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大金を手にした捨てられ薬師が呪われたSランク冒険者に溺愛されるまで  作者: 未知香


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第36話 【SIDEミカゲ】ポーション作成

全然大丈夫そうじゃない。


それでもファルシアは笑顔でリリーの顔を覗き込んだ。

とりあえずミカゲは近すぎる距離からファルシアを引き離した。


「お前近い。やめろ」

「えーなんでよずるいわね。……リリーちゃん。この傷は思い出なんて全然ないし、治るなら治したいなって思ってたの。でも、治る手段がなくて諦めていたわ。……もし治る可能性があるなら、お願いしたい」


その声は乞うようで、ミカゲは胸が痛くなった。


「良かったです! レシピは出来上がっているので、頑張って作りますね。もしかしたら飲みながら調整になるかもしれませんが」

「いいわよ。それぐらい、どうってことない」

「……頼む。リリー……」

「馬鹿よねーミカゲ。今だって、全然楽しいんだから」


そう言って、ファルシアがミカゲの肩を抱いた。


「じゃあ早速はじめますね! ミカゲさんに持ってきていただいていた荷物の中に調合箱が入っています」


しんみりしてしまった空気を全く読まずに、リリーが嬉しそうに指さす。


「なんだか重いなと思っていたら、調合箱だったのか……」

「はい! 今日作れたらいいなって思っていたので。他にもポーションの材料もろもろも用意してあります」


リリーが持っていた鞄の中からも、驚くべき量の素材が出てくる。


「お前の鞄、縮尺がおかしくないか?」

「あ、これ魔導具なんですよ。中の容量を増やせるんです! 重さは変わらないので、あんまり使い勝手がいいとは言えないですが」


「ええ。それってかなり高級品じゃないか! 俺だって持ってないぞ」

「私は持っているわよ。優雅な女は小さいバッグじゃないと」


「うわ。怪力のくせに図々しいな。でも確かに女の鞄は妙に小さいよな……」

「色々必要なのに、不思議よねー」


「私は自作なので、高くないんですよー。王城で働いていた時に、レシピを教えてもらえたんです! 材料費のみだとそんな高くなかったので、びっくりしちゃいました」


材料費のみだと安いのに、市場に出回るときは驚くほど高価。

それが意味するところは高い技術力じゃないだろうか。


ファルシアとミカゲは目配せをしたが、結局お互い何も言わなかった。

これから作るポーションだって、高い技術力どころじゃない。代わりに、一息ため息をついた。


「よろしく、お願いします」

「わわわ。なんか改まって言われると緊張します。私はファルシアさんにもミカゲさんにもお世話になりっぱなしなので、少しでも返せれば嬉しいです。じゃあ、はじめますね」


自分の価値なんて何にもわかっていないように、リリーは言う。

実際、何にもわかっていないのだろう。


もっと傲慢になったところで、まったく問題ないのに。

そんな所が……とても可愛い。


ミカゲは自分の思考にはっとなり、首を振って邪念を払った。


大きなカウンターテーブルにリリーが座り、ミカゲとファルシアは客のように向かい合って座った。リリーはこちらの事をちらりと見た後は、準備に集中する。


目の前に調合箱を置き、その横に複数の薬草と魔物素材、それに先程のミラーマジの瓶が置かれた。

ファルシアの冒険者の未来を駄目にした魔物が、ポーションとなってファルシアの手を治療する。

何とも言えない気持ちになる。


それでも、滅多に居ないミラーマジをつかまえてきて、このタイミングでファルシアに使えるのはミカゲですら運命を感じた。

ミカゲはもう、ファルシアの手が治ることを疑っていなかった。


ちらりと隣のファルシアを盗み見れば、無意識だろう右手を擦りながらじっとリリーの手元を見ている。

その目は静かに見えるが、揺れている。


リリーはこの間と同じように、薬草を刻んでいる。その手は相変わらず素早く、正確だ。刻んだ薬草は調合箱の中に入れた。そして、次に魔物素材を取り出した。


ミカゲはその魔物の断片からは、何の素材なのかはわからない。


「魔物素材って切るのも大変なのよね……」


ファルシアはひとりごとのように呟いた。


「でも、たぶんあいつ切らないぞ。切るのすら大変だったとは思わなかったけど」


ミカゲがそう答えると、集中していたのかはっとしたようにミカゲを見た。しかし、すぐにまたリリーの手元に視線を落とした。


「切らない? ……硬いというよりは、魔力をナイフにまとわせないと、弾かれて切れなかったりするのよ。それぞれ魔物によって必要な魔力の量は違うから、調整しながらじゃないと上手く切れないのよ」

「そうなのか……」


リリーはこの間と同じようにえいえいという気の抜けた掛け声で、手に持った魔物素材をそのまま調合箱の上で粉砕した。


「うわ。なにあれ。あんな事できるの? 信じられないわ」

「あれ、謎すぎるよな」


ミカゲとファルシアが調合の邪魔をしないようにぼそぼそと話し込んでいると、リリーが顔をあげた。


「ええと、材料は多分これで足りると思います。後はミラーマジを入れるだけですが、ある程度混ぜてからの方が魔力が逃げなくていいと思うので、先に液体にしますね」


今回も解説してくれるようだ。


調合箱の左右から挟むように両手を当て、調合魔法をかける。素材はぐるぐると回りだし、凝縮と解放を繰り返している。


「じゃあ、大分液状化したので、ミラーマジを加えて、更にこの段階で聖魔法を混ぜ込みます。他の魔法よりも聖魔法は癒しの効果があるからか、癒す方向にポーションの効能が付くみたいです。ここはミカゲさんにも言いましたが、まだ研究中です」


「ちょっと何言ってるかわからなくなってきたわ」

「安心しろ。二回目の俺もわかってないから」


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