏工作。狂王となり果てた先代帝、エイシス十二世はたしかに唆されていたのやもしれぬ――しかし、皇帝として道を踏み外したのは心の弱さが起因したもの。そして、なによりも暴虐の限りを尽くしたのも己が欲望によるもの」
皇帝は美麗な鷹目で周囲を見渡し。
「更に付け足すならば教会の助けはこれからもエイシスには必要な力であろう。よって、過去の暗躍に余は目を瞑る。無論、それが正しいなどと言うつもりはないがな、教会の聖職者たちよ――そなたらの首は紙一重で繋がっていると理解せよ」
イケオジ聖職者たちは頷き、民のために尽くす宣誓で返していた。
魔導契約が発生している。
聖職者たちは処分されず、落ちた評判を取り戻すために壊れた街の再興や、スラム街の復興に神の力を使う事になる。
彼らが素直に皇帝に従う理由は様々だ。
元から罪を犯していなかった者。単純に心が清い者。長いものに巻かれる者。
乙女ゲーム世界の攻略対象たる皇帝の、抗えぬほどの美貌に魅了された者。巫女長の下で罪悪感を覚えながら暗躍していた者。
本当に、人によって事情は違うだろう。
だが最も大きい理由は――。
「まあ! これで皆さん、仲直りができたのですね!」
この絶世の美女でありながら最強聖女の乙女。
コーデリアが仲良くしましょうね?
と、にこにこほわほわ。無言の圧力よりも怖い、無自覚の圧力を笑みとして浮かべているからか。
純粋無垢で天然で、それでも力だけは間違いなく膨大。
そんな彼女を転生者扱いし、それなり以上の狼藉を働いたという負い目があるせいで、聖職者は逆らえない。
そんな事情など知らず、聖女が親切心で言う。
「それでは! さっそく皆様にも我が領土を知って貰おうと思いますの。陛下、もう構いませんか?」
「好きにせよ」
「それでは、暗黒迷宮ツアーを楽しんでいってください。あ、もちろんツアーガイドはつけますのでご安心を」
善意百パーセントの圧力である。
イケオジ聖職者達がお茶を噴き出し。
「この極悪迷宮のツアー……!?」
「極悪だなんて、ふふふふ――殿方はやはり冗談がとてもお好きなのですね」
無論、聖女のいつものアレである。
「分かっております、それが殿方の性分なのだと。そして遠慮なさることはないのです。やはりわたくしども暗黒迷宮の領民の多くは魔物の方、ご心配の声も上がっているでしょう。ですから! 安全だと知っていただくことで、他領の皆様に安心していただけると思うのです! 陛下、機会をお与えいただきありがとうございます」
頭を下げようとする聖女を手で制し、皇帝は鷹目を細め。
「よい、此度の件ではそなたに多大な迷惑をかけた。本当に……多くのな。故に、余は暗黒迷宮のイメージアップをしたいというそなたの提案を承諾した。褒美の一つであるな。そして教会勢力の聖職者達よ。これからは過去の遺恨を水に流し、互いに民のために協力するのだ――。これはそのための”褒美”、存分に楽しまれよ」
聖職者は頬をヒクつかせる。
ようするに、これは一種の罰なのだと悟ったのだ。
むろんコーデリア本人にはまったくその気はないが。
「――では、迷宮の中を案内させていただきますわね。ソドムさん、元気いっぱいなコボルトさん達だけでご案内できるか不安なので同行していただいても?」
軍服死霊ソドムが端整な空洞イケメン顔を、ギシリ。
『御意。ところデ、女王ヨ』
「あら、なんでしょうか?」
『人間とハ、どれくらいの耐久力があるのカ。吾輩にはわかりませヌ。はて、いったイ。どのルートを通るべきカ』
「耐久力……ですか?」
不穏な言葉に、聖職者達の背筋が震える。
皇帝はニヤニヤとしながら。
「暗黒迷宮ツアーがそなたらの罰だ、まあ何のお咎めもないというのも示しがつかんのでな」
告げたその後で、皇帝イーグレットは思わず本音を漏らしたことに気付くが、目の前の聖女は、じぃぃぃぃぃぃぃ。
美麗な主君を見上げ。
「もう! わたくしの領地は罰ではないと何度も申し上げていますのに!」
「ふははははは! すまぬすまぬ」
皇帝の笑い声と共に、聖職者たちがコボルトと軍服死霊に連行されていく。
彼らは死にはしないが、極悪迷宮を案内され肝を冷やす事だろう。
魔猫聖堂に残されたのは皇帝とそして護衛代わりのベアルファルス講師。
他は皇帝側近の武官たち。
精悍な熊男ベアルファルスが姿勢を整え、貴族学校の魔術講師としての顔で告げる。
「聖女コーデリア。貴女の献身、そして功績は著しく秀でている。本国、及び本校始まって以来の快挙であるとして、皇帝ダイクン=イーグレット=エイシス十三世ならびに学長より聖学術勲章を授与されるとのことだ。後日、正式な公報にて公に――」
「ベアルファルス様、もしかしてこういうお堅い言葉は苦手なのです?」
「得意に見えるのなら、お前の耳か頭がズレているのだろうな……というか、話の腰を折らないで頂きたい。聖女よ」
「あらわたくしったら、申し訳ありません。それよりも……」
猛々しい鷹の勲章を目にして、聖女はひとこと。
「勲章でございますか?」
「不服か?」
「死者は出ませんでしたが街の一角が崩壊してしまいましたわ。そして事の発端はわたくしにもございます、わたくしの常識を欠いた振る舞いのせいで転生者と間違えられ、異端審問が発生したのですから。そして巫女長様もおそらくは……わたくしのせいで、最後の扉を開いてしまったと思うのです。ですので、勲章を授与は少し、気が引けてしまいますわね」
軍人の声で、しかし少し崩した声音でベアルファルス講師は言う。
「仮に全てがそうであったとしても、これは本校に在籍する学生としての義務だ。拒否は認められん。騎士としての地位も発生するが、ま、お前さんの場合は既に領主だ。勲章授与を受け、これからは卿と呼ばれることもあるだろうが、基本的には形式上だけだろう」
聖女はやはり考え、勲章をじっと見て。
「この勲章はどうも猛々しくて、かわいいお花とかになりません?」
「おいおい、うちの彫金師たちが泣くからそう言わんでやってくれ。軍人志望の連中にとっては誉れある勲章なんだ。デザインの変更をしたらそいつらも泣く」
それに――と。
猛々しい鷹の勲章を聖女に手渡し、ベアルファルスは悪い大人の男の顔で近づき。
聖女の耳元で囁いた。
「こういう勲章ってのは分かりやすい特権だからな。うるせえ連中にもそれをみせるだけで黙らせる効果もある、持っておくとそれだけでなにかと便利だ。減るもんじゃねえんだ、ちゃんと受け取っとけ。嫌だっつったら、単位はやれなくなる」
「まあ、先生ったら」
「それとだ、これはこっちの素直になれねえ馬鹿皇帝からの詫びだとよ」
言って出されたのは――。
「金塊、でございますか?」
「こいつがおまえさんを利用して、この国の膿を全部掃除しようとしてたのはさすがにもう気づいているんだろ? ま、金塊ってのはロマンもなにもあったもんじゃねえが、金ってのは共通の価値がある素材。だいたいどこにいっても外貨の代わりにもなる、それこそ北の魔境でもな。もし将来的にこの地を出ることになったとしても、うちの貨幣じゃねえ財産を持っている方がなにかと使い勝手がいいんだよ」
金塊の価値と量はそれなり以上にある。
コーデリアが賢王に目線を移す。
「よろしいのですか?」
「余がそなたにしたことは、国にとっては益であったと確信しておるが――。そこには乙女であるそなたへの配慮はなく、そなたの安全を害していたのは事実。どう言い繕っても、危険に晒したという結果は変わりようもない、余の悪行……だ。国のためとの言葉を御旗にすれば、全てが許されるというわけではないからな――そこの戦鬼に本気で胸ぐらをつかまれた時は、余とて死を覚悟したほどだ」
聖女が鷹と熊を眺め。
「喧嘩をなさったのですか?」
「いや、喧嘩とは違うが――」
「そうであるな――まあ余にあそこまで面と向かって苦言を呈すことができる人間は少ない。ベアルファルスにはいつも感謝しておる」
ベアルファルス講師は、モノクルと共に目線を逸らし。
「全てを許しちまうようなお人好しを利用するなって、怒鳴っちまってな」
「そやつはお前を気に入ったようだからな。余も軽率であった、許せよ」
聖女は考え、いつものぽわぽわ空間を発生させていた。
「つまり、殿方同士の友情。女人では理解の及ばぬ、時には殴り合うような関係をお二人は築かれているのですね」
「友情かどうかは分からぬが、余はベアルファルスを信頼しておる。聖女コーデリアよ。おそらくそなたよりもな――」
「まあ、羨ましいですわね」
「ふん、勝手に言ってろ」
金塊を受け取ったコボルト達が、わっせわっせと担いで宝物庫に運ぶ中。
聖女は領主の顔で告げた。
「イーグレット陛下。今一度、わたくしの気持ちを申し上げます。わたくしを利用し……囮にした件は仕方がなき事。どうか必要以上には負い目を感じないでください。あれは陛下が民を思っての事、わたくしは知っております。あなたの優しさと、わたくしのような異邦人を受け入れて下さった心の広さを。そして、陛下は悩んでいらっしゃった。スラムとなっていた一角も教会の圧力で手を出すことができなかった。その事を、悔やんでいらっしゃった……そう察しております」
祈るように胸の前で手を握り。
「わたくしも領主であり、かつて領主の娘だった身分。動きたくとも動けぬ状況については、生意気な言い方になってしまいますが理解がございます……ですから。もうこの話は今回で終わり。互いに引き摺りたくはないのですが……よろしいでしょうか?」
皇帝は頷き言った。
「さて領主にして聖女コーデリア卿よ。伝えねばならぬことがある」
「はい、陛下」
「今回のそなたの活躍は他国にも伝わることとなった。あれほどの怪物が現れたのだ、隠すこともできまい。ならばと余は新しき領主たるそなたの名を公表し、その功績も公にした。むろん、クラフテッド王国にも聖女の聖名は伝わっているだろう。そして同時にあちらでも動きがあった。ミーシャ姫の今までの暴虐が暴かれ失脚、姿を消したと公表がされている」
「ミーシャが、ですか……」
「クラフテッド王国の民は、そなたが無実だと知ったのだ。そなたの汚名は雪がれた。おそらくは聖女の帰還が望まれているであろうな。随分と虫のいい話だと余は思うが……貴公にとってはそれこそが本懐であろう? この地に亡命するしかなかった、追放されたそなたの名誉も回復されたのだ。胸を張って、帰るといい」
聖女はハッとした。
そのための、クラフテッド王国でも使える金塊だったのだろう。
聖女は言った。
「いいえ、陛下。この国の皆さまが許して下さるのでしたら、わたくしはこの地に残り、暗黒迷宮の領主として過ごします。わたくしはこの国が好きです、まだあまり通えていませんが……学校が好きです。わたくし、本当に普通の学校暮らしというものが……初めてでしたの。もっと、学びたいと思っておりますの」
普通の学校暮らし? と、一同が頬をヒクつかせるも聖女と違って彼らは、空気の読める武官。
暴走の日々を気にせず、温かな空気を作っていた。
皇帝が言う。
「そうか、ならばこの暗黒地帯の自治はそなたに任せよう。しかし、一つだけが残念だ」
「なにがでございますか?」
「言ったであろう? 統治に失敗したら后になれと、もしそなたが領地を捨てて帰るというのなら――そなたの身は余のモノとなっていたであろう、とな」
「まあ、陛下ったら」
冗談ばかりなのですからと、聖女はいつもの微笑み。
微笑む聖女の、どうしようもない状態で膠着していた状況をひっくり返した、救世主の顔を見て。
鷹の目は、揺れた。
それはまるで番を掴めなかった――猛禽の顔。
やがて皇帝は美麗な顔をわずかに緩めた。その唇が、寂しそうに告げる。
「本当に……残念だよ。コーディー」
「陛下?」
「いや、愛称で呼ぶという下々の嗜みを余はあまりしたことがなかったからな。試してみたかっただけだ、ああ、それだけの話だ。聖女コーデリア=コープ=シャンデラー。話は以上だ、これからも期待しておる――皆の者、勲章を授与された新しき領主に拍手を。其れを以って、歓迎の儀とする」
拍手が、鳴り響く。
手を打つ音が、皇帝の吐息を隠していた。
熊は鷹の心に気付いていたようだが――。
鷹は目線だけでそれを否定した。
今日ここに、聖女コーデリア=コープ=シャンデラーに新しい二つ名が与えられた。
聖女コーデリア卿。
多くの民を癒し、蘇生し、魔導書に乗っ取られた巫女長を救出した聖女。
その名は各地に広がり――。
他国は皆、口をそろえてこう言った。
あれほどの聖女を追放するとは、クラフテッド王国は何を考えていたのか――と。
▽▽▽
▽▽
▽
魔力枯渇状態への補給も終わり、ミーシャ姫は静かに休んでいた。
従者のキースも、黒鴉姫の睡眠を確認して――こくりこくりと舟をこぐ。
眠気に誘われていたのだ。
無防備となった彼ら。
完全に油断している者たちを狙う瞳があった。
遠くから、しかし射程範囲から彼らを眺めていたのは、美しい天使。
ミーシャの天使だった。
彼の横にも天使がいる。恐ろしい程の美貌を纏った、神父姿の黒衣の天使である。
『ほら、あいつらだよ! 僕を殺しやがったのは!』
『けれど君は蘇っているのだろう? どういうことだい?』
まるで教師のような声を持つ天使だった。
『僕とあのクソ女とは、魂の共有状態――寿命と魂の糸でつながってるからねえ。はは、馬鹿だよねえ、あの聖女もさあ。あいつを蘇生させちゃったんだから、僕だって蘇るって、ちょっと考えればわかるじゃん?』
『ああ、そうだね。ところで、他の仲間は?』
『仲間? ああ、天使……僕以外の転生者の事ね。どこかにいるんじゃないかな、気配は各地で感じるけど合流してくれたのは君だけだ。それは感謝しているよ』
ミーシャの天使ではない天使が、苦笑する。
『私はまだ転生したばかりで理解していないのだけど、君たちの目的ってなんなんだい?』
『はぁ? そんなことも知らずに転生したの?』
『言っただろう、まだ不安定なんだ。で、彷徨っていたら弱っている君を見つけたから――事情を聞きたくて声をかけて、助けることにした。私が何を求めているかは、分かるだろう?』
『情報が欲しいねえ』
ミーシャの天使は上を向きながら考え。
『ま、いいか。どーせおまえの脳にもそのうち命令が来るだろうけど。結局のところはこの世界を壊したがってるみたいよ、我々のボス様は』
『ボス?』
『ああ、見たことはないけどね』
『それで君が認識している天使が他にいるなら、教えてもらえるかな?』
『魔皇が治める北の大地に一柱いたけど、今はどうなんだろうねえ。って、同じ天使なんだから、気配を察してるだろう?』
ミーシャの天使は弓を構え。
眠る女の眉間を狙い――。
『そんなことよりも、ほら、もっと魔力を分けてくれよ。あの糞女、ミーシャはここで必ず再洗脳する。この程度の魔力じゃあ「洗礼の矢」が刺さらないだろ』
『洗礼の矢というのは?』
『……おまえ、なんでそんなことも知らないんだよ』
ミーシャの天使が、じっと横に立つ天使を見る。
睨まれる天使は、肩を竦めてみせる――。
『おまえ、天使じゃないな』
『おかしいね――私は一言でも自分が天使だなんて、言ったかな?』
黒い天使の顔が、ニヒィっと吊り上がる。
それはまるでチェシャ猫のアルカイックスマイル。
ミーシャの天使はハッと叫んでいた。
『僕を騙したのか!?』
ミーシャの天使は翼を広げ、弓を構えるが――。
動けない。
謎の天使の姿がボヤけていき、それはやがて黒くて太々しい顏のネコとなる。
並々ならぬ魔力を纏った猫が、慇懃に礼をしてみせる。
『やあ初めまして、天使君。私は異界の神。魔猫達の王であり神であり……まあ、消える君に名乗っても仕方ないか。コーデリアの師匠、魔猫師匠と言われているよ。殺す前に情報を引き出したかったんだけど、どうやらろくな情報を持っていなかったようだね。期待外れで正直、がっかりさ』
魔猫である。
ただの黒い猫。
けれどおそらくこれが――不帰の迷宮の最奥にいるとされる、謎のボス。
『ぼ、僕を殺したら! あの女も!』
『ああ、それは解除しといたよ?』
『へ?』
『これは自慢なんだけど、私はね。こと魔術に関しては自信があるのさ――私にできないことはほとんど無いといっても過言ではない。さてそれじゃあ、君は用済みだ。ハッピーエンドのまま終わって欲しいから、ミーシャ姫を狙っていた君には消えて貰うとするよ』
黒猫が、淡々と肉球を振り上げる。
『ぼ、僕は他の天使の情報を知っているんだぞ! は、話す前に殺してもいいのか――』
『ああ、君の死体から情報を解析するからもういいよ』
『ま、待てよ! ぼ、僕は……っ、僕だって天使になる前は人間』
だから?
と、黒猫はつまらなそうに言う。
『君、嫌いなタイプなんだよね――』
なんでと叫ぶ暇もなく。
肉球がぷにん♪
そこには無だけが広がっていた。
断末魔の声さえなく天使が粉々になった後。
魔猫はモフモフな首で振り返り、ミーシャ姫の無事を確認。
その夢の中に語り掛けるように、ネコの口が動いていた。
『さて邪悪だったお姫様。君はギリギリだけど、人としての心を保てたようだね。これは君が子供と母親を助けたことへの御褒美さ。後は、まあ自分で自分の過去を償うんだね』
格好良く告げた後。
魔猫師匠は、ぶにゃっ! と慌てて言った。
『あ、しまった――粉砕しちゃったから情報を抜き出すの大変じゃん……!』
塵すら残っていない空間を、じぃぃぃぃぃぃぃ。
しばし考え、魔猫師匠はクワァァァァァっと伸びをしながら大あくび。
ま、いっか……。
この世界にまだアレと似た天使がいるって事が分かったんだし。
と――魔猫師匠は闇の中へと消えていく。
どこに行っていらしたのです? とコーデリアの声がする。
魔猫師匠は、お邪魔虫を潰してきただけさと嗤い、二人は食事の準備を開始した。
【第一章、おわり】
明日から次章開始予定。
更新時間は一日一回「12:00~15:00」を想定しております。
※ずれたらすみません…!
ここまでお読みいただきありがとうございました。




