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大金を手にした捨てられ薬師が呪われたSランク冒険者に溺愛されるまで  作者: 未知香


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グラッグの頼み事

1/1追記

文章を追加して修正しました。

最初から最後までスマホで書いてみたのですが、私はどうも言葉足らずになるみたいです…

「人使い……荒すぎじゃないか?」


 ミカゲがため息とともにぼやくと、明るい声でファルシアが笑う。


「まあ、仕方ないわね。あれでも呪われたときは色々力になってくれたんだから」


 それは確かにそうだ。

 ミカゲが呪われた時には、色々な魔導具を手に入れては試してくれた。


 効果がなくてもいつものように大きく笑うだけの彼に、救われたのも事実だ。


「それはわかってる。……でも、まさかあの男が結婚するとはな……」


「まあ、紳士ではあるしない話じゃないわよね」


「でも、相手は貴族のお嬢様だぞ! よく許可がでたよな」


「……出てないからこんな難題押し付けられてるんじゃないかしら?」


 ファルシアの言葉に、ミカゲも目を伏せた。



 久しぶりに会ったグラッグの願いはこうだった。


 スカイドラゴンの骨を手に入れて欲しい。

 結婚したいという彼女は片方の足がなく、車椅子だ。


 グラッグは当然そんな事気にしたことはなかった。


 しかし、結婚式はきちんと挙げさせてやりたい。そのためにはバージンロードを歩かせたい。


 その願いを叶えられるならば、結婚を認めるというのが相手の父親の言い分だということだ。


 彼女は三女で家に大事にされていた訳でもないと言っていた。ただ、冒険者という家に対してなんの利益にもならない男との結婚に反対なのだろうと。


 だが、彼女は貴族だ。親の許可がなければ結婚は出来ない。

 いくら難しくとも、グラッグはこれにかけるしかないのだ。


「金積んでなんとかできないか、義足師に掛け合ってみることにしたんだ! とはいえ、できるだけ目ぼしい材料を用意して万全の状態でいきたいと思ってる」


 軽い口調で言うグラッグの目は真剣で、ミカゲは二つ返事でその話を受けることにした。


 とはいえ。


 スカイドラゴンの生息地はマグマ滾る活火山の上にある。


「あーつーいー」


「まったく、我慢しなさいよ男らしくないわね」


 ミカゲは何故か汗もかいてない化粧も崩れていないファルシアがひとりで来ればいいんじゃないかと、不満に思った。


「まじで、早くとって帰ろう」


「そうよ。それでお礼にグラッグに氷でも出してもらいなさい。リリーちゃんが喜ぶわよ」


 まったくファルシアは自分のやる気の所在を知っている。

 スカイドラゴンごとき、友人とリリーのためになら瞬殺だ。


「そうだな。急ごうじゃないか」


 にやりと笑ったミカゲに、ファルシアも同じように笑って返した。


「サポートは任せてちょうだい」


 *****


「うわぁースカイドラゴンだ!」


 スカイドラゴンをもってファルシアの店に帰ると、グラッグとリリーが待っていた。 

 目を輝かせているリリーだが、今回は残念ながら素材は彼女には渡せないのだ。

 品物の確認だけしてもらい、この後の加工はファルシアだ。


「ありがとうミカゲにファルシア! 俺の方でも必要そうな素材を集めてみたから、これで頼んでみるぜ」


 嬉しそうに笑うグラッグに、望みがある事を願った。


「……何か作る予定があるんですか?」


 リリーは興味深げにグラッグを見た。魔導具も好きな彼女は、興味があるようだ。


「義足を作るんだ。……今まで歩いたこともないし、ずっと車椅子で暮らしていたから上手くいくかはわからないんだが」


 寂しそうに笑うグラッグは、諦めが混ざっていた。


 もうある程度話は聞いてきているのだろう。かなり難しいことが分かっていることが伝わってくる。


 それでも、素材にかけようと集めたのだ。

 彼の想いを考えると、胸が痛んだ。


 リリーはグラッグの口調の裏にある陰に気が付かなかったようで、質問を続けた。


「義足なんですね! お使いの方は魔力はありますか?」


「ああ、ある。魔術自体は使わないが、魔力は多いと言っていた。実際車椅子も魔力を使って動かすタイプだ」


「ああ、そうなんですね。じゃあ大丈夫ですね!」


 グラッグの言葉にリリーは安心したようににっこり笑って、またスカイドラゴンに目を移した。

 目の皮のあたりを撫でてにやにやしている彼女は、すでに素材に夢中だ。


「……え?」


 一拍遅れて、グラッグがうめくように声をあげた。リリーの言葉の意味が理解できなくて、ファルシアとミカゲを交互に見る。


 その肩を撫で、ファルシアがリリーの顔を覗き込んだ。


「リリーちゃん。義足は魔力があれば大丈夫なの?」


「そうですよ! 普通の義足よりも魔力通りやすいスカイドラゴンがあれば、慣れは必要ですが動かすのには問題ないと思います!」


「ほ……本当なのか!」


 意気込んでリリーの肩を掴んだグラッグを殴って剥がす。


「おい。気をつけろ」


「すまない……。本当は、どこの工房でも駄目だと言われていたんだ。だから……」


 グラッグが言葉に詰まったように、口を押える。

 それでもリリーの肩をつかんではいけない。有罪だ。


「リリー。義足はリリーでも作れるのか?」


 ミカゲが尋ねると、リリーは目をパチパチと瞬いた。


「私が作っていいんですか? 多分大丈夫です。調整とかは本当は本職の方のがいいかもしれませんが」


「……いや、リリーちゃんに、頼みたい」


「それならもちろん! うわー楽しみです! 私からもありがとうございます!」


 嬉しそうに笑うリリーに、ミカゲは本当に単純にこういう事が好きなんだな、と彼女を愛おしく思った。

 彼女の能力は空恐ろしくもあるが。


「ありがとう……ありがとう……」


 どんな境遇の時も見せなかったグラッグの涙に、上手くいってほしいと祈らずにはいられなかった。


 *****


「綺麗でしたね……ウエディングドレス」


 夢見るような口調で、リリーがうっとりと呟く。


 グラッグの彼女の義足は、リリーが調整を行ったり本人の扱いの慣れに時間はかかったものの、無事に作成することができた。


 グラッグの彼女は儚い印象の少女だったけれど、義足の扱いは大変そうだったが愚痴も言わずに頑張っていた。

 グラッグは愛されているようだ。


 何度もお礼を言う二人に、結婚式への参加を懇願され、当然喜んで参加させてもらった。


 リリーのドレスも可愛い。だが、ウエディングドレスという、あの純白のドレスはまた別だ。


 特別なあの姿を、隣で見たい。


「ああ。……リリーもああいうのが着たいのか?」


「え? ああいうドレスは汚れちゃうし着る機会はないですよー」


 探るように聞いたミカゲの問に、リリーは手をバタバタとして返した。


 ここでこのまま流したら負けだ。


「俺は見てみたいけど。リリーのウエディングドレス」


 真っ直ぐに彼女を見てそういえば、全く伝わってない様子で、リリーは首を傾げた。


 負けた。


「飲み物取ってくるな。喉乾いただろう」


 これ以上攻め入るのが難しくなって逃げたミカゲには、赤くなったリリーの呟きは聞こえなかった。


「駄目よ。そんな言葉……誤解しちゃいそうだわ」





 ※※※

 久しぶりに短編をかきました!楽しんで頂けると嬉しいです。

 またカクヨムコンにも参加していますので、良ければ新作も読んでください。


 黒聖女は今生では騙されずに一人で生きていく!…でも呪われた公爵様と結婚する事になってしまってます

 という長いタイトルです笑

新作投稿していましたが、1月3日に完結となります!併せて読んで頂けると嬉しいです!


強大すぎる力を持っているために前世で殺されてしまったマリーシャが、誰にも頼らず生きていく、と決意するものの、何故か公爵と結婚することに……という話です。

ハッピーエンドです!

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