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大金を手にした捨てられ薬師が呪われたSランク冒険者に溺愛されるまで  作者: 未知香


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第28話 お買い物

「あらあら、リリーちゃん。待ってたわよー!」


 お店で出迎えてくれたファルシアは、今日も派手な美女だった。派手な大きいコサージュを胸元につけた、赤と黒いレースの妖艶なドレスを着ている。

 緩く編まれた髪の毛にも、同じコサージュがついている。


「今日からよろしくお願いします」


 私は荷物を持って、頭を下げた。

 今日からミカゲがギルドの依頼という事で不在だ。ミカゲは私が大金を持っている事、店を開くことでその事が漏れやすくなることを心配してくれていた。


 とても有り難い事だ。

 協力してくれるファルシアも。


「任せてちょうだい。ミカゲからもちゃんと頼まれてるから安心してね。ふふふ。お礼もちゃーんと貰っているのよ」

「え! ミカゲさんからですか? そんな、私が払います!」

「いいのよ。あいつが契約期間中に依頼なんて受けるからこうなるんだから。むしろ違約金としてリリーちゃんに払わなきゃいけないぐらいよ。その辺の説明ちゃんとしてるかしら?」

「いえ。でも、お土産をくれるって言っていました」

「そんな事で喜んじゃって、もー可愛いわねー」


 ファルシアはその妖艶な姿に似合わず、乱暴に私の頭を撫でた。


「わわわ」


 乱暴なのに優しくて、私は嬉しくなって笑ってしまう。

 そして、店の2階にある部屋に案内してもらう。この一等地に広い店舗と住居。かなりの贅沢仕様だ。


「特に使っていない部屋だったんだけど、狭くてごめんね。夜は戻るならあっちの部屋でもいいわよ。防犯用の魔導具は持ってるし、朝迎えに行くから」

「いえ、十分素敵なお部屋です。それに、実家では自分の部屋はもっと簡素でしたし」

「そういえば、倉庫でって言ってたわね……」

「あ! でも、荷物がたくさん置いてあった部屋なので、それはそれで落ち着いたりしたんですよ!」

「リリーちゃん。それは部屋じゃなくて、ただの倉庫っていうのよ」


 確かに倉庫ではあったけれど、掃除をしなければいけないので掃除道具が近くにあったのは意外と便利ではあったのだ。

 私の利点は上手く伝わらなかったようで、ファルシアは怒ったような顔をした。


「とりあえず、うちではそんな生活はさせられないわ。もちろんミカゲともだけど。何か不満があったら私に言うのよわかったわね」


 厳しい口調で心配そうに言うので、にやにやしてしまいそうになりながら私はお礼をいった。

 そして、ファルシアが用意してくれた朝食を食べた。

 すぐ近くの屋台で買ってきたクレープ包みだ。野菜がたっぷり入ったとても健康そうなメニューはファルシアらしい。味も美味しい。

 聞けばお店の準備等がある為、買ってくることが多いらしい。


 明日からは、食事の用意は任せてもらえるようにお願いした。

 どっちにしろ買い物は付き合ってくれるようなので、申し訳ないけれど。

 ちょっとでも役に立てればいいな。


「ミカゲみたいな邪魔者が居ないうちに、お店の事も、リリーちゃんの事もどんどん進めましょうね」

「……私のことですか?」

「そうよー。リリーちゃん、今まで質素に暮らしてきたんでしょう? 色々、買い揃えましょう!」

「色々って」

「お洋服もだし、下着もだし、化粧品類も。その荷物の大きさを見るに、全然揃ってないわよね? 髪の毛も伸びてきているから切りましょう! ふふふ。原石を磨くみたいで楽しみだわ」

「そんな。私なんて今のままで十分です」


 私が断ると、ファルシアは今まで見たことのないぐらい怖い顔をした。美女が怒ると迫力が段違いだ。


「お嬢さん。あなたは若くて可愛いわ。そんな子が着飾らないなんてどうかしている。ミカゲはそういう事は言わないだろうけど、駄目よ。ミカゲだって本当はもっとがっつり着飾れば映えるのよ! あいつはもてないように無意識にやってる可能性もあるから、許してあげてるけど。リリーちゃんはともかく可愛い格好をしないと駄目。お店を開くなら、相応の服もあるし」

「く……薬師なので、お店では汚れにくくて動きやすいものがいいかな、なんて」

「リリーちゃん」

「一式揃えたいので見繕ってもらえませんかファルシアさん」


 一応反論してみようと試みたが、にっこり笑うファルシアに逆らえる気がしなかった。


「いい子ねリリーちゃん。もちろん任せてちょうだい」


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