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第139話、◇最終決戦―獅子奮迅―◇


 闇を照らし昇る、朝陽。

 日輪の輝きは――黄金獅子の魔力の光。

 中央祭壇にて繰り広げられる聖戦。


 最終決戦は続いている。


 主にぶつかっているのは男と女。


 男はブレイヴソウルをオーラのごとく纏わせた、美丈夫。

 黄金髪の獅子たる男、オスカー=オライオンである。

 彼は人類たちを圧倒していた。

 それは彼自身の強さもあるだろうが、纏うブレイヴソウルの力の影響もあるのだろう。


 この世界に理不尽に召喚され、憎悪を纏ったまま暴れる転生者たちの魂は、何故だろうか――。

 オスカー=オライオンに協力している。

 力となっている。本来なら黒マナティー化が発生するはずだがその兆候は見られない。


 そして対する女は、微笑みを絶やさぬ美しき聖女。

 今のオスカー=オライオンと対等に戦えるのは、この世界の主神。

 この世界の軸となっている、かつて自らの涙さえも封印してしまった、不器用で強大な力持つ乙女。

 聖コーデリア卿。

 コーデリア=コープ=シャンデラーである。


 心が見える彼女には見えていた。

 コーデリアには見えていた。

 獅子の記憶と過去が見えていた。


 だから知っていた。

 オスカー=オライオンは、世界のために、そして自分のためにこの場で討伐されようとしていると。

 その身に、本来なら退治できないブレイヴソウルを纏ったままに。


 コーデリアには見えていた。

 オスカー=オライオンの決意と、自分への感情が見えていた。

 長く続いた、世界の裏の冒険、若獅子の英雄譚が見えていた。


 だから――その決意に応える。


 コーデリアは自分を想い続けてくれていた相手を、かつての婚約者をここで討伐すると決めていた。

 それが、今までずっと。

 何も知らず、何も考えず、覚えていることすらできていなかった自分への罰。


 獅子への贖罪だと感じていたのだ。

 今もなお。

 彼女の中には、獅子の物語が流れ込んでいる。


 記憶の中では、聖女と獅子が談笑している。

 けれど、現実では違う。

 聖女と獅子は戦っていた。


 最終決戦の只中にいた。

 静かに唇を開き、凛とした声を聖女が降り注がせる。


「お覚悟を――」


 菩薩の笑みを保ったままの聖コーデリア卿、儀式用の複雑な刺繍が施されたドレスの周囲には、四つの魔道具。

 剣と盾、魔導書と杖。

 神器を浮かべた聖女は獅子たる男と拮抗する。

 獅子たる男と、聖女は単騎でぶつかり合っていたのだ。


 儀式のための正装を揺らし。

 祈りを捧げ――その身を魔力で輝かせ、聖コーデリア卿の唇が――。

 スゥっと……言葉を紡ぐ。


 詠唱と共に、世界に光が注がれる。


「三千世界を守護せし、歓喜天よ。その身消えても、その心は消えず。詠唱いたします、復唱いたします。三宝の守護者、聖なる幹をあまねく照らす、荘厳なる王よ。あなたに正しき目覚めを、我等に救済を――、十種勝利の言の葉を! 一切怨敵不能沮壞!」


 聖女が使っていたのは、菩薩降臨魔術。

 自らの内から湧きださせた観音菩薩の化身、十一面観音の神霊を背後に浮かべていたのだ。

 邪霊や精霊をその身に宿し戦う、シャーマンの魔術に似ているだろうか。

 文字通り、聖女の背には神がいた。

 菩薩がいた。


 浮かぶ神々しい神の影を使役し、干渉。

 ドレスの周囲に浮かべる四つの魔道具の一つ、”主神たる聖女の剣”を装備させ――獅子を調伏しようとしているのだ。


 獅子が言う。


『背後霊みたいになってるぞ……おい』

「まあ失礼ですわね! それでも、この菩薩さまはわたくしの持つ神性の一つ。あなたにこれが避けられるでしょうか?」


 背負う菩薩は双身の一つ、歓喜天の足を踏みつけていた女性の菩薩である。

 聖女の周囲でふわりと回転する杖から、膨大な十重の魔法陣が生まれる。

 十重の魔法陣。

 それは異世界においても神の領域にある、頂の魔術。


「それでは、梵名請来ぼんめいしょうらい十一面観音(エーカダシャムカ)――発動させていただきますわ」


 神の影とも言うべき分霊が、聖女の身に降臨する。


 これは聖コーデリア卿が主神だからこそ使える菩薩の魔術。

 世界の種を受け継ぐ彼女だからこそ扱える、歓喜天の神性。

 魔術を受けた神の影が、聖剣を装備しその千の手を振りかざしたのだ。


 それは文字通り、神の力による攻撃。


 普通ならば、いや、普通以上の神を相手にしても一撃で勝負が決まる程の斬撃である。

 なにしろ心こそが、力の基本。

 人々の心が集まる祈りこそが、魔力の根底。

 多くの信仰を集める存在ぼさつの力を借りた、神による調伏なのだ。


「あなたに眠りを――安らかなる一時を」


 聖女の背後に浮かんだ正しく目覚めた菩薩の神霊が、千手観音がごとく千の斬撃を途切れることなく降らしていた。

 主神たる神の剣による、千回攻撃。

 比喩や誇張ではなく、本当に千度の攻撃を同時に放ったのだ。

 だが。


『甘い――!』


 オスカー=オライオンは千の攻撃を全て耐えきり、千と一の攻撃として反撃。

 コーデリアの瞳が揺らぐ。

 栗色の髪も揺れる中。


 声は、存外に弾んでいた。


「驚きましたわ、殿下。わたくし、本気であなたを止めようとしているのですが……一撃で止めるつもりでしたの。けれど、とてもお強いのですね」

『いや、千回攻撃を一撃っていうのも、おかしいんじゃねえのか……?』

「それを防ぎきる殿下も大概でございましょう。ふふ、面白くなって参りましたわね」


 本気を出せる。

 周囲はエイコ神による真なる無敵状態。

 聖コーデリア卿が本気で動いても壊れることのない舞台。


『ああ、ったく……あの魔猫の弟子だっていうのはマジだったんだな。笑ってるはずなのに笑ってねえ、目がそっくりでやがる』

「師弟でございますから」


 コーデリアによる一振り千回攻撃が飛び交う中。

 このままでは押されると察したのか。

 獅子たる男オスカー=オライオンは衝撃波を発生させ、距離を取り。

 ニヒィ!


『周囲を利用して強化されているようだが、それは諸刃の剣。優しいおまえは絶対に助けちまうだろうからな――利用させてもらうぜ!』


 言って――。

 獅子の如き威圧感が発生したと同時に。

 漆黒の鎧を身に纏ったオスカー=オライオンは、魔力風の中で腕を翳した。

 翳す腕の奥には太陽。

 九割のブレイヴソウルが浄化された影響で、明けた空。


 その輝きを握るように。

 ぎしりと、甲冑の中で魔力球を潰したのだ。


『爆ぜよ魔力――さあ、人類よ。このまま聖女様を蝕み、蠅のように集り続ける気ならそれ相応の覚悟ってもんを見せて貰わなければ困る。具体的には、分かるだろう? オレを――止めてみな』


 破裂した魔力球から発生したのは、石化の瘴気。

 瘴気は祭壇の表面を溶かし、真なる無敵が付与されている筈の大地に侵食していく。

 中央祭壇全体に石化を含む、無数の状態異常フィールドが発生していたのだ。


 コーデリアが慌てて状態異常を防ぐ結界を展開する。

 当然、手は緩む。

 その隙を獅子は見逃さない。


 オスカー=オライオンは状態異常攻撃も得意としているのだろう。

 その口と瞳から、呪詛にも似た魔力が滲みだす。

 発生していたのは、魔術封じの波動だった。


『汝、主神たる聖女よ。我、オスカー=オライオンが命じる。詠唱を禁じ――』

「させるか――!」


 止めたのは聖騎士ミリアルドだった。

 彼は何故か、いままであまり動きを見せていなかった。

 まるで、何かを見ていたような。

 まるで、知らなかった何かを見せつけられていたかのような。

 そんな動揺の中で揺らいでいるように見えたが――さすがに聖女の詠唱が禁じられるのは致命的と感じたのだろう。


『ほう、クラフテッド王国を蝕んだ女の腰巾着が、やるじゃねえか』

「オライオン、君は……っ」

『――……勝手に、オレとコーデリアとの中に入ってくるんじゃねえ!』


 大魔帝の弟子たる聖騎士ミリアルドには、見えていたのだろう。

 それはおそらく。

 何も知らずに、ただバカな王太子と思っていた男の、若獅子の英雄譚。


 だからこそ、ミリアルドは動かずにはいられないのだろう。

 ギリっと奥歯を噛みしめ、大魔帝ケトスの弟子としての矜持をもって、剣を天に投げ放っていた。

 それはガルム。

 彼の聖剣。

 ギリリと歯を噛みしめ、すみません……と、詫びるように聖騎士が叫ぶ。


「――我が聖剣ガルムよ! 邪悪を祓う盾となり、その身を千の城壁とせよ!」


 命令に応じ、割れた剣が盾となって顕現。


 状態異常フィールドを相殺するべく、悪を滅する聖なる盾を天から降り注がせ始めたのだ。

 降り注ぎ落ちた盾を拾ったコボルト聖騎士部隊が、もっふー!

 状態異常をかき消す聖なる魔力をモフ毛に纏い、盾による結界で後衛職をガード。


 同時だった。

 ポメラニアンが地面から躍り出て、バサ!

 闇の翼が開かれた。


『ほう、剣を割ったか――吠える狼の剣、その残滓ならば、余も干渉できよう!』


 ミッドナイト=セブルス伯爵王が、闇の結界を同時に展開。

 それをダメージが回復しきっていない魔皇アルシエルがサポート。


 浸食し、周囲の魔力を腐食させていく状態異常フィールドは防げている。

 だが、悪を相手にする時に発生するガルムの特効効果は発動してはいなかった。

 その筈だ。

 オスカー=オライオンは悪ではない。

 ずっと悪を演じていた、そして、とある乙女を想い続けた心清き騎士だったのだから。


 それでも。

 コボルトの聖騎士たちはミリアルドに力を貸していた。

 コボルト達も知っていた、彼の努力を知っていた。


 自分の情けなさと失態。

 取り戻せない過去を知ってもなお、動こうとした聖騎士を知っていた。

 修行する彼を――暗黒迷宮から、眺めていた。


 オスカー=オライオンの使った状態異常の力は絶大だったが、聖騎士達による守りは強固。更に、人類軍にかけられている真なる無敵が功を奏しているのだろう。

 獅子の攻撃は、無効効果を貫通できずにいた。


 喪服令嬢ミーシャがガッツポーズ。


「今の内よ! 相手が強いなら、邪魔してやればいいだけの話ってね! 妨害だけならあたしはプロ級なんだから! 邪魔ができるスキル、魔術持ちはあたしに続きなさい! 呪いによる反動や代償は全部、あたしが引き受ける! 課金アイテムも全部放出するから、本当に遠慮要らないわ!」


 言って、ミーシャ姫は世界を守るために課金アイテムである、時短のクリスタルを散布。

 それらは全て、三千世界と恋のアプリコットで使用されていたモノ。

 本来なら必ず必要になる儀式使用の詠唱時間や、リキャストと呼ばれる次に詠唱するのに必要なクールタイムを金の力でゼロにする高価なアイテム。

 ここが最終決戦なら、出し惜しみをする必要もないとミーシャが全ての課金アイテムを放出しているのだ。


 もちろん、寿命は大きく削れていく。


 けれど、もう関係ない。

 削られた寿命は本来ならとある目的のために蓄積されていた――それはエイコ神の策略。道化師クロードが現世に戻った時の命とするための徴収。

 言うならば、課金とは神との契約。課金アイテムという奇跡の魔道具と引き換えに、創造神たる栄子に命を捧げる行為――。

 寿命の消失は、神たるエイコが先輩を蘇生させるために必要な対価を集めるための、儀式だった。


 だが。

 今は違う。もう、いいのだ。


 道化師クロードは道化師クロードのまま元の世界にエイコ神と共に戻り、二人でデバッグモードを操作し続けている。

 どれだけ課金しても、今はもう、問題は発生しない。

 本来ならば、今までならば――過度な課金は危険だった。

 世界がエイコ神によって滅ぼされるタイムリミットが縮むからだ。道化師クロードが、その生涯を生きられる分の生命力を確保できたら、終わりを実行できた。

 世界を破壊し先輩を回収するだけだった。

 だから過度な課金は、世界の破滅を誘っていた。課金すればするほど、世界の終わりが近づいていた。

 けれど、もう――その根底が覆ってしまったのだから。


 いくらでも課金していいのだ。

 課金者の命さえ気にしないのなら。


 そこにリスクはない。

 キースはそれを知っていても、ミーシャ姫を止めなかった。

 世界のために命を削る姫を見て、むしろ全力でそれをサポートしていた。


 魔力の波動に耐えるように……唇を強く噛みしめながらも――。

 血が滲むほどに、歯を食いしばりながらも。

 ミーシャ姫が発生させる課金の力を、操作。

 王の力をもってして、範囲強化アイテムとして周囲に散布し続ける。


 更にそのデバフ効果を、赤き舞姫サヤカの踊りが倍増させる。


 課金アイテムと皆の魔術のおかげで、強大なデバフの儀式が発動されていた。

 オスカー=オライオンの得体の知れない、ありえないほどの強さを弱化できているのである。

 だが――。

 魔術に詳しい元傭兵長の男。

 咥えタバコのベアルファルスが言う。


「おい、キースさんよ。あれは止めねえとヤベエぞ」

「……そう、でしょうね」

「そうでしょうねって、なにを呑気にしてやがる! あのままだと、寿命が尽きて死ぬぞ! 蘇生魔術の例外……寿命で死んだ存在の蘇生ができねえことぐらい、おまえさんのレベルなら知ってるはずだろうが!」


 当然、キースは知っていた。

 怜悧な男の、優しい眼光は最後の輝きを見せるミーシャ姫を眺めつづけている。


「おい、ちゃんと聞いているのか!」


 キースの肩を掴んで振り向かせたベアルファルスは一瞬、言葉を失った。

 けれど。

 すぐに悟った。


 空気も読める賢き熊男が見てしまったのは、キースの表情。

 全て分かった上で。

 姫と従者は既に何度も相談したうえで、この状態となっているのだと察したのだろう。


「……っち、そういうことかよ」

「これが最後の戦いならば。彼女が贖罪を望むのなら――私は彼女の選択を受け入れます」


 世界を混沌へと貶めた姫が、世界のために寿命を燃やす。

 それが、世界が救われるための一手、勝利のためのカギのひとつになるのならば――。

 悪名の他に、歴史にその最後を刻むことになるのだろう。


 外道な女であったが。

 その最後だけは、自らの過ちを悔い、その命を捧げたと。


 むろん、それで全ての罪が消えるわけではない。

 一生その名は呪われるだろう。

 だが、かつてクラフテッド王国の民だった者達は、命を賭した姫の最後にこう思うのではないだろうか。


 これで、少しは風当たりが良くなる、と。

 最終決戦が終われば、これからの未来が始まる。

 外道の姫を止められなかった、同じく甘い蜜を吸っていた者たちへの白い目も、少しは軽くなるのだろう。


「それで、いいのか――?」

「彼女の悪魔の所業の数々に苦しんだ民。暴走する王族を止められなかったというだけで、連帯責任的にクラフテッド王国の民は当分の間は虐げられる。その汚名をそそぐのも、王族としての彼女の務めでしょうから。それに……私は思うのです」


 キースは言った。

 あの日、あのゴミの中に沈んだ姫を見ていた時の顔で。


「私は、あの日の事をずっと……後悔しているんです――」

「あの日?」

「ええ、あのスラム街の路地裏の……ゴミの中で死んでいた、カラスのような彼女の事です。私はあの時、止めるべきだった。余計な事をするなと――聖女に体当たりを仕掛けてでも、止めていればよかったのです。あの蘇生を、妨害しておけばよかったと、そう思っているのです。死すべき時に死ねなくなってしまった、蘇生させられてしまった……。死へ逃げることを許されなかった彼女が、少しだけ……、そう、本当に少しだけですが……可哀そうに思えているのです」


 後悔を告げる新国王キース=イシュヴァラ=ナンディカ一世の顔は、穏やかだった。

 もはや何度も考え。

 何度も思案した結果の今なのだと分かる、達観した、罪人を憐れむ好青年の顔だった。


 賢王ダイクン=イーグレット=エイシス十三世も当然、それに気付いている。けれど、何も言わない。何も関わらない。

 血塗られたその手をそそぐ贖罪を止めるつもりはなかったのだろう。

 ベアルファルスが主君たる鷹目の賢王に目線を投げる。


「聞かせろ――これは勝利に必要な事なのか」

「全人類が出せるすべてを出さねば、獅子アレには敵うまい。アレは――少々どころかあり得ぬほどに異常だ。出し惜しみなどできぬであろう」

「……本当に、あいつはなんなんだ。オスカー=オライオン……ただのバカ王太子じゃなかったのか?」

「よほど道化芝居が上手かったのであろうな」


 コーデリアとオスカー=オライオンの間では、記憶の交錯が起こっている。

 けれど、他の者は知らない。

 オスカー=オライオンの過去を知らない。

 だが、賢王ならばそのスキルを以って、見抜いていたのだろう。


 それでも賢王は語らない。

 周囲に、その、血の滲むほどの物語を知らせるわけにはいかない。

 同情させてしまったら、剣が鈍る。


 だから鷹の目の慧眼で、全てを見通し答えを得ても――わずかに美麗な瞳を伏せるだけ。

 銀色の髪の奥で、瞳に魔力を走らせるイーグレットを目にして、ベアルファルスは察していた。

 知ってはいけない、なにかがあるのだろうと。


「あとで、話せ――」

「ふむ――生き残ったらであるがな」


 ベアルファルスもミーシャ姫が散布する課金アイテムを掴み、パキン!


 姫の寿命を削った詠唱短縮効果を使用し、魔力煙草に火をつけ。

 詠唱を開始。

 筋張った大人の男の大きな手のひらの上には、異界の魔導書――『煙嗜む、災厄ノ魔猫(ザ・パンデミック)』が乗っていた。

 大魔帝ケトスから賜った、異界の魔術を発動させていたのだ。


 多重デバフが発生する中。

 聖騎士ミリアルドは呼吸を整える。

 状況を観察していたのだ。


 なぜ、オスカー=オライオンはブレイヴソウルを扱えているのか。

 なぜ、状態異常攻撃をここまで使いこなしているのか。

 それを探るために、深く……瞳を閉じた。


 その答えを得るには簡単な方法がある。

 先ほど流れ込んできた情報。

 彼の英雄譚。

 獅子英雄譚の先を読み取る事――。


 だから、聖騎士ミリアルドは集中した。

 必ずそこに、人類を圧倒するこの男の、かつて友だと思っていた騎士の弱点がある。

 と。

 ミリアルドの意識が、英雄譚の中を覗き込む。


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