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最強勇者、堕落して世界を救う  作者: 伍煉龍
第1章:帰還編
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【007】太古の神獣

「良くも我が子を殺したな」


 どうやら俺が殺した龍の親らしい。流石に神獣二体を相手にするのは俺でもキツい。俺が倒したのは子供の龍だ。だが、今頭上に居るのは大人の龍だ。さっきとはレベルが全然違う。


「今の俺は気分が悪いぞ。死にたくないならさっさと失せろ。お前らほどのものなら分かるだろ、俺が勇者だってのは」


 俺は‘闘気詐欺’で本来の闘気(けはい)を何倍にも大きく見せた。

 この程度で龍が怖気付くとは思わないがほんの僅かな可能性を信じて俺は龍を睨みつけていた。


「今の勇者はその程度か。先代よりかはまともだが、数代戻れば弱すぎるな。お前も〔神々の祝福〕を受けてないのか」


 〔神々の祝福〕?聞いたこともないことを言われて俺は困惑した。


「師弟関係が途絶えた代から伝えるものがいなくなったから知らなくても当然だろう」


 師弟関係?勇者は相続するものだったのか?

 おそらくこの龍は太古の昔から存在していたのだろう。

 もう一体の龍も初めて話を聞くように耳を傾けている。おそらく、あまり知られていないこととなにか関係があるのかもしれない。


『この者にはすべてを話すべきかもしれぬな。この力量で〔神々の祝福〕を受けていないのだとすると、これまでに類を見ないほど強力な勇者になるやもしれん』


「貴様にはすべてを伝えよう。はるか昔、最初の勇者と魔王が誕生した頃の話を」


 そう言って龍は降りてきた。しかし、もう一体の龍は降りてくる素振りすら見せない。

 降りてくると俺の顔を見るなりなんのためらいもなく話し始めた。


「今のお前は第千の勇者、千代目の勇者だ。

 そしてこれから話すのは初代の勇者の行ったことだ。

 時代にすると二万年以上も前の話だ。

 勇者も魔王もいなかった頃、人間族と魔族は共存していた。

 それこそ、ハーフもいるほどに仲は良かったのだが、ある一人の男が魔族に嫌悪感を抱いた。

 その男は民衆の集まる広間でこう唱えたのだ、

 『魔族にのみ扱える闇と人間にのみ扱える聖光は相対する!

  それに互いに互いを苦しめるものだ。

  このようなものを神が作り出したのは共存を望まれていなかったからではないか?

  ならば、我らは神の望みを汲み取るべく、今日この瞬間より俺は魔族を殲滅する』

 とな。

 その発言に魔族も人間も争い始めた。

 その発言者が後に初代勇者になった。

 そして最初に広間で初代勇者になる男に攻撃を仕掛けたのが、後の初代魔王だ。

 その場にいた全員が感化されたせいですぐに世界中に争いは広まった。

 最初は魔族が有利だったが、勇者の称号の誕生によって今の人間界、魔界は完全に隔てられた。

 どうやら当時一時的にあった聖光と闇の混ざり合う壁は、今はほとんど役割を果たしていないようだがな」


「聖光と闇の混ざり合う壁?そんなものがあるから魔界に出入りできる者が限られているのか。」


「ああ、今は中の高密度の闇を閉じ込めるために残っているようだ。壁がなくなれば人間界にも闇が流れ込み、ほとんどの人間は死ぬだろうな。昔は子供でも今いるそこらの冒険者以上の闇に対する耐性を持っていたからな」


 その後も昔の話が続いた。話を要約すると神々は人間を祝福し、その時代に生きるものを強化した。そしてそれは世代を重ねるに連れ、自力の強化速度の向上へと変わっていったらしい。


「そして、勇者にのみ使用が認められた魔法‘天界転移(ハピネスレイン)’を使って、神々に会いに行った。中には追い返されるものや殺されたものもいたようだが勇者の力と知識は絶えず継承されてきた。だがお前の十代前の勇者は後継に知識を譲渡せずに死んでしまった。そのため、伝えるものがいなくなってお前のような何も知らない勇者ができてしまった。勇者の縛りのせいで広まらなかったようだが」


「今更だけど勇者の後継って選べるのか?」


「いや、勇者は直系の血縁に引き継がれている。だから自分の子孫を後継と対象として育てるのだ」


 俺は、一族で一番年下だ。俺が死んだら勇者の称号が途絶えるってことか。でも親父は勇者になっていない。本来なら親父が受け継ぐはずの称号をなんで兄貴が受け継いだんだ?兄貴のほうが親父よりも強かったのか?今そんなこと考えても分かるはずもない。


「話は大体わかった。俺も神々に会いに行って〔神々の祝福〕を受けろって言いたいんだろ」


「そうだ。神界に行けば全てわかるだろう。お前の持つその特殊な力の意味もな」


「特殊な力?何のことだ?」


「そんなに大量の闇を全身で浴びて生きていられるものなど普通おらぬ」


 確かに俺には闇が一切効かないと言っていいほどに闇には耐性がある。だがそれはスキルの類ではなく、先天的な別の力の影響だと思う。稀にいるのだ、生まれながら人と違う特徴を持つ人間が。おそらくそのたぐいのものだと俺は思っている。


「そもそも普通の人間には魔剣は使えぬはずだが、それはお前の親父殿も同じことか」


 確かにどこの店に行っても魔剣は売ってなかったな。子供頃から親父の魔剣を触っていたから使えるのが普通だと思っていたが、どうやら違ったらしい。魔剣ってそれほどに扱うのが難しいものなのか?

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